天皇陛下

天皇陛下は、23日、60歳の誕生日を迎えられた。しらべぇ編集部は加盟する一般社団法人日本インターネット報道協会より、21日に行われた天皇陛下記者会見の動画提供を受けた。

令和初の天皇誕生日にあたり、動画とともにその全文を掲載する。

■即位の感想について

「私は、昨年の5月1日に皇位を継承いたしました。平成の時代には皇太子として、上皇陛下のお近くでさまざまなことを学ばせていただき、準備をして参りましたが、剣璽等承継の儀、即位後朝見の儀に際しては、これから先、我が身が担う重責に思いをいたし、身の引き締まる思いがし、厳粛な気持ちになりました。

それから約10ヶ月、ひとつひとつの公務に真摯に向き合い、心を込めて、大切に務めを果たすべく努めて参りました。

天皇のひとつひとつの公務の重みと、それらを行うことの大切さを感じております。この間、つねに私の傍らに寄り添い、相談に乗り、公務にともに取り組みながら支えてくれている皇后・雅子に感謝しております。

振り返りますと、上皇・上皇后両陛下が30年以上の長きにわたり、国民に寄り添い、国民と苦楽をともにされながら、公務に取り組んでこられたお姿に、尊敬の念を新たにいたします。

そして、天皇・皇后としての私たちの新たな門出を温かい目でお見守りくださったことに厚く感謝を申し上げます」

関連記事:佐波優子「チャンネル桜」キャスターが語る 家族のように国民に寄り添われた天皇皇后両陛下

■即位してからの振り返り

「この10ヶ月の間にもっとも印象に残っていることのひとつに、都内や地方での諸行事や諸儀式の際などに多くの方々から温かい祝福の声を寄せていただいたことが挙げられます。

また、即位礼正殿の儀に参列され、饗宴の儀にもご出席いただいた各国を代表する方々から、心のこもったお祝いをいただきました。海外の王室の方々とも旧交を温めることができたことを嬉しく思っております。

そうしたお一人お一人の声に支えられて、今日を迎えることができていると感じております。この場を借りて、あらためて感謝いたします。

日本国および日本国民統合の象徴としての私の道は、始まってまだ間もないですが、たくさんの方々からいただいた祝福の気持ちを糧に、上皇陛下のこれまでの歩みに深く思いをいたし、また歴代の天皇のなさりようを心にとどめ、研鑽を積み、国民を思い、国民に寄り添いながら、象徴としての責務を果たすべくなお一層努めてまいりたいと思っております」

関連記事:平成の御代を振り返る 玉城デニー知事に聞く「陛下は沖縄に寄り添われた」

■即位関連儀式のあり方について

「儀式のあり方についての質問ですが、平成への御代がわりにおける一連の即位儀式の際、現行憲法下における初めての即位ということもあり、儀式のあり方について慎重に検討がなされたと承知しております。

今回の一連の諸儀式においては、平成時を踏襲した上で、必要に応じて変更や工夫を取り入れたものと認識しております」

関連記事:平成の御代を振り返る 国民民主党・玉木代表に聞く「陛下は忠恕の精神で象徴天皇に徹した」

■どのように天皇の役割を果たしていくか

「ご指摘のように、近年はとくに変化の激しい時代です。例として挙げられたAIが、数年前には今のように話題になっていなかったことや、今では当たり前に使われ、我々の生活を大きく変えているスマートフォンの普及。

その一方で、各地で大きな被害をもたらす気候変動による自然災害の脅威がさらに深刻になっていることなど、平成の初期と比べても人々の生活環境は異なってきていると思います。

このような変化の激しい時代にあって、社会の変化や時代の移り変わりに応じた形で、それに対応した務めを考え、行動していくことは大切なことであり、その時代の皇室の役割でもあると考えております。

そのためにも、多くの人々とふれあい、直接話を聞く機会を大切にしていきたいと考えています。同時に、先に述べましたとおり、つねに国民を思い、国民に寄り添い、象徴としてあるべき姿を模索しながら務めを果たし、今後の活動の方向性についても考えていきたいと思っております。

