―[あの企業の意外なミライ]―


「どうも~!宮迫ですっ!」

 2019年闇営業問題からテレビ出演が遠ざかっていた雨上がり決死隊宮迫博之さん。今年1月29日に自身のYoutubeチャンネルを開設して以来、ホリエモンヒカルさんなど、人気ユーチューバーとのコラボ動画を連日アップし、チャンネル登録者数は59.4万人(2020年2月19日現在)と人気を集めています。

 今後も、芸能人やスポーツ選手など有名人が多数参入することが予想されるYouTube。果たして、2020年Youtubeユーチューバー市場はどうなるのでしょうか。YouTubeの未来は、親会社であるGoogleの未来を見ればわかります

親の顔が見てみたい」は企業分析にも当てはまるもの。Googleとは、いったいどんな会社なのか? HIKAKINら、人気ユーチューバーが所属するUUUMはどうなるのか? 2020年の動画市場を3分で解説します。

Googleの売上の9%がYoutube広告収入

 世界を代表する企業であるGoogle。その売上高の7割を占めるのが、YouTubeなど自社サイトで表示される広告収入です。2月3日の決算発表では、アルファベットGoogleホールディングスカンパニーのこと。以下、便宜的に「Google」と呼びます)の事業部門の売上高の開示が変更となり、2019年YouTube広告の売上が初めて公開ました。

 Googleの売上高は約17.7兆円(1618億ドル ※1ドル=110円換算)。気になるYouTube広告の売上は、約1.6兆円(151億ドル)でした。

 Google全体の売上高は、過去三年で下記のように順調に推移しています。

Google全体の売上高推移】
2017年1108億ドル
2018年1368億ドル(前期比+23%)
2019年…1618億ドル(前期比+18%)


 注目のYouTube広告収入の推移は以下の通り。こちらも増えてますよね。

YouTube広告収入の売上高推移】
2017年…81億ドル
2018年…111億ドル(前期比+37%)
2019年151億ドル(前期比+36%)


 つまり、YouTube広告収入の売上高は、Google全体の9%を占めることがわかりました。9%といっても、その額は1.6兆円。ケタ違いです…。

GAFAで一番“お金持ち”なのはどこか?

 実はYouTubeの売上は、先ほど示した額だけではありません。上のデータには、YouTubeの定額課金サービスである「YouTubeプレミアム」「YouTube Music」「YouTube TV」などの売上高が含まれていないのです。

 あの「5秒広告」をスキップしたい人が加入する「YouTubeプレミアム」の売上も、今では無視できない額に拡大しています。

YouTube Music」やプレミアムの加入者は2000万人超、「YouTube TV」の加入者も200万人を超えています。これらの定額課金サービスは、年換算で約3300億円(30億ドル)の売上規模を誇ります。

 もう少しGoogle財務諸表を読み解いてみましょう。GoogleB/S、つまり資産を見てみます。

 一般に、IT企業に対して製造業は、固定資産や生産設備によって固定資産が大きくなる傾向があります。一方、IT企業は固定資産が小さくなることが多いです。では、Googleはどうでしょうか?

 わかりやすくするために、GAFAGoogleAppleFacebookAmazon)で資産の部を比較してみます。

◆【GAFAの資産の部に占める流動資産割合ランキング

 GAFAの中でもっとも資産の部に占める流動資産(Current assets)が多いのは、Googleでした。Googleの流動資産約16.7兆円(1525億ドル)のうち、最も割合を占めるのは約11.1兆円(1011億ドル)の有価証券(Marketable securities)です。

 この「有価証券」とはなんのことでしょうか。これは、現金を活用するために公債などを購入したもので、ほとんど現金と同じような資産のこと。いつでも現金化できるからです。

 つまり、Googleは、GAFAの中でもキャッシュリッチ(=お金持ち)であることがわかりました。

YouTubeの「アダルト化」が進行すると何が起きる?

