新型コロナウイルスの感染拡大にともない、マスク不足が続いている。また、デマが発端となり、トイレットペーパーなど生活用品も品薄となり、生活に影響が出始めている。
そうした中、突如、注目を集めているのは「国民生活安定緊急措置法」と呼ばれる法律だ。買い占めや売り惜しみを抑え、トイレットペーパーなどの生活必需品の物価を安定させるための法律で、昭和48(1973)年、第一次オイルショックの際に制定された。
マスクやトイレットペーパーの高額転売がネットオークションなどで批判を集めていることから、ネットでは「国民生活安定緊急措置法を利用すればいい」という声が高まっている。
また、安倍晋三首相は3月1日、この法律に基づき、感染が拡大している北海道の市町村に対し、マスクを供給することを明らかにしたと報じられた。
久し振りに注目を集めている「国民生活安定緊急措置法」。一体、どのような法律なのだろうか。消費者庁に聞いた。
●転売ヤーは違法になる?オイルショックの際、トイレットペーパーや洗剤などが足りなくなるのではないかという不安から国民の間でパニックが起こり、買い占め騒動に発展した。
これに便乗して、売り惜しみや価格の釣り上げをする店舗や企業があったため、政府は「国民生活安定緊急措置法」を制定。4品目を指定し、政府が物価の高騰を抑え、生活必需品の安定的な供給を促した。
この4品目にトイレットペーパーが含まれていたことから、現在ネットでは、「トイレットペーパーの高額転売は禁止されている。転売ヤーは違法」という噂が流れている。これは事実なのだろうか。
消費者庁の担当者は弁護士ドットコムニュースの取材に対し、「この法律は、昭和49年に施行され、指定された4つの都市で実施されましたが、いずれも2年以内には解除されています。現在、指定されている品目はありません」と話す。つまり、ネットオークションでトイレットペーパーを転売しても違法ではない。
●施行から約50年、初めて適用される条文では、どのような状況であれば、この法律は適用されるのだろうか。
「物価全体が高騰して、物資の標準価格も上昇する恐れがあることがひとつの条件になっています。ただ、デフレのような現在の状況下では、標準価格が上がることはあまりないかと思われます」
しかし、安倍首相は北海道の市町村のために、この法律に基づき、マスクのメーカーからマスクを買い取ることを表明したと報道されている。トイレットペーパー同様、マスクは品目に指定されていないが、可能なのだろうか。
消費者庁の担当者によると、次の22条が適用されているという。
【22条 主務大臣は、特定の地域において生活関連物資等の供給が不足することにより当該地域の住民の生活の安定又は地域経済の円滑な運営が著しく阻害され又は阻害されるおそれがあり、当該地域における当該生活関連物資等の供給を緊急に増加する必要があると認めるときは、当該生活関連物資等の生産、輸入又は販売の事業を行う者に対し、売渡しをすべき期限及び数量、売渡先並びに売渡価格を定めて、当該生活関連物資等の売渡しをすべきことを指示することができる。】
担当者は、「22条は他の条文と異なり、品目を指定する必要はありません。今回であれば、厚生労働大臣によって、メーカーに売り渡すよう求めることになります。また、この条文が適用されるのは、今回が初めてです」と説明する。
●ヤフオク!やメルカリの転売ヤー対策は?しかし、マスクの高額転売はいまだ続いている。経産省は、ネットオークションの運営会社に対し、3月14日以降はマスクおよび消毒液の出品の自粛を求めている。
出品自粛について、ヤフオク!を運営するヤフージャパンは弁護士ドットコムニュースの取材に対し、「慎重に対応したい」とコメントしている(3月2日現在)。
また、ネットオークションではないが、やはり多くのマスクが出品されているフリマアプリのメルカリは、「経産省から2月27日に口頭で要請を受けております」と説明。
「内容については、『マスクが必要な人に広く届くようにするために、マスクを大量・高額で販売されているような方に対し、猶予期間を設け、より適正な価格で販売いただくような対応をしてほしい』というもので、マスクの出品を全面的に禁止するというものではありません。
弊社では要請を受ける以前から高額な出品を禁止する対応を行うなど、自主的にマスクの監視を強化しており、現状の対応について、経産省へもお伝えし理解をいただいております」と話している。
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