(李 正宣:ソウル在住ジャーナリスト

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 韓国内で新型コロナウイルスの感染が急拡大している。ソウルをはじめ全国にわたって新型コロナ感染者が続出し、21日20時現在、感染者数は204人に上り、死者も1名出ている。多くの専門家が「パンデミック(大流行)の兆しを見せている」と指摘する事態になっている。

 1月20日に初の感染者が確認されて以降、しばらく小康状態を保っていた韓国内の新型コロナ感染者数だが、ちょうど1カ月目に入った2月19日から突然急増し始めた。19日は1日で22人の感染者が確認され、20日に53人、21日は100人の感染者が発生するなど、拡散スピードはどんどん増している。

感染を疑われた入院患者が病院を抜け出し感染拡大

 韓国内の感染が急速に拡大し始めたのは19日、韓国の南東部にある大邱(テグ)地域で国内31番目の感染者Aさんが確認されて以降だ。

 Aさん交通事故で大邱市内のある病院に入院した後、新型コロナウイルスによる肺炎を疑われる症状があったにもかかわらず、医師が勧める検査を拒否していた。

 そればかりかAさんは、入院中の病院をこっそり抜け出し、大邱市内で食事会や宗教団体の集会に出席するなど、数カ所を歩き回っていたのだ。

 Aさんの動線を把握した大邱市がAさんが出席した宗教団体の集会の参加者たちを対象に検査を実施したところ、19日当日だけでおよそ14人の感染者が確認されるなど、Aさんが訪れた場所を中心に大邱市内のいたるところで新型コロナ感染者が続出する事態となった。結局、現在、計204人の感染者のうち153人が大邱とその隣接地域の慶尚北道で確認されるなど、大邱は韓国内で最も危険な地域になってしまった。

新興宗教団体に批判殺到

 大邱地域で新型コロナ感染が多発する原因となった宗教の集会とは、「新天地イエス教会」の大邱教会で行われた礼拝だった。新天地イエス教会(新天地イエス教証しの幕屋聖殿)とは、韓国のキリスト教団体から「異端」の判定を受けた新興宗教団体で、信徒たちは通常、自分が新天地教会の信徒であることを隠している。このため、防疫当局は新天地イエス教会の礼拝に参加した信徒を把握するのに大変な困難を強いられている。

 さらに恐ろしいのは、新天地の信徒らは全国の教会を巡りながら礼拝を行っているため、大邱教会を訪れた全国の信徒の間で感染者が続出していることだ。最初の死亡者が発生した慶尚北道・清道(キョンプッド・チョンド)地域の某病院では、新天地幹部の葬式が行われたことが確認されたため、現在、韓国社会では新天地教会に対する敵愾心と猛烈な非難が巻き起こっている。

 21日、ソウル市と京畿道はソウルと京畿道内のすべての新天地教会を閉鎖すると公表しており、文在寅ムン・ジェイン大統領も、新天地大邱教会や信徒について徹底的な調査を行うことを特別指示した。

 遅ればせながら韓国政府は新天地教会と信徒たちに対する疫学調査と防疫活動を強化し始めたが、韓国世論は文在寅政権の対応についても激しい非難を投げつけ始めている。特にインターネットで批判されているのが、死亡者が発生し、感染者が急増していた20日の、文大統領の「ある日程」についてだ。

感染拡大のさなかに文大統領は『パラサイト』の監督らとチャパグリ・パーティー

 20日の午前、文大統領夫妻は、アカデミーで4冠王を獲得した話題の映画『パラサイト 半地下の家族』のポン・ジュノ監督と映画関係者らを大統領府に招待し、映画に登場したチャパグリをメニューに、午餐を開いた。

 この事実を伝えた連合ニュースの記事に対して、ネイバーサイトでは、「腹が立つ」との評価が2万件以上ついた。共感順で並んだコメントには、文大統領を非難する書き込みばかりだった。

「全国が新型コロナウイルスで大騒ぎになっている時、大統領はきれいに防疫された大統領府でチャパグリパーティーを楽しんでいるのか」

「初の死亡者が発生し、感染者100人を突破し、ドル為替が1200ウォンを突破した。韓国はいつの間にか新型コロナの中心地になりつつあるのに、(大統領は)チャパグリが喉を通るのか」

マスクの値段が高すぎて着用できない人も多いのに、国民を考えなければならない人が嬉しそうにチャパグリを食べている写真を見ると、腹が立つ」

4月の総選挙で下る文大統領への評価

 2月13日には、文大統領は「新型コロナは遠からず終息する」と断言し、韓国国民に向かって正常な日常に戻らなければならないと呼びかけていた。文政権の経済副総理である洪楠基(ホン・ナムキ)企画財政部長官も、過度な恐怖心と不安が消費者心理を萎縮させているとし、「(自営業者を助ける気持ちで)行事や集まり、昼休みには最大限外部の食堂を利用してほしい」と促した。

 さらに19日には、出入国管理の主務部処長官の秋美愛(チュ・ミエ)法務長官が、米国が政治的な理由で中国人たちの入国を遮断したとし、「我が国(韓国)は静かながらもとても合理的かつ客観的な方法で実効的な遮断をした。科学的に対処している」と自画自賛した。与党の共に民主党は、中国人入国を制限すべきだという医師協会の主張に対し、「政治的な判断」と非難していた。共に民主党からは「わが政府の対応が世界的な模範ケースとして認められている」という出張も出た。

 韓国メディアも、日本や米国などの海外マスコミが韓国の新型コロナ対応態勢を絶賛しているとし、文在寅政権を大いに称えていた。しかし、この文在寅政権と韓国メディアの楽観論がむしろ仇となって表れた。19日から、韓国では新型コロナが取り返しのつかない拡大局面に転じ、今や国別の感染者数は日本を追い抜き、中国の次に多い国家になってしまった。

 それでも、21日に発表された韓国ギャラップ世論調査で、文在寅大統領の支持率は45%まで上がっていた。これについて韓国ギャラップは、新型コロナによく対処しているという国民の評価が支持率上昇の最大の理由だったと説明している。世論調査とは果たしてどれほど信頼できるものだろうか。その答えは、4月に控えている総選挙明らかになる。

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韓国・大邱では新型コロナウイルスの感染が相次いでいる。写真は2月19日、大邱の慶北大学病院に搬送された新型コロナウイルス感染が疑われる患者(写真:YONHAP NEWS/アフロ)