弁護士・柳原桑子先生が堅実女子の悩みに答える連載です。今回の相談者は飯塚沙織さん(仮名・34歳・公務員)です。

「見合いで知り合った彼(年収1000万円・商社勤務)と結婚することになりました。新居に引っ越してきて、始めて気が付いたのですが、彼には蛇を飼育する趣味があったのです。私に内緒にしていました。

その数20匹で、彼の書斎用の部屋には、蛇のケージがズラリ。

しかもエサが冷凍ねずみ……それを、食品用の冷凍庫に入れるんです。

解凍してからあげるのですが、食器用として使っている小皿に入れてきます。

私は蛇もネズミも大嫌い。彼はいずれ慣れると言いますが、私は絶対に慣れないし、彼のことも気持ち悪くなり、嫌い……というより、生理的に受け付けなくなりました。

結婚式ギリギリまで同居を渋っていたのも、入籍を急いでいたのもこれが理由だったのかと思いました。

彼は蛇の飼育をやめるつもりはなく、私も蛇と同じ空間に住みたくない。

話し合いの余地はなく、絶対に彼との結婚はやめたいのです。これから結婚式なので、具体的に式場を決めて、600万円の半金を支払っています。私にダメージがないように別れることはできるのでしょうか。また、こういう離婚のケースはあるのでしょうか(まだ入籍はしていません)」

弁護士・柳原桑子先生の回答は……!?

まだ入籍をしていないということなので、「離婚」にはなりません。

ただ、引っ越しをして同居を開始したり、結婚式場の予約をするなどしているので、彼とあなたの間に結婚の約束……すなわち婚約が成立しているという前提でお話をします。

この場合、婚約をしたときには知らなかった事実である、婚約者が20匹の蛇を自宅で飼育し、今後も飼育を続ける意思であるということを知り、あなたは結婚をせず別れたくなったということ。あなたに責任が生じずに「婚約を解消」することができるか、を検討することになります。

まず、結婚しないという意思が固まっているならば、早めに事情を説明して婚約を解消したい旨を婚約者に伝えるべきだと思います。結婚式場のキャンセルは、早いほうがペナルティーもより少なく済むと思うからです。

それでも全額は返還されなかった場合、その費用負担をすべて婚約者の彼に背負ってもらうことができるかどうかということ。そして、あなたが婚約を解消する意思表示をしたとき,彼は約束違反だとして慰謝料を請求できるかということ。さらには、あなたの引っ越し費用を彼に負担してもらうことができるのかという3つの点から、あなたに負担がかからないのかどうかを考えてみます。

婚約も「約束」ですから、正当な理由なくして一方的に解消することはできません。趣味という点でいえば、その趣味を持つ人にとって大切なものであり、婚姻生活を送るにあたって,節度を守り、極端にならないようであれば問題にはなりません。しかしそれが特異なものだったり、日常生活への影響が極端に生じるような場合、そして、それを婚約するまで秘密にしていたということであれば、愛情や信頼関係を喪失し、婚約を解消するのに正当な理由になりうるものと思います。

趣味の内容によっては、両者間の話し合いで、ルールを決めるなどして歩みよりを検討することができるならば、ただちに婚約解消という結論を導くべきではないといえます。

しかし本件では、生き物のことを考えても、彼が飼育を止めるというのは難しく、共存していくのは、あなたが到底無理であるということです。両者の間において話し合いで容易に解決できない大きな問題であり、婚約者の彼としても、誰もが受け入れ得る飼育ではないということをわかっていたからこそ、あなたに言わないできたと思われます。この点にも大きな問題があると思います。

重要な事実を秘密にしたことで、このような問題がおこったのは、婚約者の彼に責任があると考えられます。

そのため、少なくとも彼からあなたが慰謝料請求をされるいわれはないと考えます。

また、式場の費用負担や引っ越し費用は、蛇の飼育という重要な事実を知らされていたら婚約しなかったということで、彼に負担を請求することもできると考えられます。

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賢人のまとめ

重要な事実を秘密にしたことで、このような問題がおこったのは、婚約者の彼に責任があると考えられます。

プロフィール

法律の賢人 柳原桑子

第二東京弁護士会所属 柳原法律事務所代表。弁護士

東京都生まれ、明治大学法学部卒業。「思い切って相談してよかった」とトラブルに悩む人の多くから信頼を得ている。離婚問題、相続問題などを手がける。『スッキリ解決 後悔しない 離婚手続がよくわかる本』(池田書店)など著書多数。

柳原法律事務所http://www.yanagihara-law.com/

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