ドロマイト結晶の写真。メタンハイドレート内の生物痕跡はドロマイト結晶につつまれて発見された/Credit:natuer
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メタンハイドレートは水とメタンから成る個体であり、将来のエネルギー資源として期待されています。

日本近海には複数のメタンハイドレート鉱脈が存在しており、採掘調査が行われてきました。

今回、日本の研究者によって、ふとした偶然からメタンハイドレート内部の僅かな隙間に生命が存在していることがわかりました。

分厚いメタンハイドレート層の、低温かつ高塩濃度の微小空間内部で、一体どうやって生きていたのでしょうか?

研究結果は明治大学グレン・T・スナイダー氏らによって、2月5日に学術雑誌「natuer」に掲載されました。

Evidence in the Japan Sea of microdolomite mineralization within gas hydrate microbiomes
https://www.nature.com/articles/s41598-020-58723-y

生命の痕跡は偶然みつかった

採掘されたばかりのメタンハイドレート。この後、内部のコアだけが研究のために採取されるが、残存物の中に黒い粒があることに気づいた研究者がいた/Credit:nature

メタンハイドレート内部での生命痕跡は、偶然により発見されました。

通常、採掘されたメタンハイドレードのサンプルは外部環境の影響を避けるために、中心部のコアだけが研究に使われます。

しかしある研究者が、コアを抜き取った溶けかけのサンプル残存物の中に奇妙な黒い粒が含まれていることに気づきました。

成分を解析すると、黒い粒はドロマイト結晶に包まれた有機物でした。ドロマイト結晶は、マグネシウムカルシウムおよび炭素などからなる炭酸塩鉱物です。

研究者は内部の黒い有機物が生命の痕跡の可能性があると考え、DNAが含まれているかどうかを確かめることにしました。

結果、ドロマイト結晶の内部からは複数種類の微生物のDNA、加えて石油化合物とその分解産物が抽出されました

メタンハイドレート層は石油化合物を含むことが以前から知られています。

そして確認されたDNAには、フラボバクテリアと呼ばれる種類の微生物がいました。

フラボバクテリアは油を分解し、ドロマイト結晶の材料を作る能力があります。

このことから、メタンハイドレート層に微生物がとらわれると、その中のフラボバクテリアが石油化合物を分解しながらドロマイト結晶を周囲に作りはじめ、自分を含めた生物を閉じ込めるのだと考えられます。

そして閉じ込められた微生物たちは石油化合物を分解しながら生き延び、遥かな時間を経て研究者に偶然発見されることになったのです。

黒い点は有機物で、その周りをドロマイト結晶が包んでいる/Credit:natuer

これまでドロマイト結晶は地球の歴史上、さまざまな時代と場所で作られてきましたが、どのような過程で作られるかはわかっていませんでした。

今回の研究により、ドロマイト結晶は極限環境における生命活動の証拠になりうることがわかりました。

ドロマイト結晶は多様な生命痕跡の第一歩に過ぎない

ドロマイト結晶は内部の微生物の活動によって時間をかけて大きくなっていく/Credit:nature

研究者はさらに調査を行うことで、メタンハイドレート層以外のさまざまな地質環境で、より多様な類似結晶をみつけることができると考えています。

予測が正しければ、地球の地質は無数の生物(またはそのDNA痕跡)を含んだ結晶カプセルで満ちあふれていることになります。

地球はその歴史のなかで多くの隕石の衝突を経験し、そのたびに大量の地質を宇宙空間に飛び散らせてきました。

もしかしたら地球は銀河系における、生命のスーパースプレッダーなのかもしれません。

メタンと二酸化炭素を置き換える一石二鳥なメタンハイドレートの採掘方法が見つかる!

reference: nature / written by ナゾロジー編集部
メタンハイドレート内で生活している微生物を発見