お金に対する考え方が違っていたために、結婚に向けてお付き合いしていたカップルが交際を終了してしまうケースが、とても多いのです。

 お金の使い方には、その人の人間性が透けて見えます。

一円でも損をしたくない

 堀田陽子さん(31歳、仮名)は、4つ上の吉高正雄さん(仮名)と交際して3カ月がたちました。結婚相談所には「3カ月ルール」というものがあり、そこを一区切りにして、結婚に向かえるかどうかの意思確認をするのが通例です。

 お互いが住んでいる地元でもデートをするようになっていたので、「これはプロポーズも近い」と私は踏んでいました。

 ところが、陽子さんから「よくよく考えたのですが、正雄さんとは交際終了にしてください」という連絡が入りました。驚いて理由を尋ねると、「会話の中にお金の話が多く、いつもコスパを考えていて、一円でも損をしたくないと思って生活している。そこが気になりだしたら、一緒にいることにストレスを感じるようになりました」と言うのです。

 先日もこんなことがあったようです。

 ファミリーレストランに行ったときのこと。ランチタイムだったので、陽子さんはランチメニューからパスタを選び、ドリンクバーをつけました。正雄さんは、デミグラスソースのハンバーグとドリンクバーのセットを注文しました。

 飲み物を取りに行き、白湯(さゆ)をカップに入れて陽子さんが席に戻ってくると、既に野菜ジュースを飲んでいた正雄さんが言いました。

「それ、何?」

「白湯だけど」

「えっ? ただのお湯ってこと? 同じお金を払っているのに、なんでお湯を飲むの? もったいないじゃない」

 さらに、料理が運ばれてくると、こんなことを言いました。

ランチメニューで値段が同じときは、パスタを頼むのは損だよ。パスタって、原価が200円くらいでしょ。こういうときは、ハンバーグとか原価の高い肉を頼んだ方がいいんだよ」

 陽子さんは私に言いました。

「私は、食事の前に白湯を飲む習慣があるんです。おなかの中を温めてから食べた方が、消化がよいような気がするので。それに、原価が安い高いよりも、その日は私、パスタが食べたかったんですよ!」

 さらに、ハンバーグの原価の話から、こんな話につながったとか。

「肉は肉でも、鶏肉は安い。だから唐揚げを頼むのは損。あ、だけど、会社で接待をするときは鳥料理の店に行くね。そうすると会計も安く抑えられるから」

 こんな正雄さんですから、デート代もきっちり割り勘。

「私も働いているので、割り勘でいいんです。ただ、先日のファミレスでは『私が自分で払うのだから、好きなものを食べて、飲みたいものを飲むのは私の自由!』と心の中で思ってしまいました」

 お付き合いが始まった当初は、「お金にルーズな浪費家よりも堅実でいい」と自分に言い聞かせてきましたが、時間を重ねていくうちに、口を開けばお金の話をする正雄さんに魅力を感じなくなりました。

 結局この2人は、交際終了となりました。

体は食べるものでできているのだから

「5回のデートで、既に10万以上使っています。僕の給料では手に負えない。交際終了にしてください」

 地方公務員をしている米塚諭さん(42歳、仮名)から連絡が来ました。諭さんがお付き合いしていたのは、同い年の飯田真理子さん(仮名)。この2人のお見合いには私も立ち会ったのですが、真理子さんは42歳には見えない、きめ細やかな肌の若々しい女性でした。真理子さんの美しさに、諭さんは一目ぼれ。

 しかし、お付き合いが始まってみると、一緒にいることに違和感を抱くようになりました。

 真理子さんは「人間の体は食べるものと生活習慣でつくられている」というのが持論。週2回はヨガ教室に通い、口に入れる食品はオーガニックにこだわっているようでした。

「デートも、彼女がオーガニックレストランを予約するんです。行きつけの店だから、彼女の地元に近いんですよ。僕が彼女の地元近くに行くには、電車で1時間半かかる。近くに呼び寄せておいて、お金を払うのはいつも僕。しかも、オーガニックの店は素材の味を大事にするから薄味だし、僕には物足りない。で、会計が毎回2万円を超えるんですよ」

