新型コロナウイルスの感染拡大などで、街中でのマスク姿が目立ちますが同時に、路上にポイ捨てされたマスクを見かけることも増えてきました。ごみのポイ捨て自体、法律や条令に違反すると思われますが、使用済みマスクだと感染症の危険もありそうです。「マスクポイ捨て」の法的問題について、芝綜合法律事務所の牧野和夫弁護士に聞きました。

感染症法にポイ捨て禁止条項はない

Q.使用済みマスクなどの物を路上に捨てる行為について、法的な問題点を教えてください。

牧野さん「『廃棄物の処理および清掃に関する法律(廃棄物処理法)』16条(投棄禁止)では、『何人も、みだりに廃棄物を捨ててはならない』とあり、使用済みマスクも廃棄物にあたるでしょう。罰則は個人の場合、『5年以下の懲役もしくは1000万円以下の罰金、またはその両方』(25条)であり、法人の場合、『3億円以下の罰金刑』(32条)となっています。

条例による規制もあります。例えば相模原市では、ポイ捨てを防止する条例を施行しており、市の勧告や命令に従わない場合、最大2万円の罰金が科される可能性があります」

Q.使用済みマスクであることで、廃棄物処理法以外の法的問題が出てくる可能性はありますか。

牧野さん「『感染症の予防および感染症の患者に対する医療に関する法律(いわゆる感染症法)』では、使用済みマスクのポイ捨てを禁止する条項そのものはありません。

ただ29条に『当該感染症の病原体に汚染され、または汚染された疑いがある飲食物、衣類、寝具その他の物件について、その所持者に対し、当該物件の移動を制限し、もしくは禁止し、消毒、廃棄その他当該感染症の発生を予防し、またはそのまん延を防止するために必要な措置をとるべきことを命ずることができる』とあり、都道府県知事が使用済みマスクのポイ捨て禁止措置を取ることは可能です」

Q.商業施設の清掃にあたる人がポイ捨てされた使用済みマスクを拾い、新型肺炎インフルエンザといった感染症にかかったなど、感染を広げた可能性がある場合、ポイ捨てした人の法的責任は。

牧野さん「被害者が加害者の故意・過失および因果関係を証明できれば、不法行為責任を追及することができますが、『自身が感染していることを認識していたのに、使用済みのマスクを捨てて感染させた』事実や、感染源が唯一であった事実などを証明できなければならず、一般には、民事責任による損害賠償請求権を追及することは非常に難しいでしょう」

Q.マスクをポイ捨てする人を見た場合、通報すべきとすればどこでしょうか。

牧野さん「各市町村の環境美化の担当部署になります。先ほど挙げた相模原市では、資源循環推進課(美化啓発班)、川崎市では、環境局生活環境部減量推進課となります」

Q.マスク、もしくは何らかの衛生用品の廃棄で逮捕や立件、賠償請求などに至った事例はありますか。

牧野さん「民家の駐車場に使用済みティッシュの塊8個を捨てたとして、廃棄物処理法違反(不法投棄)の疑いで福岡市在住の男性が逮捕された事例があります。

『廃棄物』とは『ごみ、粗大ごみ、燃え殻、汚泥、ふん尿、廃油、廃酸、廃アルカリ、動物の死体その他の汚物または不要物であって、固形状または液状のもの』と定められており、使用済みティッシュも該当するとされました」

オトナンサー編集部

マスクのポイ捨て、法的問題は?