DMCAの悪用問題

ラブライブ騒動で北守氏のアカウントも凍結

 Twitterで、DMCAの悪用問題が話題となっている。DMCA は「Digital Millenium Copyright Act」の略で、デジタルデータに関する著作権を保護するための法律である。もし自分のサイトコンテンツが盗用された場合、インターネットサービスプロバイダに対して一定の要件を満たした申請を行うことによって、コンテンツの削除を要請することができる。

 ネット上の著作権侵害に対抗するシステムはもちろん必要だ。しかし、このDMCAについては、比較的容易に悪用することができてしまう。他人のコンテンツそれ自体を削除させることを目的として、虚偽のDMCA申請を行うのだ。

◆虚偽申請によるTwitterアカウントの凍結
 アメリカサンフランシスコに本社を置くTwitter社は、著作権に関してはDMCAに基づくというポリシーを持っている。著作権を侵害するコンテンツが含まれるツイートに対して権利者から申し立てがあった場合には、該当コンテンツの削除および警告として当該アカウントへのロックが行われ、同一アカウントによる著作権侵害が続いた場合には、そのアカウントは停止される。

 しかし、このDMCA申請に対するTwitter社の審査には大いに疑問が沸く。明らかな虚偽申請によって、twitterアカウントが凍結される例が相次いでいるのだ。森哲平氏もその一人だ。

 森哲平氏は、2月19日の朝にtwitterアカウントが凍結された。理由は著作権侵害だという。彼のnoteによれば、自分自身および娘が描いた、ゲーム「東方」のキャラクターが引っかかったというのだ。しかし、著作権者だと主張している岐阜県の会社は存在が確認されず、住所も山の中だった。明らかなる虚偽申請だといえるが、これに異議を申し立て、アカウントを復活させるには2つの方法しかない。「撤回」か「異議申し立て通知」である。

 「撤回」は、申し立て者に対して連絡を取り、著作権侵害だという申し立てを取り下げてもらうというもの。これは悪意ある申し立て者に対して行うのは非現実的であり、単に自分自身の個人情報を相手に教えるだけとなってしまう。

 「異議申し立て通知」は、Twitter社に対して削除されたコンテンツを戻すよう申請することができる。しかしその場合、個人情報Lumenというウェブサイトに記録され、全世界で閲覧されることになる。これでは事実上、「異議申し立て通知」は不可能となる。

◆筆者も凍結の憂き目に
 そして森哲平氏が凍結されてからおよそ半日後、筆者のTwitterアカウントDMCAの申し立てにより凍結されてしまった。どのようなコンテンツ著作権違反だとされたのか。いくつかあるのだが、一番笑えるのがこの写真だ。

これは、筆者が昨年、近所の夏祭りの福引で当てたキャリーバッグを撮影してアップロードしたものだが、なんと、この写真が著作権侵害だとされたのである。誰の!?どう考えても素人がスマホで撮影した写真なのだが、こんなのでもDMCAの申し立ては通ってしまうのである。

 キャリーバッグの写真を自分自身のコンテンツだと申し立てたのは、株式会社レッドカンパニーの知財管理統括だ。名前は個人情報なので伏せるが、偶然だろうか、どことなく「山岳ベース事件」に関与していそうな名前だ。

 前述したLumenというサイトには、DMCAの申し立てをどの団体がどのアカウントにしたのか、検索すればわかるようになっている。レッドカンパニーは多くのコンテンツを保有しているらしく、精力的にDMCAの申し立てをしている。もうひとつ、ここ数日精力的にDMCAの申し立てをしている会社に株式会社モレノがあるが、たぶん本社はエクアドルかな? ともかく、この2社の申し立てによって、森氏や筆者だけでなく、数人の人物が凍結の憂き目にあっている。その一人に、著述家である赤木智弘氏もいる。「丸山眞男をひっぱた」くぐらいでは、連合赤軍の同志にはなれないということだろうか。

ラブライブのパネル批判が原因か
 DMCAの悪用については、以前から指摘されていた。たとえば、気に入らない絵師を凍結させる手段として、同人界隈では既に知られていた。しかしここ2、3日で、森氏や筆者、赤木氏など、複数の人物が突然DMCAの虚偽申請でアカウントが凍結されたりロックされたりしているのはなぜなのか。直接的な理由ははっきりしている。そうした被害を受けた人物はすべて、数日前からTwitterを賑わせている、メディアミックスアイドルプロジェクトラブライブ!サンシャイン!!』とJAなんすんが行っている「西浦みかん大使」のコラボキャンペーンのパネルを批判していた。

 JAなんすんの管内である沼津市は、『ラブライブ!サンシャイン!!』の舞台であり、特産品のみかんアニメでも登場する。したがって、同地のみかんの販売促進にこの作品とのコラボが行われることは自然であり、数年にわたって続けられていた。

