雑誌「装苑」でモデルデビュー後、数多くのファッション誌や広告に出演、2018年にはパリコレデビューを果たしただけでなく、女優としても注目を集めているモトーラ世理奈。そんな彼女の最新主演作が、台湾を舞台にしたキュートな映画『恋恋豆花』(2月22日公開)だ。

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恋愛や人間関係も含め大学生活がつまらなくなり、中退を考えている大学生の奈央(モトーラ)は、父の博一(利重剛)の提案で、彼の3度目の結婚相手となる綾(大島葉子)と台湾旅行をすることになる。“父の再婚相手”というだけのよく知らない女性となぜ旅行をしなければならないのか?と気乗りしない奈央だが、せっかくの台湾旅行を楽しみたいと思う気持ちもあり…。いろんな意味で気持ちが定まっていない奈央を、彼女はどう演じたのだろうか。モトーラ世理奈に、芝居への向き合い方や作品への想い、撮影秘話などを聞いた。

「私は奈央とは違って専門学校に通っていたのですが、この年頃って、ホントに自分がやりたいことってなんなんだろう…とモヤモヤする時期だなあって。だから、そういう部分はきっと奈央も同じなんだろうなと共感しました」と話すモトーラ。等身大の自分にも近い役を演じるのはかえって難しくなかったのだろうか。「そういうことはあまり感じませんでした。ただ、ホントにロードムービーみたいな撮影で、ずっと撮影クルーと一緒にいたんです。監督が『この場所いいね!』と言ったら、『じゃあここで撮ろう!』ということもあったので、そういう時はプライベート気分からの切り替えが大変でしたね」。劇中の奈央は台湾旅行を楽しんでいるが、実際にモトーラも楽しんでいるので、役とシンクロするあまりどう切り替えれば良いか戸惑う部分もあったのだそう。しかし、今関あきよし監督は「『それでもいい。それが本当の表情だったらいいよ』と言ってくれました」と本作の撮影を述懐。

ミニドラマ「美・少女日記」、『アイコ十六歳』(83)、『タイム・リープ』(97)など、これまでにも美少女たちの面差しを映像に収めてきた今関あきよし監督。今回モトーラは、監督の演出をどう感じたのだろうか。「今関監督は本当に少年のような方です。パワフルで、すごく柔軟だし、ラフに話してくださるんです」。オーディションの時もずっと話をしていたそうで、「超緊張していた」のに楽しかったんだとか。「監督からは、いろんな表情の私を観客に見せたいって言われました。私、いままで自分の中でもモデルとしてのイメージが強くて、そんなにいろんな表情を見せていなかったので、そう言ってもらえてうれしかったです」とニッコリ。

また、一緒に旅をする微妙な関係の綾役を演じた大島葉子とも、実際はとても仲がよかったそうだ。「葉子さんとはすごく仲よくさせてもらって、友だちみたいな感じになれたのがうれしかったです。葉子さんは何回も台湾に行ったことがあるので、現地を案内してもらったり、撮影以外でも2人でいる時間が多かったです」。撮影はかなりハードスケジュールだったそうで、「“超ゲリラ撮影”というか、毎日みっちり撮影していたんですけど、毎日いろんなところを観光できて、おいしいものを食べて…とハードなのかハードじゃないのかわかんないという感じでした(笑)」と笑顔で語る。「台北、台中、九份の3か所をわりと短い期間でギュッと回らなきゃいけなかったので、撮影では行く予定がないけれど、行きたい場所がたくさんあって、葉子さんと『いつ行けるかな?』って話していました」と機会をうかがっていたそうで、「『じゃあ、30分で戻ってきてね』と今関監督に言われて、2人で急いで買い物したり、おいしい豆乳を売っているお店にダッシュで買いに走ったり…。そういうことができて楽しかったです」と、撮影の合間も充実した時間を過ごしていたよう。

タイトルにもなっている“豆花”を始めとした、台湾の魅力的なスイーツやグルメがちりばめられているのも本作の大きな魅力。奈央が台湾グルメを食べまくるシーンでは、とてもおいしそうに食べるモトーラの姿が印象的だが、「ホントにおいしいから、“ホントにおいしい顔”をしちゃうんです」と笑う。なかでも特にお気に入りなのは「イカの団子のスープ」だったそうで、「もちろん豆花もすごくおいしかったんですけど、やっぱりイカの団子のスープが一番かな。魯肉飯などを提供しているごはん屋さんって、だいたい優しい味のスープがお店にあるんです。つみれとか、魚介の団子が入った塩味のあっさりしたスープなんですけど、それが大好きで。今回の台湾ロケで一番忘れられない味ですね」としみじみ。また、撮影中あちこちの観光地を回って、お気に入りの場所も見つけたという。「九份は、以前に友だちともプライベートで行ったことがあったし、もちろん夜もきれいなんですけど、朝の九份がすごく好きでした。展望台があるんですけど、そこがすごく好きで、朝そこに行ってひとりで豆乳を飲んで、『気持ちいいな〜』って(笑)」。

本格的に女優活動を始めてからまだ日も浅いが、『少女邂逅』(18)で長編映画初主演を務め映画デビューしてからというもの、『21世紀の女の子』(18)、『おいしい家族』(19)、映画&ドラマ『ブラック校則』(19)と出演作が続き、2020年には本作を始め、諏訪敦彦監督の『風の電話』、シルク・ドゥ・ソレイユバイオリニストと音楽監督を務めるポール・ラザーと共演した『Memories』と主演作が目白押し。順風満帆な女優活動を送るモトーラは「ずっとお芝居がやりたかったんです。もちろんモデルもやりたかったけど、やっとお芝居をスタートできた、という感じ。『少女邂逅』で初めて映画に出演させていただいてから『映画をやりたいな』って思うようになったんです」と明かす彼女は、「わからないことがたくさんあって。まだまだ勉強中です。でも、自分自身でもいろんな自分を見てみたいし、いろんな役に挑戦してみたい。海外にも行ってみたいですね」と、これからの活動にも意欲を見せていた。

最後に作品の見どころを聞いてみると、「最近なかなかなかった映画というか、たぶん観てくださった多くの人に、どこか豆花みたいな柔らかい、ほっこりした温かさを残す作品になったんじゃないかなって思っています。そういうのって、普段の生活のなかではなかなか得られない。『この映画を見た気持ちをちょっとポケットにしまっておこう』みたいな、そんな感覚になれるかわいらしい作品だと思います」と、はにかむような笑顔を見せながら答えてくれた。(Movie Walker・取材・文/オチアイユキ)

「装苑」での鮮烈なデビュー後、女優としても注目を集めるモトーラ世理奈