観客の五感を総動員して、ダイナミックに人間を描く。外波山文明のもと、これぞアングラ芝居!と言うべき舞台作りで、時代を超えて観客を魅了する劇団・椿組の春公演『肩に隠るる小さき君は』が、2月26日(水)から3月3日(火)まで東京・下北沢のザ・スズナリで上演される。

舞台背景は、2.26事件当時の日本。昭和11年、事件の前夜である2月25日。軍靴の響きが近づく中、日本が世界から孤立の色を深めるその夜に、ひとりの子が生を受ける。その生命を守るために、必死に生きる家族があった……。

脚本を手がけるのは、文学座の女優でもある山谷典子。2011年に演劇ユニット・Ring-Bongを旗揚げし、加藤健一事務所公演やNHK-FMラジオドラマを書くなど、劇作家としても注目を集めている。演出は、R-viveを主宰する藤井ごうが担当。文学座の高瀬久男に師事し、小劇場から新劇、ミュージカルまでを幅広く手がける演出家だ。

夏には新宿の花園神社境内に据えられた野外テント公演で人気を博す椿組。そんな彼らが数々の伝説を残してきた下北沢の老舗小劇場に登場。劇場空間全体が、濃密な空気で満たされる。「観る」というより「体感する」観劇体験を味わいたい。

文:小川志津子

椿組2020年春公演『肩に隠るる小さき君は』