憲法についての質問ですが、日本国憲法は、日本国および日本国民統合の象徴として天皇について定めています。憲法を遵守し、象徴としての務めを誠実に果たしていきたいと考えております」

関連記事:令和初の一般参賀、皇居は11万人以上の賑わい 宮内庁に聞いてみた

■皇后陛下について

「雅子は、種々の工夫をこらしつつ、一生懸命に努力を積み重ね、幸いにして令和元年は即位にかかわるすべての儀式・行事に出席することができました。このことを私も雅子もとても嬉しく思っております。

本人も強い責任感をもってひとつひとつの行事に臨んでおりましたが、それに加えて、先ほども述べましたとおり、即位以来多くの方々から温かいお祝いをいただいたことが活動の大きな支えになっていると思われます。

雅子自身も多くの方々から寄せていただいた温かいお気持ちを嬉しく、またありがたく思っていると申しておりました。

他方、雅子はまだ回復途上にあり、昨年12月の誕生日の際に医師団が見解として述べているとおり、体調には波があり、大きい行事の後や行事が続いた場合には、疲れがしばらく残る傾向があります。

近くで見ていると、とてもよく頑張っていると思いますが、決して無理をすることなく、これからもできることをひとつひとつ着実に積み重ねていってほしいと思います。

また、即位以来忙しい日々を送る中でも、私や愛子にもいろいろと細かく心を配り、活動を支えてくれており、公私に渡り良き相談相手となってくれています。私も今後ともできる限り雅子の力になり、支えていきたいと思っております。

国民の皆さまには、これまで雅子に温かく心を寄せていただいていることに、あらためて心より感謝の気持ちを述べるとともに、引き続き雅子の回復を温かく見守っていただければありがたく思います」

■愛子さまについて

「愛子は、この3月に学習院女子高等科を卒業いたします。学習院女子高等科においては、充実した高校生活を送ることができたようで、それも一重に先生方や多くのお友達のおかげであると感謝しております。

今後の進学先については、今日、学校側から愛子が希望していた学習院大学日本語日本文学科への合格通知をいただきました。

進路については、本人から私たちにも相談がありましたが、本人の意向を尊重しながら、できる範囲での助言をしてきたつもりです。希望の進学先に進めることを愛子はもとより、私も雅子もとても喜んでおります。

高校を卒業し、大学へ進学すると、今まで以上にさまざまな経験を積み重ねながら、視野を拡げていく時期になると思います。これからも感謝と思いやりの気持ちを大切にしながら、いろいろな方からたくさんのことを学び、自身での思索を深めていってほしいと思っています。

それとともに充実した学生生活を送ってほしいと思っています。その中で自分のやりたいことを見つけ、成年皇族としての公務とのバランスを見出しながら、将来への希望を描いていってもらえればと思っております」

■上皇さま・上皇后さまについて

「上皇・上皇后両陛下には、長年にわたりつねに国民の幸せを願われ、国民に寄り添い、苦楽をともにされながら、全身全霊で務めを果たしてこられました。

上皇・上皇后両陛下のこれまでの歩みに思いをいたすたびに、深い感謝と敬意の念を覚えております。そして、ご退位にあたり、私たちに対し、種々お心遣いをいただいてきたことをありがたく思っております。

同時に、これから高輪へのご移居のご準備や、ご移居にともなう新しい環境への順応などのご負担を案じております。

ご退位後、上皇陛下には生物学研究所へのお出まし、上皇后陛下には音楽鑑賞や美術鑑賞などへのお出ましなど、これまで充分に時間がお取りになれなかったご活動にもお時間をお割きになれるようになればと思っています。

末永くお健やかにお過ごしいただけますよう、心よりお祈り申し上げます」

■皇位継承のあり方について

「現在、男性皇族の数が減り、高齢化が進んでいること、女性皇族は結婚により皇籍を離脱することといった事情により、公的活動を担うことができる皇族は以前に比べ減少してきております。そして、そのことは皇室の将来とも関係する問題です。

