乃木坂46樋口日奈が、宅間孝行が作・演出・出演を務める舞台『仏の顔も笑うまで』に出演する。これまで舞台『SHOW BOY』やミュージカル『ラヴズ・レイバーズ・ロスト-恋の骨折り損-』に出演するなど、俳優としての経験を着実に積み重ねてきた彼女は、今回が初めて本格的なコメディーへの挑戦となる。
モト冬樹やダチョウ倶楽部肥後克広、元・宝塚歌劇団雪組トップスターの水夏希らベテラン勢に囲まれながら、どんな表情を見せてくれるのか──。
本作の意気込みや見どころとともに、アイドル・俳優・モデルとして活躍する彼女の目標を聞いた。

取材・文 / 五月女菜穂 撮影 / 関信行

◆初めての本格コメディー、等身大で演じたい
ーー 今回、宅間孝行さんが主宰する演劇プロジェクト「タクフェス」の舞台『仏の顔も笑うまで』に出演されます。出演が決まった今、どんなお気持ちですか?

タクフェスは以前から知っていました。人情味があって、温かくて、観ていて大切なものを呼び起こしてくれるような舞台を上演されていると思います。特にタクフェスのポスターは、衣裳の印象もあると思うのですが、昭和なレトロ感がありますよね。レトロなものが好きな私にとっては、大好きな舞台になりそうです。
なので、タクフェス出演のお話をいただいたときは純粋に嬉しかったです。でも、今回はコメディー。コメディーは一番難しいと自分の中で考えているところがあるので、果たして自分にできるのか、不安もあります。

ーー コメディーはどのようなところが難しいと感じますか?

泣ける映画を観るのが好きで、よく観るのですが、泣くポイントや怒るポイントはだいたいみんな同じことが多いじゃないですか。ここで涙を誘っているというのが、わかりやすい。けれど、笑いは人によって全然違います。友達と一緒にいても、ここで笑うんだ、ここは笑わないんだと、ツボがみんな違いますし。
あんまり計算しすぎるのも面白くないし、笑いで多くの人の心をつかむのは難しいんだろうなと思うんです。

ーー もう台本はお読みになりましたか? ご自身が演じられる、「町田はな」はどういう役なのでしょうか?

はい、読みました。ダチョウ倶楽部肥後克広さんが演じる住職の娘役です。もうその時点で私は嬉しい。
なちゃんは、一途で、一生懸命で、まっすぐな子だなという印象です。その性格ゆえにいろいろなことを勘違いして、その勘違いが重なることで、面白くなっていきます。台本の中で欠かせない役だなと感じます。

ーー 町田はなと、樋口さんご自身と、何か共通点は感じられますか。どのように役をつくっていこうと考えていますか?

私は脚本をいただいたときに、どちらかというと、自分の中でたくさんつくり込まなきゃいけないなと思ってしまうタイプなのですが、これまでのタクフェスの舞台を観ているかぎり、自然体が一番いいのだろうなと思っています。
以前、宅間孝行さんに「等身大で、そのまま一生懸命に舞台の上で生きていたら、きっと観る人によって面白さが生まれてくるから、あまり考え込みすぎないでいいよ」と言っていただきました。なので、普段の私とあまり大きく変えずに、役に取り組みたいです。
共演者の皆さんと一緒にお話を進めることができるのがいいのかなと思います。はなちゃんは、面白いシーンに結構出ているので、私自身も楽しみつつ、モト冬樹さんや肥後さんなど大先輩の力を借りて、お客さんを笑わすことができたらいいなあと思っています。

ーー すごく台詞が多いですよね。何か台詞を覚えるときのコツはありますか?

一番最初に乃木坂46のメンバーがいない(Wキャストだが舞台上には一緒に出ない)舞台に出演させてもらったのが、2014年。そのときはそんなに台詞量は多くなかったのですが、自分の台詞ばかり意識してしまい、急に頭が真っ白になったり、“これでいいんだっけ?”と舞台上で不安になったりしてしまうことがありました。でも、あるとき、全員分の台詞を自分で読んで、その音声を録音して、それを聴いて、とりあえず全部の会話が頭に入るようにしたんです。そうして覚えるようになったら、台詞を間違えたらどうしようという不安から解放されましたし、考えるよりも先に台詞がポンポン出てくるようになりました。
台詞をひとつだけ覚えるのではなくて、全部覚えたほうが自分も面白いし、いろいろなお芝居ができるようになる気がしていて。今、私に一番合っている、台詞の覚え方だと思います。

ーー なかなかユニークな覚え方ですね。

自分で思いついた覚え方です。家族が家にいないときにひとりで音読して、録音していました(笑)。
自分の声で自分の思ったように話しているので、いざ稽古場に行くと、皆さんが演じるので、私の考えていた解釈と違うことも多いんですけど、その発見も勉強になります。

ーー 今回の『仏の顔も笑うまで』で共演される方で、特に楽しみにされている方はいらっしゃいますか?

