高速道路を管理するNEXCO東日本は、SA・PAなどのトイレに関する内容だけを紹介する社内報を発行しています。社内におけるトイレへの関心度を大きく変えたという社内報、もちろん施設の改良にも生かされています。

「トイレ社内報」12年間毎月発行 社員を動かした「お客様の声」

東日本の高速道路を管理するNEXCO東日本には、トイレに関する情報だけを取り扱うという社内報が存在します。

この社内報『あさがお』は、SA・PAといった施設の維持管理を担当する同社関東支社の施設課が、2007(平成19)年から約12年間、社員が覚えやすい給料日に毎月発行しているといいます。誌名の由来は、昔の男性用小便器の通称「あさがお」だそうです。

どのような内容で、なぜ発行しているのか、NEXCO東日本関東支社施設課に聞きました。

――社内報の『あさがお』は、どのような内容なのでしょうか?

高速道路における最新のトイレ事情や、当社のトイレに関する取り組みのほか、編集部員が業務のなかで気付いた点や知識などをわかりやすく紹介しています。より多くの社員に読んでもらいたいという思いから、高速道路以外のトイレ情報や時事ネタも取り入れています。なお、編集メンバーは「ベンキョウ〈便興〉会」と称し、トイレの建設や管理の業務に携わる社員を中心に構成しています。

――なぜトイレに関する内容だけの社内報を発行しようと思ったのでしょうか?

2007(平成19)年の『あさがお』創刊当時は、高速道路を利用される「お客さまの声」のうち、お褒めの言葉も不満の声も、「トイレ」に対するものが非常に多くありました。2005(平成17)年に日本道路公団の民営化で当社が発足して以降、高速道路の「いいトイレづくり」は重要課題だったのです。にもかかわらず、「トイレ」は社内でもかなりニッチな領域でした。

そこで、高速道路のトイレに対する顧客満足度の向上を目的として、ひとりでも多くの社員が「いいトイレづくり」に共感し、会社全体でこれに取り組むためのコミュニケーションツールとして「あさがお」を発行しました。

「汚い・暗い・臭い」脱却! 進化する高速道路のトイレ

――社内報の発行により、社内はどう変わり、またSA・PAのトイレはどう変わっていったのでしょうか?

次第に社員の「トイレ」への意識が向上したように感じます。実際の施設においては、「汚い・暗い・臭い」という「公衆便所」のイメージからの脱却を図ってきました。

当社では管内のSA・PAすべての洋式便器を暖房・洗浄機能付便座にしたほか、トイレ内の段差解消、また子ども用のトイレやベビーシート、小型手洗い器などを備えた大型ブースの整備などを順次進めています。また最近では、扉の開閉で各ブースの使用状況が遠くからでもひと目でわかる案内板を開発したり、外国人のお客様の増加を受け、ピクトグラムの統一やトイレ利用案内の多言語化に取り組んだりしています。

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あさがお」は当初、NEXCO東日本の関東支社内のみで配布されていましたが、ほかの支社に異動した社員からも要望が寄せられるなどし、やがてグループ会社にまで配布先が広がっていったとのこと。いまでは読者数9000人以上だそうです。NEXCO東日本関東支社施設課は、「『毎月楽しみにしています』『できる限り続けてください!』といった励ましのお声をいただきながら継続した結果」と話します。

ちなみに、SA・PAにおける便器の数そのものも、定期的に見直されているそうです。トイレが清潔で快適になったことで、ひとりあたりの平均利用時間や大便器の利用率が増加していることもあり、たとえば男性大便器の数は、10年前に比べておおむね1.8倍必要になっているといいます。こうした便器の数については独自の計算式があり、その内容も「あさがお」で発信しているそうです。

NEXCO東日本関東支社施設課は、「高速道路のトイレは、お客さまのニーズや時代に合わせて変化しています」と話します。

東北道 蓮田SA上り線のトイレ。2019年7月に移転オープンしたNEXCO東日本で最も新しい休憩施設(2019年7月、恵 知仁撮影)。