クローズド・ノート」「検察側の罪人」の雫井脩介が執筆時、最も悩み苦しみ抜いたという渾身のサスペンス小説「望み」が堤真一主演で映画化されることが決定した。共演には石田ゆり子、監督は堤幸彦、脚本は映画「八日目の蝉」「おおかみこどもの雨と雪」などを手掛けた奥寺佐渡子が務める。

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■ 愛する息子は被害者なのか、それとも殺人犯か?

モデルハウスのような高級邸宅に暮らす、裕福な建築家一家の石川家。誰もが羨むこの理想的な家族の日常が一変する。無断外泊から帰らない高校生の息子の行方を巡り、同級生の殺人事件との関与を疑われていく。犯人であっても生きていてほしい母親と、被害者であっても息子の無実を信じたい父親、家族の“望み”は交錯していく。愛する息子は被害者なのか、それとも殺人犯なのか?

堤が演じるのは主人公の一級建築士・一登。“ダブル堤”となる堤幸彦監督とは、今回初コラボレーションとなる。石田は、その妻・貴代美を演じる。堤幸彦監督とは「悼む人」以来2度目のタッグとなり、堤真一とは初の映画共演を果たす。

■ 「望み」ストーリー

一級建築士の石川一登と校正者の妻・貴代美は、自らデザインを手掛けたスタイリッシュな邸宅で、高校生の息子・規士(ただし)と中三の娘・雅(みやび)と共に平和に暮らしていた。

規士は怪我でサッカー部を辞めて以来、遊び仲間が増え無断外泊が多くなっていた。ある晩、家を出たきり帰ってこず、連絡すら途絶えてしまう。一登と貴代美が警察に通報すべきか心配していると、高校の同級生が殺害されたというニュースが流れる。警察の調べによると、規士が事件へ関与した可能性が高いという。行方不明は3人。そのうち犯人だと見られる逃走中の少年は2人。息子は犯人なのか、それとも……。

■ 構想4年、堤幸彦監督が映画化を熱望!

単行本刊行当時から話題作となり、映画化の希望が各社から殺到していた「望み」。数々のエンターテイメント作品を手掛けてきた堤幸彦監督のところにもプロデューサーから企画が持ちかけられ、原作を読んだ堤監督は本作に惚れ込み映画化を熱望したという。キャスティングには特にこだわり、誰もがイメージできる幸せな家族像に合ったキャストを探し続けた。

息子を想いながらも家族を守ろうとする父、愛情深く最後まで希望を捨てない母親。サッカー選手になる夢を閉ざされ家族と気持ちが離れていく高校生の息子、高校受験を直前に控える中三の娘。この4人のキャスティングとそれにふさわしい脚本づくりに実に4年の時をかけて、撮影に臨んでいる。

■ こだわりの美術セットとロケーション!

石川家が暮らすのは、一級建築士の主人公が手掛けた自慢の邸宅だ。1Fに8坪ほどの事務所が併設された、建坪40坪程の広く開放的な石川邸を再現するべく、角川大映スタジオに大規模なセットが組まれた。

アイランドキッチン、ダイニングテーブル等の高級家具を配置したモデルハウスのような完璧なリビングルームと、二つの子供部屋が建てられ、製作費の中でセットのコストはかなりの割合を占めている。原作では「戸沢」という架空の町が舞台となっているが、堤監督はのどかながらもどこか寂しさ漂う郊外のベッドタウンをイメージしたという。

石川邸の外観は、3カ月かけて20件以上の物件を巡り、東京都青梅市に理想のロケーションが見つけられた。その他、埼玉市の所沢市朝霞市などでも撮影されている。

そして、この映画について堤監督、堤真一、石田、原作者の雫井からコメントが届いている。

堤幸彦監督 コメント

息子が事件の被害者となるか加害者となるか、どちらの結末を迎えても惨憺たる結果になるこの物語はミステリーであるだけでなく、設定や行動のディティール、父と母の葛藤とその心理描写の緻密さに圧倒されました。

社会的にも経済的にも成功した主人公が、息子の失踪をきっかけにその『家族』が壊されていく。我が身に明日起きても不思議ではない。そのスリルと感情の揺れをストレートに役者の芝居で描きたいと考えました。

堤真一さんとは初めてですが、映画「クライマーズ・ハイ」(2008年公開)やいくつかの舞台、映画、ドラマを拝見させていただいてお手合わせしたいと考えていました。また石田ゆり子さんとは「悼む人」以来6年ぶりとなりますが、お二人とも苦悩する父と母を見事に演じきってくださいました。

堤真一 コメント

堤幸彦監督とは初めてのお仕事でしたが、毎日現場に入ると監督が、その日の撮影イメージについて丁寧に説明してくださいました。芝居を見てから、シーンのカット割りを決めていくという、現場主義の監督ですね。

脚本を初めて読んだときは、難しい作品だと感じました。家族をテーマにしたサスペンスであり、ただの家庭ドラマではない。自分の子供がまだ小さいからか、中高生の子を持つ親の気持ちやその年頃特有の不安定さというのが掴みづらくて、最初はできるだろうかと不安もありました。でも、実際撮影に入ってみると、その中高生の子供たちが自分の子供として、とても愛おしく思えたんです。監督が順撮りしてくださったお陰なのですが、家族に一体感が生まれて、無理することなく芝居ができました。

石田ゆり子さんとは初共演でしたが、いずれご一緒したいと思っていました。いつも現場の空気を和ませてくれる素敵な方で、今回、一緒に家族を演じることができ、とても嬉しかったです。

■ 石田ゆり子 コメント

堤幸彦監督とは「悼む人」以来です。撮影はとても早いし、無駄なことを一切おっしゃらないので役者としてはとても緊張感があります。今回は私たち俳優の気持ちを汲んで、ほぼ順撮りにして下さりそのことが本当にありがたかったです。

奥寺佐渡子さんの脚本は、辛い中にも透明感というか、優しい光のようなものを感じる素晴らしいものでした。本当に辛い物語なのですが、でもきっと目に見えない大切なことが沢山映っている映画になるのではないかと思っています。

堤真一さんとは、いつかご一緒したいと思っていたのでご一緒できて幸せでした。家族の物語なので、率先してみんなをまとめてくださったり、楽しい話をして、場を和ませてくださったりとてもありがたかったです。

私の役は、息子が加害者であろうと被害者であろうととにかく命だけはあってほしいと願い続ける母親の役なのですがその点においては一切の異論なく彼女の気持ちがわかります。「望みはある」と信じ続ける彼女を演じながら私はいつも、祈るような気持ちでいました。

■ 原作者・雫井脩介 コメント

「望み」は、父と母の心理描写を軸にして紡いだ作品であり、その心理描写が使えない映像というジャンルでこの物語を活かすことは難しいのではと思っていました。

しかし、奥寺佐渡子さんから素晴らしい脚本が上がったことでその不安は消え、シリアスな社会派ドラマを含めた多くの作品を手がけてきた堤幸彦監督が、これをどのようにスクリーンに映し出してくれるかという楽しみが一気にふくらみました。

堤真一さんと石田ゆり子さんはその安定感でもって、よき父、よき母にしっくり収まります。それゆえ、事件によって平穏な日常が壊れていく様も際立ち、観る者に強く訴えかけてくることだろうと思います。(ザテレビジョン

映画「望み」に出演する堤真一と石田ゆり子