2月20日、とある喫茶店で経営学部卒の女性と慰安婦問題に対する女性の認識を話し合った。

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 その際、間口を広げて韓国はレーダー照射など反日をエスカレートさせる一方で親北を強めているが、北朝鮮は韓国無視みたいに静かにしている。これは危険な兆候で、東京オリンピック時などは要警戒だといったようなことも話した。

 まさにその翌21日、産経新聞が「北が韓国軍本部の擬似施設」「平壌北方 攻撃訓練用か」という見出しの衝撃的なスクープを放った。

 2016年のリオ・オリンピックの年には大統領府の模造庁舎で攻撃訓練を実施した北朝鮮は、2018年の平昌冬季オリンピック時には南北融和を演出しながら、裏では陸海空軍の参謀長が所在する軍本部の模造施設を完成させていたのだ。

 韓国の文在寅大統領には南北融和、続く南北統一が先にあり、これらの施設の存在を把握した後も公式に問題視していないという。

 こうした状況が示すところは、北は南侵準備を着々と怠りなく進めており、南は南北統一のための土俵を進んで提供しているということであり、異様という以外にない。

コロナウイルス騒動を好機と見る国

 南北の統一は「同一民族」という視点から、両国の立国に当たっての国是にも等しいものであろう。

 そうした中で、文在寅大統領の韓国が統一へのシグナルを盛んに発信しているにもかかわらず、金正恩朝鮮労働党委員長北朝鮮は差し伸べられる手をことごとく喧嘩腰で払いのけている感じであった。

 疑問を抱かせるこうした行動は、実は裏で盛んに工作していることを隠す陽動作戦とか隠蔽作戦などと呼ばれるものである。

 北朝鮮の動きが活発でないように対外的に思わせるのは、世界の目を北朝鮮からそらすため情報統制を厳しくしている結果であり、逆に言えば大事を成す前の入念な準備をしていたのだ。

 平和の祭典を利用して、いろいろな画策を行なうのが、全体主義共産主義国家のロシアや中国、北朝鮮などの特徴であったことに思えば、日本が舞台になるオリンピックパラリンピックは、そうした懸念をもたなければならない直近の最大イベントであろう。

 北朝鮮金正恩委員長の表向きの動静の裏で、南侵や(日本人などの)さらなる拉致、その他何らかの世界を動転させるような大きな陰謀をめぐらせているのかもしれない。

 しかし、日本の情報能力、中でもスパイなどを活用してのヒューミント能力はゼロに等しい。

 日本は言霊の国で、「縁起」を担ぐ国である。平和の祭典に悲惨な事象などを考えることを良しとしない。

 しかし、世界は冷酷そのもので、性善説よりも性悪説で動くことが多い。

 だからこそ、万一そうした事態が生起すればどう対応するか、日本の安全保障に備えることを忘れてはなるまい。

 今は中国・武漢発のコロナウイルスによる感染拡大騒動で世界はパンデミック状態であるが、こうした騒動は陰謀を画策する輩にとっては隠れ蓑となる好機でもある。

文在寅大統領の対北政策

 筆者が1970年代初めから80年代半ばまで陸上幕僚監部情報部(のちに調査部)で勤務していた頃の話題は、朝鮮半島の非武装地帯(DMZ)で北朝鮮が南侵用に掘削しているトンネルの話題ばかりであったと言っても過言ではない。

 新しいトンネルがどこそこで見つかった、何本目のトンネルだ。何人が同時に通れるのか、完成度はどのくらいかなど、担当部署(筆者の班ではない)はその情報収集・分析でピリピリしていたものである。

 ウィキペディアは「南侵トンネル」について、次のように紹介している。

1974年11月、最初の南侵トンネルが非武装地帯内で発見。翌年に2本目、1978年には3本目が発見されている」

1990年に発見された4本目のトンネルは、大断面のトンネルで、短時間で多数の兵士や車両が送り込める規模であった。万一トンネルが発見された時のために、石炭採掘を装う目的で壁には石炭が塗られていた」