 問題は、2月に発表されたパネルにある。『ラブライブ!サンシャイン!!』のキャラクター高海千歌を描いたものだが、そのスカートに、股間が透けているようにも見えなくもない、不自然なY字の影がついていた。あるTwitterユーザーがその問題を指摘したのをきっかけに、一気に話題になった。

 筆者は「宇崎ちゃん」献血ポスターについてのHBOの記事で、いわゆる萌え絵」とコラボするのはよいが、公共団体がそれを行う場合は特に、女性性をアイキャッチとして使っているとみられる表現は避けるべきだ、と主張してきた。したがって、今回の『ラブライブ!サンシャイン!!』のパネルも当然、不自然にみえる股間の影については修正を加えるべきだと考えた。

◆パネル批判者に対する悪意
 ところが、こうした批判は「宇崎ちゃん」献血ポスターのときと同じく、「オタク」たちの反発を招いた。パネルの一部への批判が、作品それ自体への批判であると解釈され、明らかな性的なコードを否認し、けして問題はないと言い張る。要するに、「宇崎ちゃん」記事でも書いた、不誠実な「否認」が起こったのだ。

 当然ながら、筆者は「ラブライバー」と呼ばれる同作品のファンが、すべて不誠実で悪意ある存在だと思っているわけではない。熱心なファンの中にも、そのパネルを含め『ラブライブ!』の公式が性的消費の方向に傾いていることを憂いている者も多くいたことを知っている。筆者もアニメについては好んで視聴しており、その作品傾向から、必ずしも性的消費に肯定的なファンばかりではないことも理解している。特に無印映画を鑑賞しに行ったとき、小学生ぐらいの女の子と母親の二人連れが多かったのが印象に残っている。

 しかし、これもまた当然ながら、ファンの中にも極めて強い悪意を持つ人物もいるであろうし、またファンでなくとも、このパネル炎上に便乗して自分の悪意を達成しようとする人物もいてもおかしくはない。同パネルは、設置場所である「ららぽーと沼津」に苦情が入ったらしく、現在では撤去されているが、パネル批判者たちへの凍結は、いわば「表現の自由」への弾圧は、そのあたりから始まっている。これはけして偶然ではないだろう。

Twitter社のチェックはどうなっているのだろうか
 もちろん、何らかの言論活動を行う上で、悪意ある人物から何らかの嫌がらせを受けることは、リスクとして引き受けるべきかもしれない。問題は、その嫌がらせをあっさりと実行してしまうTwitter社の対応だ。上述の通りTwitterにおいては、著作権侵害で凍結された場合、それを覆すのには莫大なコストがかかる。確かに著作権侵害を気軽に出来なくすることは重要だ。しかしそうであるならば、実在の人物の名を借りた明らかな偽名、明らかに存在しない会社からの虚偽申請に対しては、厳しい審査により事前にそれを跳ね付けることを徹底するべきではないのか。このような適当な審査が続く限り、いつでもだれでも、気に入らない人物を凍結させることは可能だろう。果たしてそれが、あるべきSNSの未来だろうか。

 DMCAではないが、以前筆者は別の案件でTwitter社からロックされたことがある。それは差別問題だ。筆者が直接的に発言したわけではなく、筆者がレイシストの差別発言を引用し批判したツイートの、差別発言の部分が、違反とされたのだ。そのロックはすぐ解除できたからよいものの、一方でいくら差別発言を繰り返しても一向に凍結されないアカウントがあることも周知の事実だ。

 いまや、Twitterは単なる私企業のSNSサービスではなく、政治・経済・文化、様々な領域にわたって、市民生活の重要な一部となっている。いわば一種の公共財なのであり、その運営に対しては、高い公共性が求められるはずだ。アカウントの凍結という重大事について、不公正かつ悪意がまかり通るような対応は、けして許されてはならないだろう。

DMCA虚偽申請への対応
 悪意あるDMCAの虚偽申請に対して、その被害者は個人情報をすべて晒すか泣き寝入りするしかない――このようなカフカ的理不尽に対して、我々はどう対処すべきか。たとえば今回、筆者は図らずも当事者になってしまったわけだが、(アカウントの不当な凍結という)権利の侵害に対する抵抗は我々の義務だとするイェーリングの言葉を頭の中で繰り返し反芻している。利益法学によれば法はlebendigなもの(生き生きとしたもの)であり、権利のための闘争が必要なのである。正規の方法ではなくとも、いくつかの法的措置が選択肢として存在する。他の被害者との連携も考えられるだろう。むろん、専門家との検討が必要だろうが。

 いずれにせよ、DMCA悪用の問題は、もはや「明日は我が身」の世界である。この問題について大きな世論が巻き起こり、Twitter社の運用が改善され、権利の回復がなされていくことを、当事者の一人としては願っている。

<文/北守(藤崎剛人)>

【北守(藤崎剛人)】
ほくしゅ(ふじさきまさと) 非常勤講師&ブロガー。ドイツ思想史/公法学。ブログ過ぎ去ろうとしない過去 note:hokusyu Twitter ID:@@hokusyu1982

ラブライブ騒動で北守氏のアカウントも凍結