 さらに、食事をしながら、白米や砂糖、コンビニの出来合い総菜がいかに体に悪いかを力説し、食品添加物を“悪魔”のように言うそうです。

 オーガニックの食品もヨガも、確かに健康にはよいでしょう。彼女の意識の中では「体によいものを相手にすすめることは素晴らしいこと」と思い込んでいるのかもしれません。

 諭さんは言いました。

「どんなに体によくても、毎回の外食に2万以上のお金を使っていたら、公務員の僕の給料では、まかないきれませんよ!」

 真理子さんは、相手にお金を使わせていることへの配慮にも欠けています。特定の宗教を信じたり、健康食品などのネットワークビジネスに傾倒したりしている人もしかりですが、盲信しているとそこにお金をつぎ込むことを何とも思わなくなります。盲信しているものが同じならよいのですが、価値観の違う人との結婚は難しいものです。

36歳、年収600万円で貯金100万円未満

 大谷智子さん(31歳、仮名)は、横森照英さん(36歳、仮名)と真剣交際に入って2カ月が過ぎていました。照英さんは、大手メーカーに勤める年収600万円の男性。食べることとお酒が大好きという2人は気も合い、楽しいお付き合いを続けていました。智子さんは「照英さんとだったら、友達みたいな夫婦になれるかも」と、ひそかに結婚を意識するようになっていたのです。

「話も漫才師みたいに面白くて、考え方もポジティブですてきなんです」

 お見合いから2カ月後に交際の進展を聞くと、智子さんは笑顔でこう話してくれたので、このままうまくいってほしいと願っていました。

 ところが先日、智子さんから「照英さんとは、交際終了にしてください」との連絡が入ってきました。「あんなにうまくいっていたのに、どうしたの?」と聞くと、こんな答えが返ってきました。

「結婚に向けての具体的な話をするようになったんですね。それで、貯金の話をして。私は短大を卒業して社会人になってからも実家暮らしだったし、毎月3万は貯金をするようにしていたんです。ボーナスが出るとそれで海外旅行にも行っていたけれど、500万くらいの貯金がありました。でも、彼は『貯金が100万もない』と言うんです。5つも年上で、年収は私の倍あるのに。しかも、実家暮らしですよ!」

 食べるのが大好きな照英さんは、おいしいお店をたくさん知っていました。珍しい日本酒やワインが置いてあるお店の常連さんでもありました。

「食事やお酒、旅行に使うお金に糸目をつけないみたいで。だから、実家暮らしでも稼いだ給料は飲み食い、旅行にほとんど使ってしまって、貯金はしてこなかったようなんですね」

お金に対する考え方の一致

 最近は、男性が女性に多額の結納金を支払うしきたりもなくなってきていますが、結婚が決まったら、指輪や結婚式、新婚旅行代の他にも、新居の契約金を支払ったり、そこで使う家具を買ったりと、何かと物入りです。貯金が100万円なかったら、その準備もできないでしょう。また、貯金を全て使ってしまったら、新しい生活に入るときに不安ですね。

 智子さんは、私に言いました。

「照英さんから、『結婚するときには、親が結婚準備資金を援助してくれる』という話をされたんです。でも、36の男が親のお金を当てにしているというのは、情けないじゃないですか?」

 借金がないだけまだましですが、学生ではないのだから、親のお金を当てにしている36歳はあまりにも頼りないもの。女性も結婚する気持ちにはなれませんね。

「お金がないと、しなくてもいいけんかをする」などと言いますが、お金は夫婦げんかの火種にもなります。自分の所得に対してお金をどう使っていくか。身の丈を考えた堅実な使い方をしたいものです。

 結婚するなら、お金に対する考え方や使い方が一致しているパートナーを選んだ方がよさそうです。

仲人・ライター 鎌田れい

「お金」に対する考え方が違うと…