◆大麻由来成分CBDの愛用者が急増中!

 CBDと呼ばれる大麻由来の成分が、リラックス効果があると人気を集めている。大麻なのになぜ合法なのか体験者と専門家に聞いた。

◆女性や格闘家も愛用するCBDって何だ?

 CBDと呼ばれる大麻由来の成分が、ネット通販だけでなく、百貨店オーガニックショップなど、一般の小売店でも売られるようになり、裾野を広げている。

 CBDは、正式名称をカンナビジオールといい、大麻草特有の成分のひとつだ。大麻といえば人間を「ハイ」な状態に導く成分であるTHC(テトラヒドロカンナビノール)が有名。

 THCは麻薬及び向精神薬取締法で麻薬指定されているため漏れなく違法となるが、CBDにはハイになる精神作用はなく、ただちに法に触れることはない。

 近年は北米を中心に医薬品としての価値が見いだされているほか、健康食品やサプリメントとして流行。それが日本にも伝播しつつあるというわけだ。

◆リラックス効果はあらゆる層から支持

 とはいえ小さい頃から「ダメ! 絶対!」と聞かされて育った日本人にとって、大麻と聞けば腰が引ける人が多数派だろう。そこで、いち早く取り入れている人たちに実際の使用感を聞いてみた。学生時代に大麻使用の経験がある東京都会社員・青田昌夫さん(仮名・43歳)は、ネットで偶然発見した麻のマークに懐かしさを覚え、軽い気持ちで購入したそうだ。

 仕事で疲れた日は、CBDのヴェイプ(電子タバコ)を吸引したり、オイルを摂っているという青田さん。その効果のほどは……。

オイルを口に含み数分たつと、心地よい脱力感に包まれ、腰痛や首の痛みも心なしか和らぎます。いわゆる本物のハッパを吸ったときのような『キマる』感覚や多幸感はないけれど、フラフラにならない程度のちょうどいいリラックス効果が気に入っています」

 今では、週に数回、夜の癒やしのひとときを青田さんは楽しんでいるという。

 一方、健康上の問題から試す人もいる。神奈川県在住の税理士・高岡真耶さん(仮名・39歳)は、長年睡眠障害に悩まされ、医師処方の睡眠薬を服用していた。だが、そんな毎日に負担を感じていたところに、安眠効果を得られるというCBDの存在を知り、試してみたという。

百貨店で見かけてからずっと気になっていたんです。大麻ということで抵抗はありましたが、麻の実を搾ったヘンプオイルベースの化粧品は一般的だし大丈夫だろうと思い、ネット通販で購入しました。私はタバコを吸わないので、電子タバコではなくオイル派。CBDオイルを飲んで目を閉じていたら、いつの間にかリラックスしている自分に気がつきました」

 高岡さんは眠りが浅く、夜中に一度起きると朝まで寝つけないという睡眠障害に悩まされてきた。初めてCBDを使った夜は「睡眠薬を飲まなくても眠れそう」と感じ、そのまま床についたところ、朝まで熟睡できたという。

「眠れないときに睡眠薬やお酒に頼るのは、体によくないという罪悪感がつきまといますが、CBDは私にとってアロマの延長線上にあるもの。睡眠障害に悩んでいる人は、試す価値はあると思います」

 また、健康上の悩みとは無縁そうな人たちにもCBDは流行しているようだ。千葉県会社員・澤野準太さん(仮名・36歳)は通っている格闘技ジムの仲間からCBDを勧められた。

「最初はヤバいクスリかと思ったんですけど、ジム仲間に勧められて試してみたら、トレーニング中は体が軽く感じられ、疲労感が残りにくい実感があるんです。だから、追い込んだトレーニングを長時間できるんですよ。サプリメント情報に敏感な格闘技界隈でも、CBDは評判がいいですね。僕はオイルを飲んでから集中的に練習するようにしています」

