リンダキューブアゲイン』や『俺の屍を越えてゆけ』といった唯一無二の独特な世界観を持つRPGや、アニメ・漫画化などのメディアミックスを果たしたシミュレーションゲーム『高機動幻想ガンパレード・マーチ』など、PlayStation(R)でリリースされたこれらのソフトを遊んだことがある、またはタイトル名だけは聞いたことがあるという人は少なくないだろう。こうした一連のタイトルを生み出したソフトメーカーのアルファ・システムは、2001年にアーケード用シューティングゲーム式神の城』(以下、『式神』とも呼称)を制作し、シューティングゲームファンからの人気と信頼を獲得。しかし2006年にリリースした『式神の城III』を最後に、シリーズの展開はパタッと止まってしまった。続編や再移植を望む声がファンから挙がっていたなか、12年ぶりの新作シューティングタイトル『シスターズロワイヤル 5姉妹に嫌がらせを受けて困っています』が、Nintendo Switch(TM)のダウンロード専売タイトルとして2018年6月14日にリリース。そして今年の1月30日、PlayStation(R)4でも発売された。本作のコンセプトは単純に“5人の姉妹ゲンカ”なのだが、ゲームとしてはいったいどんな手触りになっているのか、プレイインプレッションを通じて紹介したい。



文 / クドータクヤ

◆掛け合い漫才のようなコミカルな展開
本作のストーリーは、舞台となるプルティマ大陸を蝕む悪の魔王をたやすく倒せるほどの強大な魔力を持ち、そして“超”がつくほど仲の悪い5姉妹が悲劇のイケメン天使・ヤシンを取り合うというもの。プレイヤーキャラクターとして選択できるのは、ドSだが面倒見のよい長女・ソナイ、毒舌かつ皮肉屋の次女・セルマ、歌劇団の男役のような世界に浸る三女・エジェ、5姉妹のなかで一番の常識人である四女・ヌル、末っ子ゆえに姉たちを存分にイジる五女・ラーレの5人。姉や妹たち、さらには“自身の良心”と戦いながらヤシンのもとへ辿り着き、一方的なプロポーズを果たすのが目的だ。

各ステージのスタート時とボス戦の前後にはキャラクター同士の会話デモが差し込まれるのは「式神」シリーズでもおなじみの演出だが、本作の場合はそのやりとりがまるで漫才のようにコミカルで、スキップせずについつい見入ってしまう。例えば長女のソナイをプレイキャラとして選んだ場合、妹たちから年齢や弱点を突いた散々なイジりを受ける。三女・エジェを選んだ際は、姉や妹から何を言われても気品のある立ち位置をキープする唯我独尊ぶりを発揮するなど、姉妹たちの立ち位置や性格に沿った会話が繰り広げられる。なおセルマを選択してステージを進めていくと、四女という立場ゆえに姉や妹からの板挟みを食らうため、唯一の常識人である彼女の苦労を窺い知ることができる。こうした会話のやり取りを5人ぶん楽しめるあたりは、一回のプレイで飽きさせないためのポイントと言えるだろう。

◆見た目は萌えでも中身は『式神』!
冒頭でも記したようにアルファ・システムによるシューティングゲームということで、まずは本作の原型にもなった「式神」シリーズを振り返っておきたい。連続猟奇殺人事件や連続失踪・昏睡事件の解決、そして上空に突如として出現した巨大な浮遊城の謎に迫るといったミステリアスなストーリーを背景に、アニメ・漫画に展開しても違和感のないビジュアル性の高いキャラクターを採用。それまでのシューティングゲームにおいて、プレイヤーが選択できる自機やキャラクターは3種類ほどだったところを、『式神』では1作目から5名という数を用意し、そして『~III』では10人までに増加。ゲーム中の使いやすさだけではなく、キャラクター自身のカッコよさや可愛さを押し出したことも多くのファンを生み出した要因のひとつだと考えられる。また、本来であればゲームのテンポ感を損なう恐れがある“キャラクター同士による会話シーン”を積極的に採用したことで、プレイヤーをよりゲームの世界に引き込むことに成功した一例といえるだろう。そんな人気作の香りをそれとなく感じさせる本作の操作は8方向移動に通常攻撃のショット、強力な攻撃と緊急回避を兼ねるボム、そしてキャラクターによって性能が変わる召喚攻撃の3つとなっている。「式神」シリーズではキャラクター自らが飛翔して空を駆けていたが、本作は二頭身にデフォルメされたキャラクターが地面をテクテクと歩くシステムとなっている。2018年のエイプリルフールアルファ・システムの公式Twitter上で、『ウォーキング・式神』という架空タイトルの第一報をゲーム誌の特集記事のようにアップしていたが、おそらく本作の原型となっていたのではないだろうか。

