新型コロナウイルスの猛威が止まらない。日本のプロスポーツ界もモロに影響を受け、大きく混乱している。プロサッカーJリーグ3月15日までに予定していた全公式戦の中止と延期を決定。国内男子プロバスケットボールのBリーグ3月11日までに予定されていたB1とB2の計99試合を延期すると発表した。

JBpressですべての写真や図表を見る

 そしてプロ野球NPB日本野球機構)でも12球団代表者会議が行われ、3月15日まで組まれていた残りのオープン戦全72試合を無観客試合とすることを決めた。26日に政府から「今後2週間は大規模なイベントを中止、延期または規模縮小などの対応を要請する」との告達が出されたことも拍車をかけ、各プロスポーツ界は具体策を示さざるを得ない状況となっている。

IOC委員が口にする東京五輪開催への懸念

 これらの先にあるのはやはり東京五輪開催の可否だろう。

 JリーグBリーグNPBはお膝元の日本で行われるスポーツの祭典に対して所属選手たちを日本代表として参加させる運びとしていることから、どの組織も全面的な協力体制を整えている。そして水面下で東京オリンピックパラリンピック大会組織委員会やJOC(日本オリンピック委員会)なども束ねながら陣頭指揮を執っている政府は、新型コロナ禍に苦しみつつ、何が何でも大会を成功に導こうと国運を賭すつもりでいるらしい。

 しかし今はとにかく気が気でないはずだ。国際オリンピック委員会IOC)で委員を務め、キーパーソン的な立ち位置にいる有力者のディック・パウンド氏がAP通信のインタビューに応じ、東京五輪の開催時期の判断期限は引き延ばせて5月下旬がリミットとの見解を示したからである。

 1978年から要職に就いてIOC最古参となっている同氏の発言は非常に重い。そのIOCの重鎮が中止も辞さない構えを見せたことで日本政府や大会幹部にも計り知れない衝撃が走っている。

 そんなドタバタぶりを証明するかのように橋本聖子五輪相が26日の衆院予算委員会で、AP通信のインタビューで口にしたパウンド氏の発言を大慌てで強く否定。東京オリ・パラ大会組織委員会がIOCに説明を求め、回答を得たとし「IOCの公式見解ではない」と述べた。

 ところが、こうした橋本五輪相の対応を含む日本政府や大会関係者側の苦しい弁明や逃げ口上については、身内からもついに批判の声が向けられ、いよいよ愛想を尽かされ始めているというから救いようがない。

JOC幹部から漏れだした政府への疑念

 JOCの上層部からは「東京五輪開催に関して不利な情報を何とかすべて必死に打ち消そうとしている政府の姿勢があまりにもリアルに目立ち過ぎてしまい、このままでは『東京五輪=悪』のイメージがどんどん膨らんでしまう恐れがある」との警鐘が鳴らされるとともに、次のような厳しい指摘も飛び出している。

パンデミック寸前の危機的状況にありながら、政府が開催を強行しようと情報操作をしていると見る人が増えている。だから政府の思惑とは逆に、東京五輪は『迷惑千万な大会』と印象付けられる結果となり、開催する側の我々としても大きなとばっちりを受けている。

 ここまで新型コロナウイルスPCR検査の件数が隣の韓国など他国と比較しても異常にまでに少なく、国家ぐるみで感染者の数を過少報告しているとの疑念を持たれてしまっているのも、その一例だ。つまり、東京五輪のせいで検査を受けたくても受けられない“隠れ患者”が実は万単位で存在しており、検査を受けられたとしても、政府の陰謀によって重症化するまで陽性反応が出ないように仕立てあげられているのではないか――などという疑念だ。

 この話に一体どこまで信ぴょう性があるかどうかは分からないが、少なくとも疑いがもたれていることで東京五輪のイメージは今やオリンピック史上最悪レベルになっているのは間違いない。

 それもこれも、すべて新型コロナウイルス対策への初動が遅れ、甘く見過ごそうとしていた政府の責任だと思う。ウヤムヤにしようとしているから、おかしい。パウンド氏の“5月末リミット発言”に関する橋本大臣の説得力不十分な答弁についても、そして感染者数の過少報告疑惑にも怪しいニオイがプンプンと漂ったままだから、多くの人が『東京五輪なんて中止にしてしまえ』と声高らかに叫ぶようになっているのだろう。この状況においては東京五輪開催に関し、国民の方々からの理解を得られるのは非常に難しいと言わざるを得ない。

 とにかくもう一枚岩ではないようだ。このJOCの上層部だけでなく、これまで大会を運営する側として東京五輪の成功に心血を注ぎ込んできた数多くの関係者からも、日本政府の安倍晋三首相や橋本五輪相、東京オリ・パラ大会組織委員会の森喜朗会長ら要職に就く人物たちの失策及びリーダーシップの欠如について猛烈に批判する意見は今、後を絶たない。

 ここまで大会運営側がバラバラになり、国民からの理解も得られずじまいとなりそうな政府主導の東京五輪にポジティブな要素を見つけるのは難儀な話だ。とてもじゃないが“コロナショック”を乗り越え、平穏無事に開幕を迎えられるとは思えない。

[もっと知りたい!続けてお読みください →]  新型コロナ終息せず、五輪中止のシナリオも用意せよ

[関連記事]

新型肺炎、政府が恐れるロシア発「五輪ボイコット」

感染者「爆増」の韓国、文政権の楽観論が招いた悲劇

2月20日、衆議院予算委員会で質問に答える橋本聖子五輪担当相(写真:つのだよしお/アフロ)