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 昔から世界中どこの国にも呪いによりもたらされたと噂されている現象は数多く存在する。それは科学技術が発達した今も同様で、人は、抗うことのできない不可解な現象を目の当たりにすると、そこに抗うことのできない不可解な超常力が働いているのではと信じる傾向がある。

 こうした呪いとは、いったいなんなのだろうか? 

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海外で噂されている呪いの例

 イギリスのテレビダンスコンテストストリクトリー・カム・ダンシング」は、有名人がプロのダンサーとペアを組んで、社交ダンスを競うTV番組だが、これに出演したセレブは必ずと言っていいほど、離婚、破局、スキャンダルに巻き込まれると言われている。

 この「ストリクトリーの呪い」は、必ずしもショーのタイトなスケジュールや、長い練習時間、親密なダンスが原因だとは限らないようだ。

 フランスで毎年開催されるツール・ド・フランスには、優勝した選手が必ずといっていいほどアクシデントにみまわれるという「ツール・ド・フランスの呪い」があるそうだ。

 その他にも、「ジェームズ・ディーンの車の呪い」はよく知られているし、ジェームズ・ボンドの次回作もまた、最新の"呪い"として噂されている。

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科学的観点から見る「呪い」を信じる心理現象


 科学的な観点からみると、呪いは理性的に説明できる。どうして人々が悪い出来事を超常現象、超自然の力のせいにするのか、はっきりさせてくれる。

 例えば、呪いを信じる行為は、思考スタイルから起こることがある。心理学者のダニエル・カーネマンによると、意思決定をするときには、明確なふたつの方法があるという。

 ひとつは、ほとんど無意識のうちにとっさに心を決めるやり方。この方法は、直感的で、偏りがあり、機能的にはエラーを起こしやすい。もうひとつは、落ち着いてゆっくりと理性的に考えを進める方法だが、呪いを信じる人たちは、無意識や主観的、直感的な思考の仕方が優位を占めているのではと言われている。

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 他にも、呪いを信じるのは、カオスの原因となるわけのわからない世界を理解したいという願望から起こる可能性もあるという。

 なぜ、雲がなにかの形に見えたり、トーストのこんがり具合にキリストの顔を見たりするのだろう? 

 わたしたちは、無作為な情報の中から、規則性や関連性を見出す、アポフェニアや、意味のある信号を含まないノイズから有意味なパターンを見出してしまうパターニシティと呼ばれる現象に陥りやすい傾向がある。

 呪いの場合、なんでも物事に規則性や関連性を見い出したいと願う私たちの傾向が、さまざまな出来事の原因を、偶然や人的エラーではなく、災難や不運と結びつけてしまうようだ。

 また、人はバーナム効果の影響を受けやすい。これは、一般的な情報が特定の個人と関連があると誤まって推測する心理のことだ。

 呪いの場合、ちょっとした不運を特別な個人の重大なジンクスと結びつけるクセとして説明できるかもしれない。

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呪いを信じる人の心理的傾向


 そのほかの心理的傾向によっても、呪いを信じやすくなることがある。

 呪いを信じる人は、潜在的に悪運に結びつく動かぬ証拠を探したがり、それと矛盾した情報には見向きもしない傾向があるのかもしれない。

 こうした偏った確証傾向が、超自然の力のせいかもというただの推定を支える、いちおう筋は通っているが、論理的には一貫性のない話を生み出す。

 例えば、ツタンカーメンの呪いの場合がそうだ。この話は、ファラオの墓に分け入った者に呪いがふりかかるというものだが、ツタンカーメンの墓を発掘した時点では、考古学者たちにはなんの災難もふりかかっていない。

 しかし、マスコミが"ファラオの呪い"を報道したことによって、のちに起こった発掘チームメンバーの死や災難が呪いと結びつくことになってしまった。同じように、『ポルターガイスト』や『オーメン』といった映画も、時間がたつにつれて呪われているという評判がたつようになった。

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 呪いの力が人々に与える影響は、正確なことを信じたいという気持ちから発生する。これは、その出来事に関して、人間の力ではどうしようもないと感じる、外的支配力から生じる場合が多い。

 自分の知覚ではどうにもお手上げとなると、人はますます謎めいた外部の力を受け入れるようになる。心理学者はこれを呪術的思考と呼んでいる。

 呪いを信じるのは、さらに特定の人格特性とも関係している。とくに、その人が曖昧さや神経症的なことにどれだけ耐えられるかという点だ。

 曖昧で不確かなものに対する耐性は、その人が不安に対処できるかを示す。曖昧なことに耐えられない人は、閉鎖的になる傾向がある。

 それは、その証拠を疑いの目をもって考えず、すぐに結論に飛びつく失敗として現われる。こうした要素は、本質をでたらめに、早合点してしまうことにつながる。一方、神経症は呪いに対して心配や不安をつのらせ、常に頭から離れない状態にしてしまう。

 極端なケースでは、呪いを信じ込むと自分に自信がなくなり、将来の成功も危うくなる。心理学者は、これを自己達成的予言と呼んでいる。

 こうなると、不幸を避けられないという認識が生まれ、災難をほのめかされると、否定的な結果を招く。これをノセボ効果という。まったく無害な薬を服用しても健康を害してしまう現象だ。

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呪いを信じる社会的要素


 呪いの影響は、その文化的背景から発生することもある。とくに、教育や社会の中で出回っている話を通して、呪いの概念は長い時間をかけて不動のものになっていく。結果的に、文化として社会に受け入れられ、もっともだと思われるようになる。

 例えば、「邪眼」は世界中で知られている。もともとは、悪意を持って睨みつけることで相手に呪いをかける魔力だが、最近では、大成功した人がまわりから羨望と嫉妬を集めると、その羨望と嫉妬の眼差しでその人の幸運が帳消しになってしまうという呪いになっている。

 社会的には、マスコミ報道が呪いという概念を生み出すことがある。近年の例では、Momoチャレンジがある。


それでも呪いの力は信じられていく


 呪いの科学的な根拠はなにもないが、それでも呪いが人々に与える心理的影響は相変わらず大きいのだ。

 呪いを信じることは、意思決定の能力を弱め、幸せや自信を感じられなくしてしまう。極端な場合は、自分の頭で考えられなくなったり、異様な考えに憑りつかれたり、奇妙な行動に出てしまう場合がある。

 これだけの否定的な証拠があるにも関わらずそれでも呪いは信じ続けられている。それこそが「呪い」そのものではないだろうか。

References:Why do people believe in curses?/ written by konohazuku / edited by parumo

全文をカラパイアで読む:
http://karapaia.com/archives/52285924.html
 

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