移動範囲が空から陸に変わったことにより、ステージに配置されている氷の床や巨大な風車に足がとられて移動しづらくなるといったギミックが加味され、シューティングゲームでありながらもアクションゲームのような感触なのが印象的。見た目もスマートフォン用のマップ探索型アクションゲームに近いビジュアルなので、カジュアル層にも受け入れられやすいイメージだ。

「式神」シリーズとまったくの別物ではなく、これまでのプレイ感覚を彷彿とさせるシステムが引き継がれているのだが、特に顕著なのは召喚攻撃だ。「式神」シリーズのプレイヤーキャラクターが放つ特殊攻撃の”式神“をオマージュした形になっている。例えば、ソナイが召喚する精霊は画面上に現れた敵を自動追尾してダメージを与えるのだが、これは「式神」シリーズの主人公・玖珂光太郎が繰り出す”サザエさん“とまったく同じものであり、シリーズのファンとしては懐かしさを感じずにはいられなかった。また、敵や敵弾に近接した状態で敵を撃破し、その距離が近ければ近いほど高ボーナスを得られる“テンション・ボーナス・システム”が採用されていることも「式神」シリーズの片鱗を味わうことができるひとつの要因となっている。敵または敵弾に自ら近づくことはシューティングゲームにおいて危険な行為だが、そのリスクを背負ってでも高いスコアをリターンとして得たいというシューターの性を見事に突いたこのシステムは、一回また一回とモチベーションを落とさず継続的に楽しめる仕様となっている。なお難易度はイージー、ノーマル、ハードの3種類が設けられているが、腕に自身があるプレイヤーはぜひともノーマルまたはハードで遊んでみてほしい。プレイを繰り返すうちに、自ずと敵弾に接近してスコア稼ぎに熱が入ってしまうことだろう。

壮絶な姉妹ゲンカの果てに、ヤシンの元へたどり着いたキャラクターはプロポーズを申し入れるのだが、目のまえにはまさかの化身が現れて……一難去ってまた一難の展開が待ち構えている。あまりにも一方的すぎる強烈な愛は実を結び、彼女たちは華やかなウェディングドレスを身にまとうことができるのか、まずはコンティニューを使ってでも見届けてほしい。パッと見はギャルゲーのような雰囲気に引いてしまうプレイヤーも多かれ少なかれいるだろう。筆者もこうした形でのカムバックにやや不安を感じていたが、召喚攻撃や“テンション・ボーナス・システム”の採用など、プレイ感覚はまさに「式神」シリーズの系譜であり、萌えの皮を被ったシリーズ最新作と言っても差し支えがない仕上がりになっている。ただ全6ステージ構成とはいえ、これまでの「式神」シリーズと比較した場合のボリューム不足は否めないものの、1,500円(税別)という値段と軽い息抜きとしてサクッと遊べるカジュアルな仕様を考慮すれば、十分すぎる出来と言えるだろう。比べてパッケージ版はなかなかの値段だが、ほぼすべてのアートワークを集結させたアートブック、サントラCDなど豪華な特典が付いている。『式神』で活躍された園田未来氏のアートワークを堪能できるわけで、コレクターズアイテムの価格としては妥当だろう。

オフィシャルサイトで掲載されている4コマ漫画では「まんま『式神』では?」とソナイ自らが発言しているが、ゲームシステムや手触りはまさにそのとおりで、自社IPだからこそできる一種の“パロディ”ともいえる本作。ついつい『式神の城IV』という形でのリリースを望んでしまうところではあるが、30周年という節目のお祝いとして作られた本作のさらなる展開にも期待したい。

(c)AlfaSystem Co.,Ltd.

萌えの皮を被った『式神』魂!『シスターズロワイヤル』の真骨頂は、WHAT's IN? tokyoへ。
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掲載:M-ON! Press