上から目線の「甘えるな」はもううんざりだ

中国新聞の記事が、ネット上で話題を集めている。「この働き方、大丈夫? 第1部 われら非正規ワーカー」という連載で、非正規社員として働く就職氷河期世代に焦点を当てた内容だ。

記事では当事者に寄り添い、彼らが抱える不安や葛藤を紹介。だが、就職氷河期世代よりも年上の世代からは同社宛てに「甘えている」といった意見が届いたという。(文・ふじいりょう

「甘えるな」はイヤというほど聞かされている


ヤフーニュースに配信された記事のコメントには「団塊やバブル世代には言われたくない」「人生ガチャハズレカードを引いた時点で終わり」といった反論の声が多く寄せられている。

中でも大きな反感を買ったのは、山口県内の50代女性による「自分と比べて甘えている」「自虐的になっても何も変わりません。世間がどんなに変われば幸せになれると考えているのですか」という意見。この「甘えるな」という言葉は、今まで散々言われてきた"自己責任論"を思い起こさせ、就職氷河期世代にとっては「呪いの言葉」とも取れる。

1976年生まれで氷河期世代のど真ん中の筆者も、就活に失敗して飲食店のバイトを続けざるを得なかった。正社員になれなかったことを口にするだけで、親をはじめとする身内から「甘えているんじゃないのか」と何度も言われた。

同じことは、リーマンショックの余波で当時勤めていた会社を解雇され、転職先がなかなか見つからなかった時にもぶつけられたし、うつ病で苦しんでいた時期にも「このままでいいと思っているのか」と言う知人がいた。「甘えるな」という趣旨の言葉は、もう既に何度も聞かされているのだ。

同記事では、広島市の62歳パート男性の「かわいそうだから雇ってくれと言っているみたいだ。会社は働いてくれる人材を見極めて判断する」「地道な努力の積み重ねをしないと。困っているのなら、もっと切迫感を持つべきだろう」という声も紹介している。

氷河期世代には、100社以上履歴書を出したにもかかわらず、"お祈りメール"一つで断られるといった経験をしている人は、筆者を含めて珍しくない。また、せっかく面接に呼ばれても、5分程度で切り上げられた末に落とされることもザラだった。

さまざまな資格取得や、ライフハック本などを読んで"自分磨き"に血眼になった人も多いだろう。もうやれるだけやって、それでもダメだという人に対して「努力が足りない」と言うのはあまりにも残酷だ。だいたい、誰だって100社も落ちれば切迫感は持つだろう。

まったく響かない「諦めないで」という励まし

当事者の氷河期同世代と同じ44歳パート女性の「諦めないで」も、一見ポジティブに聞こえるが、仕事が見つからなかったり、働き先での待遇がよくならなかったり……といった悩みを抱えている人には、無責任で厳しい言葉に聞こえるのではないだろうか。

この女性はハローワークや職業訓練の活用した経験から「専門家の力も借りて一歩を踏み出してほしい」と語っているが、それらを活用して仕事を見つけたものの、アルバイト派遣社員で正社員になれずに不安を抱えている同世代も多い。

また、職業訓練でPCの知識を身に付けたというが、既にその程度のスキル氷河期世代以降なら大多数の人が持っているだろう。「そんなことが求職で決め手になるわけがない」と感じた人は多いのではないだろうか。

このように、個々の経験からアドバイスをしても、それが必ずしも他人に当てはまらないのもまた難しいところ。

とりわけ、団塊の世代バブル世代は、氷河期世代の求職の過酷さに理解が至らないケースが多い。実際、大卒の就職率が60%を割ったのは氷河期世代だけで、事実として就職活動が厳しかったことは数字が証明している。

それだけに、氷河期世代の中には、上の世代が「楽に職にあり付けてノウノウと生活している」と感じている人が多い。もちろん、上の世代にもそれなりの苦労があったのだろうが、その経験を元にいくら上から目線で説教されても「もうたくさんだ」というのが、就職氷河期世代共通の本音だろう。