 都内某所の電子タバコ店店主も、CBD熱の高まりを感じている。

「昨年あたりからCBDの問い合わせは増えています。CBDのリキッドは普通の電子タバコのリキッドの10倍近くする高価なものですが、CBDを求めるお客さんのほうが多いくらいです。手軽に吸いたいならリキッド、手間はかかるけど高濃度のワックスなど、幅広い商品が流通しています」

 女性の客も多く、なかには1瓶8000円以上もするCBD入りグミを10本単位でまとめ買いする客もいるという。CBDの一大マーケットが出現しつつあるのだ。

◆CBDを抽出する部位によっては違法

 日本で購入できるCBD製品は医薬品としては認可されておらず、あくまで嗜好品の域を出ない。具体的にどんな作用があるのか、海外の医療における大麻の利用状況に詳しい内科医の正高佑志氏は、CBDの有用性をこう語る。

「痛み・不安・不眠・鬱といった症状を緩和したり、抗炎症作用・神経保護作用・抗酸化作用があるといわれています。子供のてんかん発作を抑える薬としての研究がとくに進んでいて、’18年に『エピディオレックス』というCBD製品がFDAアメリカ食品医薬品局)の認可を得て、アメリカの病院で処方されるようになりました。依存性は低く、重篤な副作用の心配もありません」

 では、より効果的な摂取方法はあるのだろうか。

オイルを口から摂取するのが一般的で、いきなり飲み込まず、舌の裏に垂らし、90秒ぐらいおいてから飲み込むと吸収効率が上がると考えられています。大量に摂ればいいというわけではなく、効果には個人差があります。少量から徐々に量を増やし、もっとも効果を感じられるポイントを探す作業が必要になります」

 そして、ユーザーにとっての最大の関心事である法的な問題についても聞いた。海外の大麻関連書籍の翻訳に精力的に取り組んでいる三木直子氏は、日本における大麻の扱いの矛盾をこう指摘する。

アメリカでは、大麻草のうちTHCの含有率が乾燥重量ベースで0.3%以下のものを『ヘンプ』と定義し、農作物として栽培することが広く認められています。

 ところが、日本の大麻取締法では、花穂、葉、根に由来するものは違法であり、大麻草の茎と種子に由来するものは合法なんです。成分ではなく部位によって線引きされ栽培に厳しい制限が設けられており、世界的な動きとはズレてしまっているのが現状です」

 専門家のお墨付きも出たことなので、記者も試してみた。独特の香りと味はマズかったが、数分後、心地よい落ち着きが訪れ、仕事を忘れて朝まで眠ってしまったのであった。

◆大麻取締法とは何なのか

 日本で大麻取締法が制定されたのは1948年だが、このとき日本を占領していたGHQの意向と、日本の農業従事者への配慮を折衷した結果、同法の規制は不合理極まりないものになった。

 GHQは当時のアメリカと同様、栽培全面禁止を打ち出した。しかし、当時の日本は茎は繊維、実は食用にと、大麻栽培が盛んに行われていたのである。そうした農家の生業を奪わないよう、茎と種子は合法とされたのだ。

 また、日本古来の神事にも麻は不可欠であり、新天皇の「大嘗宮の儀」においては、麻の織物「麁服」を供えるのが習わし。伊勢国一宮・椿大神社をはじめ、各地の神社でも祭具やしめ縄に使われていることが考慮されたのだろう。

 こうして部位による規制をかけた結果、大麻取締法は、大麻の花や葉の所持は違法だが、それを吸引する行為については罰しない。被疑者の尿から出た大麻成分が、合法の茎や種由来のものである可能性を排除できないからだ。

 日本の大麻を規制した当のアメリカで大麻解禁が進むが、日本は不合理を放置するのか。

【正高佑志氏】
内科医。医療大麻に関する、科学的エビデンスに基づいた正しい知識の普及をめざして活動する「Green Zone Japan」代表理事

【三木直子氏】
翻訳家。「Green Zone Japan」理事。『マリファナはなぜ非合法なのか?』(築地書館)、『CBDのすべて』(晶文社)などを翻訳

取材・文/松嶋千春・野中ツトム(清談社) 写真/dpa/時事通信フォト
※週刊SPA!2月25日発売号より