2000年代に入ってからも、脱北者などからトンネルの掘削情報がもたらされており、軍事境界線付近を中心に頻繁なボーリング調査による探査が行われている」

「2014年12月5日韓国軍は『ボーリング探査の結果、南侵トンネルの兆候は全くない』と発表したが、南侵トンネルを発見したと主張する者は後を絶たない」

 以上は、今よりも対北警戒を厳重にしていた朴槿恵政権までのことである。

 その後、2017年5月以降は、従来のどの大統領よりも親北反日政策を取っている文在寅大統領となり、対北警戒よりも対北親北に傾斜してきたことは言うまでもない。

 その一つで、しかも最も必要とされてきたのが国家情報院で、国家の安全保障に関わる情報・保安及び犯罪捜査に関する事務を担当する大統領直属の機関であるが、どうやら骨抜きにされているようだ。

 文在寅政権が誕生後、詳しい日時は不明なものの、国家情報院において徐薫国情院長から「北朝鮮に対する一切の工作活動を禁止する」と命令されたという話がある。

 そうした結果でもあろうか、予算も縮小され、職員の自負心も低下していると言われ、対スパイ活動の委縮で、2017年に0人、2018年以降1人にすぎないスパイ逮捕実績だという。

対日敵対行動が過ぎる韓国

 その一方で反日は拡大しているが、反日は文在寅大統領に始まったのではない。

 歴代の大統領の下での世論調査でも、「第一の敵国」は日本であり北朝鮮ではなかった。それが文政権下ではより顕著になったということである。

 朝鮮近現代史研究所所長の松木國俊氏は、「韓国が敵国になる日が見えてきた」(『WiLL』2019年4月号所収)で四半世紀前と最近の2例を挙げて説明している。

 1995年当時の在韓米軍当局は、韓国が北朝鮮を第一の敵と考えるならば「北朝鮮への抑止、防衛の中心となる地上兵力の強化」が重視されるべきであろうが、実際は「海軍、空軍の強化に重点を置く傾向が続いてきた」と分析し、具体的な政策として韓国軍が「潜水艦偵察衛星駆逐艦などの調達に力を入れてい」たと述べている。

 近年の例は「週刊ポスト」(2018年3月2日号)が掲載した韓国の世論調査結果(AFP=時事配信)で、敵国第1位に北朝鮮を挙げた大学生は21.4%であったのに対し、日本は2.5倍以上の54.3%であったという。

 三八六世代(1960年代生まれで、80年代に主体思想を学び左翼学生運動に参加し、90年代に30歳代となった者、現在は50~60歳代。因みに大統領1953年生まれ)が政官界ばかりでなく、司法、教育、マスコミ、労組、そして韓国軍の中枢まで浸透しているとされる。

 従来、韓国は自由民主主義陣営の一国であった。

 しかし、室谷克実(評論家)・松木國俊対談(「文在『虎退治』もできない 韓国保守派は腰抜けか」、『WiLL』2019年8月号所収)によると、文政権は「民主労総(過激派労組の全国組織)の横暴を見て見ぬふり」で「あらゆる企業の国有化を目論んでいる」(松木氏)として、韓国の政治実態は「サンディリズム(労組主導型社会主義)」(室谷氏)だという。

 そして、政権が公文書や教科書から「自由」の用語を取り除き「自由民主主義」からただの「民主主義」にしており、「いつでもその上に『人民』をつけることができる」(室谷氏)という。「なし崩し的に社会主義革命が進んでいるように思います」(松木氏)と語る。

 慰安婦や徴用工問題など歴史の改竄、射撃用レーダー照射や旭日旗拒否などの敵対行動、さらにはオリンピック関連で日本嫌がらせの放射能食材や防護服のランナーなど、反日ばかりが横行し、日本を庇う言行をしようものなら、即「親日分子」として「清算」の対象になりかねない。

