2月13日に放送された『科捜研の女』テレビ朝日系)の第30話。まるで、「サスペンス」と節約術を公開する「情報番組」の掛け合わせのような内容だった。

<第30話あらすじ>「殺人のような金がかかる無駄はしない」
公園で女性の殺害遺体が発見され、臨場する科捜研メンバーたち。状況から殺害現場は他の場所と考えられた。被害者はブログで人気を誇る“節約の達人”柴崎佐江(菊地美香)だと判明。だが実は贅沢が大好きな佐江は、儲けるためにブログを書いていた“ビジネス節約家”であり、節約情報を提供していた“ゴースト”の存在も浮上する。
一昨日、夫婦喧嘩をし、家を出て行ったきりだという被害者。直接の死因は、後頭部を鈍器で殴られたことだが、背中や両腕にも亡くなった後についた奇妙な線があった。胃にはパン、卵、タマネギ、牛脂、胡椒が残っており、節約料理と見られたが、何の料理かまでは不明だった。遺留品の指紋から、“本物の節約の達人”園田逸子(松岡依都美)を見つけ出す科捜研メンバーたち。逸子は、佐江と半年ほど前に出会って以来、節約の知恵を無償で提供しブログに協力していたという。家出した佐江を自宅に泊めたことを逸子は認めるが、「殺人のような金がかかる無駄はしない」という驚きの理由で殺害は否認した。
そんな中、新たに浮上した容疑者は、逸子の実母で別居中の園田志乃(筒井真理子)。20年前、愛人の桐生康介(西村匡生)を殺害した前科があり、なんとその罪を娘の逸子になすりつけようとしていたという。そのときの様子を目撃、証言したのが佐江だった。
8年前に出所した志乃は喫茶「もと一」で働いており、同店には佐江の胃の内容物で作れる「パンの耳ステーキ」なるメニューが出されていた。このステーキは逸子も作れるとのこと。志乃と逸子、それぞれが作ったパンの耳ステーキを鑑定すると、胃の内容物と成分が一致したのは志乃が作ったステーキだった。さらに、店内からは佐江の血痕が付着したストッキングが見つかった。
志乃は容疑を認めるが、このストッキングには榊マリコ(沢口靖子)の指紋が付いていた。つまり、事件後に志乃が逸子の家から持ってきたストッキングである。土門薫(内藤剛志)は「娘を守るために悪い母親を演じているのでは? 20年前の事件と似ている」と志乃に指摘した。
逸子の家を捜索するも、証拠は発見されない。しかし、マリコたちは遺体の背中に残る痕を元に、大きなタライ2つとシャワーホース等で遺体を運び出せると証明。でも、逸子は「遺体は運んだが殺してはいません」と佐江の殺害を否認した。彼女は志乃の犯行と思い、志乃をかばうために遺体を運び出していたのだ。
パンスト小銭貯金に入っていた硬貨を調べると、「もと一」オーナー・山元一史(日野陽仁)の指紋が検出された。志乃は山元の初恋の人だった。20年前、桐生が逸子に手を出そうとした場面を目撃した山元。さらに桐生は志乃を侮辱し、カッとなった山元が桐生を刺殺していたのだ。その現場を目撃した佐江は山元に口止め料を要求し、待ち合わせの場で佐江が志乃を侮辱。そのことに腹を立てた山元は、今度は佐江を撲殺していた。

科捜研の法則に当てはめると犯人はバレバレ
母・志乃と娘・逸子がお互いのことを殺人犯だと思い、かばい合うというのが今回の構図だ。なので「はい、私がやりました」と罪をあっさり認める志乃は犯人ではないし、だからといって逸子が犯人でもない。

前回のレビューで「最近の科捜研はいつもモブが犯人」という“科捜研あるある”を紹介した。それをこの30話に当てはめると、犯人は山元しかいなくなる。クローズアップされた途端、土門から“お前”呼ばわりされるわかりやすさだ。

ここで、『科捜研の女』で犯人を導き出す法則を今一度まとめたい。
・犯人は20時12〜13分くらいにチラッと出てくるモブキャラの可能性が高い
・20時30分頃の時点で犯人と強く怪しまれる者は九分九厘犯人ではない

