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 もうすぐ空で超新星の輝きを見られるかもとドキドキしていた人にはすこし残念なお知らせだ。だがオリオン座の形が変わったらせつないと思っていた人には朗報だ。

 急速に明るさが低下し、超新星爆発の前兆かと言われていたベテルギウスだが、どうも復調の兆しが見られるようだ。再びその輝きを取り戻し始めたのだという。

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ベテルギウスに増光の兆候

 オリオン座の一部を構成するベテルギウスの輝きが不意に陰り、今まさに超新星となって大爆発する寸前であるとのニュースが流れたのは昨年12月のこと。その異変については、カラパイアでもお伝えした通りだ。

 だが『The Astronomer’s Telegram』(2月22日付)に掲載された最新情報によれば、ベテルギウスは再び輝きを取り戻し始めたのだという。

 今年1月の段階で、ベテルギウスの明るさは通常の25パーセントにまで陰っており、その先行きはかなり暗いものだった。ところが、現在では通常の40パーセントにまで回復したそうだ。

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image by: Edward Guinan

2020年1月の時点で回復が予見されていた


 超新星とは、恒星がその一生の終わりに起こす大規模な爆発現象のことだ。老化した星は、燃料を使い果たし、やがて自分自身の重力で崩壊し、最後に爆発する。

 アメリカ、ビラノバ大学のエドワードガイナン教授は、1981年からベテルギウスを観察してきた人物で、その異変にいち早く気がつき、ベテルギウス超新星騒ぎを引き起こした張本人でもある。

 だがすでに1月の時点で、それが異常な状態から回復しつつあることも察知していた。

 予測が正しくて良かったと述べながら、「私の方が間違っていて欲しかったのですが。星がどんどん暗くなって、やがて忘れられない壮麗な超新星になって欲しかったですね」と、ガイナン教授は複雑な心情を語っている。

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tedgun/iStock

天文学者にとっては一生に一度あるかどうかの大チャンス


 自分が間違っていることを望むとは妙な話かもしれない。だが、ベテルギウスの爆発は、天文学者にとっては一生に一度あるかないかという大チャンスだったのだ。

 普通、超新星ははるか数十億光年の彼方で起きるものだ。しかし、ベテルギウスは地球から700光年も離れていない。

 そのため、超新星へいたるまでのプロセスも含めて、すべてを観察することが可能で、星の終わりのメカニズムについていっそうの理解が進むだろうと期待されていたのである。

 そんな期待は裏切られたようだ。2週間にわたりその明るさが計測されたところ、ベテルギウスがちっとも死にかけていないことが確認されたのだ。

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WikiImages from Pixabay

ベテルギウスが減光していた謎


 ベテルギウス変光星だ。0.0等級から1.3等級の範囲で、定期的に明るさが変化する。確かに最近では前代未聞なほど暗くなっていたのだが、それも結局、普段のサイクルの一環であったのかもしれない。

 現在、なぜこうも大きく減光したのか、その原因の究明が試みられているが、そもそもベテルギウスの変光には複数のサイクルがあり、それがそのパターンを複雑なものにしているのだそうだ。

 残念ながら超新星は見られないかもしれないが、それでも今回の陰りは赤色巨星の変光サイクルについて、興味深い洞察をもたらしてくれるという。

 「最近の減光サイクルは終わったようですが、これからの観察が肝心です。今回の傾向はまだ続くのか、それとも回復して、元の明るさに戻るのでしょうか?」と、ガイナン教授は話す。

 しばらくこの気まぐれなベテルギウスから目が離せないようだ。

References:inverse / skyandtelescope/ written by hiroching / edited by parumo
(2020/03/02)本文を一部修正し再送します。

全文をカラパイアで読む:
http://karapaia.com/archives/52288355.html
 

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