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point
  • 過去20年間の科学的な発見は、犬が人間にとって特別な動物であることの証拠となっている
  • 犬は、遺伝的に人間との間に愛を培うようになっている

「動物は愛を感じる」という考えは、かつては動物を研究した心理学者たちにとって「科学的」というよりも「感情的」なものだとみなされてきました。

しかし、最近の数多の研究によって、犬に「愛」があるとする考えには、科学的な事実に裏付けられていることがわかりました。

アリゾナ州大学の犬科学研究所の創設者であるクライヴ・ウィン氏は、著書「Dog Is Love: Why and How Your Dog Loves You」の中で、「犬の人間への愛情」に関して科学的な見解を主張しています。

犬と人間の特別な関係は犬の?

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動物心理学者たちは2000年代初頭に犬の研究を開始しました。当時、彼らは「犬に複雑な感情がある」「知性が高い」とみなすことを、一方的な「擬人化」であると考えていました。

しかし、調査が積み重なるにつれて、彼らも数々の科学的根拠を無視できなくなりました。犬の科学は過去20年で進展し、その多くは犬の知性を称賛しました。

実際に、犬が高い知性を有しているという研究は多く報告されています。

ただし、最近のそのような「犬の知性」ブームの中で、ウィン氏は極めて冷静な見方を保っています。

彼は「犬の知性はそこまで圧倒的なものではない」と主張しているのです。

例えば、ハトは画像によって様々な種類のオブジェクトを認識できます。イルカは文法を理解するし、ミツバチはダンスによって互いの食物源の場所を合図します。これらは、犬にはできないことです。

ですから、ウィン氏は、犬と人間の関係を特別にしているものが「知性」ではなく、犬の「超社会性」もしくは「極端な集団性」であると推測しています。

犬の愛は遺伝子に刻まれている

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犬の科学において重要な進歩の1つは、オキシトシンに関する研究です。

オキシトシンは人同士の感情的な絆を強固にするもので、身体の痛みを和らげたり、心を癒したりする脳内化学物質です。

日本の麻布大学の菊水健史氏らの研究によると、人間と犬がお互いの目を凝視するときに、人間のオキシトシンが3倍に増加することが判明しました。加えて、犬の側のオキシトシン分泌も認められています。

また、遺伝学的にも犬の特別性は際立っています。

遺伝学者であるブリジット・フォンホルト氏は、2009年に、犬がウィリアムズ症候群の人々がもつ遺伝子変異と類似したものを持っていることを発見したのです。

ウィリアムズ症候群にかかった人は、他人に対して異様なほど親愛で馴れ馴れしい態度をとることが知られています。

犬の遺伝子にもウィリアムズ症候群と同じ遺伝子変異が確認されており、犬は生まれながらに親愛の情を表わせるようになったと考えられるのです。

この変異の時期が分かれば、14,000年前に犬が家畜化したプロセスを解明できるかもしれません。

加えて、スウェーデンと英国の2019年の研究によると、人間側の遺伝子も犬を飼うことに影響を与えると示唆されています。犬と人間は遺伝的に特別な関係なのかもしれません。

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科学の進展は、犬が愛を感じ、愛を必要とする動物であることを明らかにしています。これらは、飼い主の犬に対する接し方に大きな影響を与えるものです。

犬が人間に望んでいることは、彼らに道を示し、そして社会的欲求を満たすこと。

つまり私たちは犬に、「思いやりのあるリーダシップ」と「積極的な援助」を与える必要があるのです。

犬とは真逆。飼い犬から野生に戻ったディンゴは遺伝子までオオカミ化していた

reference: phys / written by ナゾロジー編集部
なぜ犬は人間にとって特別なのか