神戸市児童相談所こども家庭センター)が2月10日未明、助けを求めてきた小学6年生の女児を保護せず、警察に相談するよう伝えただけで追い返したことが問題視されている。

報道によると、女児は児相へ助けを求めにきたものの、対応した職員は保護する権限がなく、インターホン越しに「警察に行って」と告げ、名前や年齢などを聞き取らずに数秒で対応を打ち切ったという。

追い返された女児はその後近くの交番を訪れ、警察からの連絡で同児相が女児を保護した。

この児相の対応に、「子供を守る意識がない」などの批判が集まっており、神戸市側は組織体制の見直しに言及しているという。再発防止策はどうあるべきなのか。

「警察と密接に連携し、役割分担を行って対応するべき」

子どもの虐待ゼロを目指しているNPO法人シンクキッズ」の代表理事を務める後藤啓二弁護士は、今回の件について、「児相での夜間・休日対応は、わずかな当直職員か本件のような委託を受けたNPO職員のみで行っており、その対応には限界があります」と話す。

「児相だけで案件を抱え込まず、警察と密接に連携して、それぞれの機関の体制・能力に応じた役割分担を行い、対応するべきです。警察であれば、夜間に通報があれば現場に急行し子どもを保護することができます。

『職員への指導を強める』、『児相の職員を増やす』などでは、再発防止策になりません。1〜2人増やしても、夜間に通報を受け現場に行くことなどできません。増員するのであれば、児相にしかできない子ども・親への支援業務などに充てるべきです」

後藤弁護士によれば、すでに多くの現場では、児相と警察が協力し、夜間は警察が対応するような体制になっており、これをより徹底するべきだという。

児童虐待についての情報を全件共有し連携して活動するべき」

児童虐待あるいはその疑いのある案件への対応で、最も優先されるのは「子どもを守る」である。

後藤弁護士は、そういった案件の情報を、児相と警察で「全件共有し連携して活動」するべきだという。

「まず、児相という一つの機関だけで子どもを見守るよりも、多くの機関の目で見守った方が、子どもにとってより安全だということです。

児相がどこに虐待されている子どもがいるかを他機関に知らせないままでは、警察も市町村も学校も子どもを守りようがないのです。

たとえば、東京都の児相は今に至るまで警察にごく一部しか案件を知らせません。そうすると、児相が把握している虐待家庭に110番が入り警察官が現場に行った際に、児相から案件の情報を知らされないままといったことが起こり得ます。

実際、警察官が親にだまされ子どもを保護できず、その5日後に子どもが虐待死する事件(東京都葛飾区愛羅ちゃん虐待死事件)も起こっています。児相から虐待家庭と知らされていれば、警察官は親にだまされることなく子どもを保護できました。

児相が他機関に虐待案件を知らせない現状は、警察を含め他の機関が子どもを救える機会を奪っているのです。『子どもを守る』ためには、すべての虐待案件を共有しなければなりません。

現在、児相設置自治体の4割以上の自治体で全件共有が取り組まれていますが、東京都目黒区結愛ちゃん虐待死事件、千葉県野田市心愛さん虐待死事件を引き起こした東京都千葉県の児相は今でも警察にごく一部しか提供していません」

また、全件共有は、過重ともいわれる児相の業務負担の軽減にもつながるという。

埼玉県のように、児相と警察の間でシステムを整備し、児相と警察が常時全ての案件について情報共有できるようになれば、児相の夜間の当直業務はかなり軽減されるはずです」

子ども達を助ける機会を逸してはならない」

今回助けを求めたのは小学6年生の児童だったが、乳幼児の場合は自ら助けを求めることができない。「子どもを守る」体制は、虐待などによって命の危険にさらされている乳幼児をも助けることのできる形でなければならない。

「乳幼児はもちろんですが、ほとんどの子ども達は自分で助けを求めることはできません。

警察はパトロール活動や110番への対応、迷子・家出少年の保護等幅広く活動しており、そのような活動中に被害児童や虐待家庭に対応することがよくあります。

しかし、児相が把握している被害児童を隠したままでは、警察が、親にだまされるなどして虐待に気づくことができず、助けることができないのです。

『警察に知らせると親との信頼関係がなくなる』と主張する児相もあるようですが、親との信頼関係が子どもの命に優先するはずもありません。

結愛ちゃんは、親から面会拒否された東京都の児相が『親との信頼関係を優先』するとして、警察に通報もせず、虐待死させられました。

早くから警察と全件共有し連携した活動に取り組む高知県では、面会拒否されると直ちに警察に連絡し、一緒に家庭訪問し、子どもの安否を確認しています。東京都高知県のように警察と連携していれば結愛ちゃんは殺されることはありませんでした。

ごく一部の案件しか警察に知らせず、子ども達を助ける機会を逸してしまうようなことがあってはならないのです」

【取材協力弁護士
後藤 啓二(ごとう・けいじ)弁護士
1982年警察庁入庁、大阪府警生活安全部長や内閣参事官などを歴任し2005年に退官。在職中に司法試験に合格。NPO「シンクキッズ」代表理事。犯罪被害者支援、子ども虐待・児童ポルノ問題などに取り組む。著書に『子どもが守られる社会に』(2019年)など。
事務所名:後藤コンプライアンス法律事務所
事務所URLhttp://www.law-goto.com/

神戸児相、女児を追い返す 専門家「体制的に限界、警察と全件共有し連携した活動を」