いろいろな世界で活躍されている方ばかりで、今回、皆さんとご一緒することで、私もいろいろなことを学べると思うんです。だから、スポンジのように吸収力抜群の状態で稽古場に行きたいと思っています。
具体的にはそうですね……お父さん役の肥後さん。すごく優しくて穏やかな方なんです。だから本当の娘みたいに思ってもらえたらいいなと思っていますし、私もお父さんみたいに思って、自分でももちろん頑張りますが、頼れるときには頼らせていただきたいなと思いますね。それから、水 夏希さん。水さんと共演することを伝えると、母や宝塚が好きなメンバーなどから「すごいね!」と言われました。水さんと一緒の舞台に立つということで、身が引き締まる思いです。
聞いた話なのですが、宅間さんの稽古場では、稽古前にみんなでご飯を食べる時間があるらしくて。そういうところで、少しでもファミリー感を感じて、ひとつになれたらいいなと思います。今から楽しみです。

◆俳優もアイドルもモデルも。マルチにこなせる人を目指して
ーー 樋口さんはもともと俳優に憧れていらっしゃったのでしょうか? 何かきっかけがあれば教えてください。

幼稚園のときは漠然と歌手になりたいと思っていました。七夕の短冊にも書いていましたから(笑)。俳優に憧れを持ったのは、乃木坂46に入って、乃木坂メンバーだけで舞台をやらせてもらうようになってから、ですね。
お客さんの反応を直で感じられることにワクワクしました。初めは漠然と映画やドラマに出たいなと思っていたのですが、舞台というのものに出会って、舞台の楽しさを感じて好きになりました。

ーー お客さんの反応はライブでも感じられますよね。ライブと舞台、何が違ったのでしょう?

乃木坂で初めにやった舞台は、1幕に舞台上でオーディションをするんですよ。ファンの方の前で自己PRやエチュード、ダンス、歌をひとりずつやって、休憩中に投票をしてもらうシステムで。だから、16役あっても自分がどの役になるのか、そのときまでわからないんです。
ファンの方々はその日のその子の自己PRや演技を見て選んでくれるのですが、自分がちゃんと熱量を伝えられれば、そのぶん返ってくるんだとわかりました。もちろん投票制度はつらいこともありましたが、でも、頑張ったときに選んでもらえるとすごく嬉しくて。ライブのときとは全然違う雰囲気で、自分の演技や気持ちを見てくれているのが楽しかったですね。

ーー 樋口さんはアイドルも俳優も、そしてモデル業もされていて、活動の幅が広がっていると思うのですが、ご自身の中ではどういう像を描いているのですか?

乃木坂のメンバーには、バラエティーなど何かに特化している人もいますが、私はその中でマルチに活動していきたいなと思っています。いずれ自分でひとり立ちするにしても、バラエティーも舞台も映像も、モデルもできるような、何でもできる人になりたいという野望がすごくあります。
今回お世話になる宅間さんは、脚本も書いて、演出もして、ご自分も出演されますが、そういうマルチに活躍できる人はどの世界でも強いと思うんです。だから、私が描いている野望は、どんな分野でも力を発揮できると言われるようになることです。

ーー 2019年は舞台『SHOW BOY』やミュージカル『ラヴズ・レイバーズ・ロスト-恋の骨折り損-』に出演されるなど、たくさん経験を積まれました。2020年はどんな年にしたいですか?

2019年は『GIRLS REVUE』、『+GOLD FISH』、『SHOW BOY』、『ラヴズ・レイバーズ・ロスト-恋の骨折り損-』と4回も舞台をやらせていただけて、本当に幸せでした。いろいろな女の子を演じさせてもらって、自分だけど、自分じゃない感じで過ごすのは楽しかったですし、舞台を通じて本当にたくさんの方と出会って、たくさんのことを学び、たくさんの経験を積ませてもらいました。
舞台で私のことを知ってくださる方も多いですし、すごく影響があるものなので、あらためて舞台の楽しさを知りました。初めは緊張ばかりしていましたが、どんどん楽しんでいる自分がいます。毎日充実していて、役や舞台に対して貪欲になれた1年だったなと思います。
今回の『仏の顔も笑うまで』が、私にとって初めての本格的コメディーのように、2020年は“初”づくしの1年にしたいです。宅間さんからは「このタクフェスは通過点だと思って頑張って欲しい。この舞台がステップアップになるような舞台になってくれたら嬉しい」という言葉をいただきました。タクフェスを皮切りに、またいろいろと挑戦して、自分を追い込んで、もっともっと深みのある人になりたいなと思っています。

ーー 最後に、この舞台をどんな方に観ていただきたいか、ひと言お願いします!

コメディーが好きな方、タクフェスが大好きな方、出演されている皆さんのファンの方々には絶対観に来て欲しいです。一方で、初めてコメディーを観るという方や今まで舞台を観たことがない方も、この舞台でハマってしまうと思っています。始まったらあっという間だし、飽きることもないはずなので、いろいろな方にぜひ観ていただきたいですね。
タクフェスは、笑えるところもたくさんあるけれど、人情味に溢れた舞台です。今の時代に必要とされている“温かさ”を感じるところがあると思うので、欲を言ったら、全員観るべき舞台なんだと思います!(笑)お時間がある方はぜひ観に来てください。

乃木坂46樋口日奈が本格的コメディーに初挑戦! 舞台『仏の顔も笑うまで』出演に向けての想いとは?は、WHAT's IN? tokyoへ。
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掲載:M-ON! Press