ただ、制度にかかわる事項については、私から言及することは控えたいと思います。秋篠宮とは、折にふれいろいろな話をいたしますが、内容について言及することは控えたいと思います」

■60年の人生を振り返って

「即位の年齢については、歴代天皇の中では、より高齢で即位された天皇もおられますが、還暦を迎えるのにあたっては、『もう還暦』ではなく『まだ還暦』という思いでおります。

これまでの60年を振り返ってみますと、幼少時の記憶として、昭和39年東京オリンピック昭和45年の大阪万国博覧会があります。

私にとって東京オリンピックは、初めての世界との出会いであり、大阪万博は世界との初めての触れ合いの場であったと感じております。

東京オリンピックでは、私は当時皇太子であった上皇・上皇后両陛下とご一緒にマラソン競技と馬術競技、そして閉会式に出席しました。

断片的な記憶ではありますが、マラソン競技で一生懸命に走っていた円谷選手が、競技場内で英国のヒートリー選手に追い抜かれ、銅メダルを獲得したこと。

そして閉会式において、各国選手団が国ごとではなく混ざり合って仲良く行進する姿を目の当たりにすることができたことは、変わらず持ち続けている世界の平和を切に願う気持ちのもととなっているのかもしれないと思っております。

大阪万博では、日本のパビリオンはもとより、外国のパビリオンも多数回り、世界にはこんなにも多くの国があり、ひとつひとつの国がさまざまな特色を持っているんだということを目の当たりにしました。

成年に達してからの大切な記憶として、まず思い起こすことはオックスフォード大学への留学です。

一人の留学生として、日本にいるときより自由に行動でき、その中でさまざまな人との交流を重ね、イギリス社会を内側から見つめるとともに、外からより客観的に日本を見る視点を養うことができたこと。

そして、研究生活を通じ、水問題への関心のひとつの端緒となった研究論文に取り組むことができたことなど、現在の公務に取り組む姿勢にも大きな影響を与えている数々の貴重な経験をさせていただきました

このような機会を与えてくださった上皇・上皇后両陛下にあらためて感謝申し上げたいと思います」

■ご成婚や災害の記憶も

「平成になり、皇太子となって平成5年に結婚し、雅子と2人で支え合いながらいろいろなことを経験することができたこと、そして愛子も生まれたことは本当に嬉しいことでした。親として愛子の成長を見守ってくることができたことも喜びでした。

その一方で、平成7年阪神淡路大震災平成23年東日本大震災をはじめとする数々の災害による被害の大きさが、忘れることのできない記憶として脳裏に焼き付いております。

同時に、大勢の被災者の方々が大きな被害を受けながらも助け合いながら、また海外も含め周囲の多くの人々による支援に支えられながら、多くの苦難を乗り越えてこられた姿が深く心に残っています。

自然災害が起きることが避けられないとすれば、その被害が小さくなるよう、できる限り日頃から防災・減災の意識をもって取り組みを心がけることが重要なことではないかと思います。

昨年も残念ながら台風19号をはじめとする台風・大雨などの自然災害により、多くの方が亡くなられ、また家屋の損傷なども含め、大きな被害が生じたことは心の痛むことでした。

昨年12月には、とくに人的被害の大きかった宮城県福島県を雅子とともに訪問しましたが、寒さが厳しい中、不自由な避難生活を送らなければならない方々のことを思うと、今なお胸が痛みますし、避難生活をされる方々を支えたり、災害復旧にあたったりしている関係者の皆さんも大変な苦労をされていると思います。

■直近の国内外問題にも言及

「現在、新型コロナウイルスの感染拡大が懸念されていますが、罹患した方々とご家族にお見舞いを申し上げます。それとともに、罹患した方々の治療や感染の拡大防止に尽力されている方々のご労苦に深く思いをいたします。感染の拡大ができるだけ早期におさまることを願っております。