半島の独立は日本の国益であった

 朝鮮半島は日本に対して地理的に最も近い。従って、中国の影響を受ける半島と日本は古代から切っても切れない関係にあり、日本の安全にとって無視できない存在であった。

 日本と関係を持っていた百済が高句麗の攻撃(4世紀)を受け、また唐・新羅連合軍に攻撃(7世紀)されたとき、日本は百済の援軍依頼に応えて出兵した。

 しかし、その後は半島にほとんど無関心できた日本であるが、西欧の東漸や中露の半島への勢力伸張に対応せざるを得なくなってきた。

 日本は領土の外郭を主権線、半島を利益線と定め、日本の発展に半島は不可欠な地域として日清戦争日露戦争を戦った。

 世界は日本が勝つはずがないとみていたし、まさしく日本にとっては乾坤一擲、国家の存亡を懸けた大勝負であった。

 とにもかくにも日本が勝利し、日本は世界の5大国の一国となり、宗主権を得て半島国家の経営に関わる。

 しかし、朝鮮の独立を支援した関係からも日本は最小限の干渉に抑えたが、朝鮮はその最小限の約束さえ反古にする始末で、仕方なく1910年以降、日本が大東亜戦争で敗れるまでの36年間は併合が続いた。

 日本は国家予算を投入して台湾同様に農業振興、治山治水などのインフラ整備に注力する一方で、衛生環境を改善し教育の普及に努力した。

 最高学府としての帝国大学は東京、京都、東北、九州、北海道に続き、京城(朝鮮)、台北(台湾)と続き、大阪、名古屋よりも早く設立された。

 日本国内の教育体制が完了する前に、また先に植民地化されていた台湾に先駆けて京城帝国大学(現ソウル大学の前身)が設置された一事からも、朝鮮半島の安定が重視されたことが分かる。

おわりに:
日本は独自の防衛力構築が必要だ

 一党独裁の北朝鮮が存在する限り、自由民主主義を尊重する韓国の存続は日本にとっても必要不可欠で信頼構築にも努力してきたが、韓国の戦後歴代政権は日韓関係を拗らせることをしばしば行ってきた。

 しかし、文在寅政権の登場以来、射撃レーダー照射事案や旭日旗の掲揚拒否など、安全保障の根幹とも言うべき自衛隊に対する敵対行動をとるに至り、軍事関係の信頼性が崩壊したとみなければならない。

 以上によって、韓国専門家の諸氏が主張する「助けず、教えず、関わらず」の非韓3原則で行くより仕方がないであろう。

 台湾の繁栄にみるように、韓国を併合した日本の統治は、世界史的視点から見れば西欧諸国の植民地統治に比しはるかに緩やかで、被植民国家の搾取どころか繁栄さえ期待したものであった。

 手前味噌ではなく、韓国の知識人による『反日種族主義』からも読み取れるように、日本が行ったことで評価されるべき点も多々あるが、当の韓国はことごとく因縁をつけ、史実を歪めた捏造で日本批判を繰り返している。

 ゴール・ポストを動かしてまで反日が繰り返される実態は、韓国人の併合時代に対する世界史的視点からの理解が十分でないからであろう。

 しかし、日韓基本条約などを否定する文在寅政権の行為は、韓国歴代政権を否定して全く異なる国家の枠組み、すなわち統一国家を意図しているように感じさせる。

 その場合の主導権は全体主義北朝鮮が握るに違いない。

 親日国民までも全体主義の洗礼を受ける立場に追いやることは忍びないが、のちのち日韓が再び接近した時、「千年の恨」など一切言い出さないためには、自由や人権で辛酸を舐めてもらうよりほかに道はないのかもしれない。

 この場合、米国は韓国防衛から手を引いているであろうし、統一朝鮮はICBM(米国が許さない)以外の核兵器を保有した、現在とは全く異なる周辺情勢となろう。

 日本は窮余の一策として独自の防衛力構築を迫られることは間違いない。

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