今回は登場人物が少な過ぎたので、バレバレだった。

また、この山元が最悪なのだ。志乃がバカにされたのが許せず桐生を殺したくせに、その罪を代わりに被った志乃が服役してもそれはそれで平気。「嫌われたくなかった、志乃さんだけには……」というクズ理論で、自分が犯人と決して名乗り出ようとしないのだ。自分が犯人とばれたら志乃に嫌われるし、志乃が服役しても自分が嫌われるわけではないという思考回路。しかも、殺人罪をなすりつけた志乃を自分の店で雇うというクソ度胸である。言ってることとやってることが矛盾している。
「好きな女を守りたかったんじゃないのか!?」(土門)
山元がみっちり土門に怒られている。いつもマリコを守っている土門だけに、言葉に重みがある。

サスペンスであり、情報番組でもあった
今回はサスペンスでありながら、節約術を特集する情報番組のようでもあった。

逸子の家の浴室にはシャワーがない。
「水の使いすぎを防ぐためシャワーを外したんですね」(マリコ)
プラスチック製の大きな桶を使って洗濯する逸子。
「やはり、洗濯の基本はお風呂の残り湯ですよね」(マリコ)
確かにそうだが、この桶(2つ)とシャワーホースで作る大きな箱で佐江の遺体は運ばれた。こんなのゴロゴロ転がしてたら目立ち過ぎるし、誰かしらに目撃されてると思うのだけど……。よく通報されなかったものだ。

伝線したストッキングには小銭を入れ、貯金箱にしていた逸子。確かに貯金なのだが、佐江が撲殺された際の凶器はこのパンスト小銭貯金である。(「パンスト小銭貯金」というパワーワード!)

大量の小銭でぬかを購入していた逸子。コツコツ貯金してきた賜物であるが、その小銭には犯人の指紋が残されている。
マリコはパンの耳ステーキを逸子に作ってもらい、払った材料費のおつりとして5円を受け取っていた。なんと、その5円に山元の指紋が残っていたのだ。相変わらず、マリコが持っている。今回は証拠まで引き寄せていた。もっと言えば、30話は無駄なシーンが一切なかった。節約術も、おつりをもらうのも、小銭での買い物も、全てが伏線!
この5円硬貨に血液反応があるか調べる際、橋口呂太(渡部秀)が手を合わせて祈っている。
「ご縁がありますように……!」(呂太)
凶器とご縁があるなんて嫌過ぎるだろう。

実は、これも“科捜研あるある”の1つだ。大量の物をしらみつぶしに鑑定し、証拠を探すローラー作戦。前回は座布団が、前々回はダンベルが対象だった。そして、今回は小銭である。「小銭ローラー作戦」の決行! 最近、『科捜研の女』ではローラー作戦が毎回必ず行われる。

領収書が落ちず、最中を落とすマリコ
どうやって佐江の遺体を運んだか検証するため、ロープや桶など目ぼしい物を大人買いしてきたマリコ。すると、彼女は日野所長(斉藤暁)から釘を差された。
「言っとくけどね、あれ全部経費で落ちないからね。科捜研も年々厳しくなってるんだよ」(日野)
ショックのあまり「ガーン!」という表情で固まり、食べている最中を落としてしまったマリコ。

エンディング、恒例のどもマリデートでマリコは言った。
「予算も年々厳しくなってるの。鑑定も節約の時代なの」

ドヤ顔のマリコ。でも、25話では事件を解決するため、日野所長が引くくらい高価なキャリーバッグを無断購入し、当たり前のように領収書を日野所長に押し付けていたはずだ。視聴者は忘れていない。そういうとこだぞ、マリコ。
(寺西ジャジューカ イラスト/サイレントT@ワレワレハヒーローズ

木曜ミステリー『科捜研の女』
ゼネラルプロデューサー:関拓也(テレビ朝日
プロデューサー:藤崎絵三(テレビ朝日)、中尾亜由子(東映)、谷中寿成(東映)
監督:森本浩史、田崎竜太 ほか
脚本:戸田山雅司、櫻井武晴 ほか
制作:テレビ朝日、東映
主題歌:今井美樹「Hikari」ユニバーサル ミュージック/Virgin Music)
※各話、放送後にテレ朝動画にて配信中

イラスト/サイレントT(ワレワレハヒーローズ)