近年の子供たちをめぐる虐待の問題の増加や貧困の問題にも心が痛みます。次世代を担う子供たちが健やかに育っていくことを願ってやみません。

また海外に目を向けますと、紛争が続いている国や地域が依然としてあり、多くの人々が苦しい生活を余儀なくされ、あるいは難民として国外に逃れざるを得ない状況にも胸が痛みます。

その意味でも、アフガニスタンの人々のために、長年にわたり地域の発展に多大な貢献をされていた、医師の中村哲さんが亡くなられたことは、大変に残念なことでした」

■この一年で嬉しかった出来事

「嬉しい出来事としては、昨年、日本で初めて開催されたラグビーW杯において、日本代表チームが次々と世界の強豪に勝って初のベスト8に進出したことや、そのとき使われた『ONE TEAM』という言葉の概念が、多くの人々の共感を得て、社会に浸透したこと。

また学術の分野ではリチウムイオン電池の産みの親である吉野彰さんがノーベル化学賞を受賞されたことなどは、印象に残る嬉しいニュースでした」

■東京五輪への期待

「今年開催される東京2020オリンピックパラリンピック競技大会に期待することですが、まず第一に、この世界的なスポーツの祭典が、関係する方々の尽力により、つつがなく成功裏に終えられることを願っています。

その上で、この大会が日本人選手を含むすべての参加者にとり、思い出に残る素晴らしいものとなることを期待いたします。そして、今回のオリンピックパラリンピック大会を通して、とくに若い人たちに世界の人々への理解を深め、平和の尊さを感じてほしいと願っています。

大会の開催期間中やその前後に海外からの選手や観光客が大勢来日するのを契機に、日本の人々、とりわけ若い人たちが彼らとの交流を通じ、世界の多様性に対する理解を深め、国際的な視野を広げる機会となることを願うとともに、逆に海外の方にとっても日本のことを知るよい機会となれば幸いです。

また、パラリンピック競技大会を通じ、障害者スポーツへの理解がさらに進み、障害をもつ方々にとっても励みになるとともに、障害をもつ方々をめぐる社会の今後のあり方の可能性についても社会全体でさらに目を向け、理解と協力の輪を広げるよい機会になることを期待しております」

■今後の活動と気候変動について

「昨年は、台風19号をはじめとする台風・大雨による災害が数多く発生しました。日本だけではなく、世界中で頻発している水災害は、その遠因に気候変動があると分析されており、今後被害が激化していくことが懸念されます。

日本は、台風や豪雨、津波といった自然災害の影響を受けやすい国土であることから、これからの務めの中で、国民生活の安定と発展を願い、また防災・減災の重要性を考えていく上で、水問題への取り組みで得られる知見も大切に活かしていきたいと思います」

■水問題の取り組み続けたい

「国外に目を向けても、昨年来のオーストラリアにおける大規模な森林火災など、気候変動や水問題に関連した災害が頻発しています。

水に関する取り組みは、安全な飲料水の供給・確保や衛生などの生活環境の問題のほか、干ばつ、砂漠化、水質汚染など多岐にわたる地球規模の環境問題にも深く関わってきます。

つい先日、南極の気温が18℃を超えたというニュースを耳にしましたが、地球温暖化の関係では、南極やグリーンランドの氷床が溶けたり、海水が膨張することなどによる海面上昇は海抜が低いところに住む人々に深刻な影響を与えています。

また、山岳地帯に住む人々にとって、氷河湖の決壊が洪水を誘発し、下流地域の村を押し流すなどの問題を引き起こすこともあります。このような気候や水に関わるさまざまな状況を心配しております。

水問題については、水を切り口に豊かさと貧困、防災など、国民生活の安定と発展とともに世界のさまざまな課題についても考えを巡らせることができると思います。

即位以来慌ただしく日が過ぎましたが、事情の許す範囲で少しずつ水問題についての取り組みも今後とも続けていくことができればと思っております」

・合わせて読みたい→トラウデン直美の厳しすぎる「実家ルール」に衝撃 「コナンとタモリはOK」

(文/しらべぇ編集部・タカハシマコト

令和初の天皇誕生日 「天皇陛下記者会見」動画とご発言全文書き起こし