「ああ、もう長くはないんだな」。首都圏の大学生ケンタさんは、田舎の祖母の家で、飼い犬(11歳)に久々に会って、そう感じた。明らかに元気がなくなっていたからだ。

思い切って祖母に聞いてみると、「長くはないだろうね。また山に埋めにいくよ」と話していた。

ここでケンタさんは疑問を抱いた。確かにこれまで、祖母は飼い犬が亡くなると、近くの山にいって、穴を掘って埋葬していたが、そんなことをしてもいいのだろうか。

祖母に聞くと、「人気のない場所だから誰にも迷惑はかからないし、大丈夫だよ」と話していたが、モヤモヤ感が残るという。法的な問題について、石井一旭弁護士に聞いた。

●法的には「ゴミ」と同じ位置付け

亡くなった犬は法的に「ゴミ」と同じ位置付けになるのか。

「動物は、法律上、『物』として扱われていることは広く知られるようになってきました。

ペットの遺骸についても同様で、『廃棄物の処理及び清掃に関する法律』(廃棄物処理法)2条柱書には、ゴミ・粗大ゴミ等と並んで『動物の死体』が『廃棄物』として挙げられています。

つまり、飼い主の心情的にはともかく、法的にはいわゆる『ゴミ』と同じ位置づけになります」

●廃棄物処理法に従った処理に

山のような公共の場所に埋めてもいいのか。

「犬の土葬自体を禁じる法律はありませんが、廃棄物処理法に従った処理がなされます。つまり、ゴミを埋めてもいいのか、という問題と同じことになります。

廃棄物処理法16条は、『何人も、みだりに廃棄物を捨ててはならない』と定めています。これによれば、ゴミをみだりに埋める行為はいわゆる不法投棄にあたり、同法25条15号により、5年以下の懲役又は1000万円以下の罰金(併科あり)と定められています。また、軽犯罪法1条27号も、公共の利益に反してみだりに鳥獣の死体等を棄てる行為を禁じています。

ですから、ケンタさんの祖母の行為は、法的には許されません。

なお、条文上は、投棄場所が自分の土地であるかどうかは問われていませんので、他人の土地や公園・山林・河川敷等の公共の場所だけではなく、自分の土地に埋めた場合でも、不法投棄と判断される可能性はあります。

その他、ペットを埋めたことによる悪臭や虫の発生などによって近隣に被害を与えてしまった場合には、損害賠償責任を負うおそれもあります」

注意すべきことはあるか。

「ペットの死体は、火葬されることが一般的です。多くの自治体でも動物の死体を引き取ってくれますが、中には一般ごみと一緒に焼却処分してしまうところもあるようですので、きちんと弔いたい場合は、動物の火葬・埋葬を取り扱う民間の葬儀業者に依頼するのがよいでしょう」

【取材協力弁護士】
石井 一旭(いしい・かずあき)弁護士
京都大学法学部、京都大学法科大学院卒業。司法書士有資格者。交通事故・相続・不動産問題等を多く手がける。ペット法学会・ペットの法と政策研究会に所属し、ペットを巡る法律問題についても多くの相談を受けている。
事務所名:あさひ法律事務所
事務所URL:https://asahilawfirm.com

「誰にも迷惑かからないよ」死んだ飼い犬を山に埋葬する老婆、法的に問題ない?