 そんなGoogleが抱えるYouTubeは、今後どうなるでしょうか。キーワードは「アダルト化」。これを理解するためには、日本最大のユーチューバー所属事務所であるUUUMの動向が参考になります。

 2019年YouTube子ども向け動画の基準厳格化を実行し、子どもターゲットにした広告の非表示を発表しています。それにもかかわらず、YouTubeの収益は増加していることは前述した通り。

 つまり、YouTubeは今や「子どもが見る動画サイト」ではまったくなくなったのです。その影響を受けたのがUUUMです。同社は、1月14日の決算発表以降、株価の下落が続いています。UUUMの稼ぎ頭は、YouTubeからの広告収入(アドセンス)。動画の再生回数が増えれば増えるほど、UUUMが儲かるビジネスモデルです。

HIKAKINも戦々恐々!?UUUMの“59%”のゆくえ

 2019年度5月期実績の同社のアドセンス売上は約117億円。これは、売上高197億円のうち59%を占めます。

 しかし、この“59%”、今後は大きく減少していくかもしれません。事実、これまで成長を続けてきたアドセンス収益は、直近の発表で減少しています。(20年5月期第1四半期)さらに、再生回数を見てみると、直近の再生回数も減少していることがわかります

19年5月期第1四半期…107億回
19年5月期第2四半期…95億回
19年5月期第3四半期…110億回
19年5月期第4四半期…112億回
20年5月期第1四半期…115億回←注目!
20年5月期第2四半期…109億回←注目!


 HIKAKIN、はじめしゃちょーなど子供向けの動画配信を得意とするユーチューバーを多く抱えているUUUM。同社は、YouTube本体が子供向け動画への広告を打てなくなったことで、売上に影響を受けているのです。

2020年は、ユーチューバーの独立が起きる年

 UUUMが影響を受けるのは、子ども向け動画広告の収益減だけではありません。近年、オリエンタルラジオの中田敦彦さんなど、テレビで活躍している芸能人がYouTubeに参入してきています。これ、何を意味しているでしょうか。

 一口で言えば、“YouTubeアダルト化”が急激に進行していくと私馬渕は捉えています。UUUMに所属しない、これまでテレビを舞台としていた芸能人のYouTube参入は、UUUM所属のユーチューバーの脅威であることは間違いありません。

 もう一つ、大きな変化を予測しましょう。

 先日、チャンネル登録者数542万人(2月15日時点)と、国内NO.5の木下ゆうかさんがUUUMを卒業し、個人で活動することが発表されました。今後、木下さんのように発信力のあるユーチューバーは、独立することでGoogleからのアドセンス100%自分の収益にする選択肢ももちろん出てくるでしょう。

 UUUMを取るのか?独立するのか?

 それを決めるのは、ユーチューバー個人がどれだけ仕事をもらって来られるかによって決まるでしょう。木下ゆうかさんは、「円満卒業」であると語っています。

 とはいえ、従来のようにタイアップ案件を取ってくることや、人気ユーチューバーバーター化することで新人ユーチューバーにも恩恵をもたらすだけでは付加価値が不十分になってくるのは間違いありません。

 いずれにしても「好きなことで生きていく。」のコピーで有名なユーチューバーも、Googleを親会社とするYouTubeによって成り立っている話。「個人の時代」と言えど、GoogleFacebookを代表とする巨大プラットフォームありきのビジネスモデルが少なくないことは間違いありません。

 実は、私たちは「好きなことで生きていく。」というよりも、Googleを最大の取引先とする「“下請け業者”として生きている。」という皮肉も言えるかもしれません。

<参考>
1 Alphabet 2019年第4四半期
2 Apple 2019年度第4四半期
3 Facebook 2019年第4四半期
4 Amazon 2019年第4四半期

【馬渕磨理子】
日本テクニカルアナリスト、(株)フィスコ企業リサーチレポーター。日本株の個別銘柄を各メディアで執筆。また、ベンチャー企業の(株)日本クラウドキャピタルでマーケティングを行う。Twitter@marikomabuchi

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