2020年2月20日、『デイメア:1998』の日本語版が登場。小さな町で発生した事件を主人公3人の視点から描くサバイバルホラーアクションだ。本作はあの『バイオハザード』シリーズより多大な影響を受けたインディー作品として、海外で注目を受けた。そのリスペクトがどのように反映されているのか、どんな恐怖を体験させてくれるのか。プレイリポートをお届けする。



文 / 板東篤

◆人間が変異する怪しい事件を3人の視点で体験

まずは本作開発の経緯から紹介しよう。本作の開発者たちは、趣味で『バイオハザード2』のリメイク作品を作成していた。しかしご存じのように本家カプコンより『バイオハザード RE:2』の開発が発表されたので、彼らのリメイク作品は開発中止。しかしその開発経験を活かし、新たなサバイバルホラー作品の開発に着手。それこそが、この『デイメア:1998』だ。このような開発経緯なので、『バイオハザード』っぽいゲームであることもうなずけるだろう。
ではゲーム内容について触れていこう。本作の舞台は、キーンサイトという山に囲まれた町。ある日突然、人々がモンスターへと変化する事件が勃発してしまう。この一連の出来事を、H.A.D.E.S.の特別捜査官リーヴヘリコプターパイロットのレイヴン、森林レンジャーのサミュエルという3人の視点で体験していくことになる。操作する主人公は、シナリオの進行に応じて切り替わるタイプだ。

ゲームシステムは三人称視点のシューター。左スティックで移動、右スティックで視点操作という一般的なTPSの操作形態を踏襲。アイテムを拾う、ドアを開けるなどのアクションはワンボタンで行え、全般的にシンプルな操作になっている。シューター系のゲームに慣れているならば、特に戸惑わずにプレイできるだろう。

しかし、銃器の弾薬システムだけは特徴的。本作にはいくつかの銃器が登場するが、ハンドガンサブマシンガンなどはリロード操作も2種類あり、取り出したマガジンを持ち物に入れる通常のリロードは少々時間がかかる。もうひとつのクイックリロードはす速くマガジンを交換できるが、銃に元々入っていたマガジンをその場に落としてしまうため、再利用したい場合はあとでまた拾わなければならない。

ここまでリアルにした理由は、おそらく戦闘中に弾薬切れを起こし、パニックとなる恐怖を演出したかったと思われる。戦闘中に弾を撃ちつくして“カチッ、カチッ”とトリガーを引く音だけが鳴り響く絶望感。映画でよく見るあのシーンを本作で体験させたかったのだろう。
たしかに緊張感は味わえるが、それよりも面倒くささが上回っている、というのが正直な感想。ショットガンなどマガジンが存在しない武器は銃に直接弾薬を装填できるため使いやすく、いざという場合はこちらを使ってしまえばなんとかなるのも中途半端に感じてしまう。

1990年代を感じる謎解きや設定の見せかた

物語イージス研究所で発生した事故から幕を開ける。肺呼吸で感染する腐食性ガスが放出され、人間を変異させているとの連絡があった。ひとりめの主人公リーヴは、この事件の対処を任された組織のひとり。施設に潜入し、このガスを回収する任務に当たることとなる。ちなみにこのときヘリコプターを操縦していたパイロットのひとりが、もうひとりの主人公レイヴンだ。
さて、件の事故はかなり深刻な状況の模様。研究所のあちこちには死体が転がり、車両が衝突して施設の一部が破損していたり、火事が発生している所もある。目的のガスが入ったボンベはすぐに発見できたが、ヘリコプターで回収するには建物の天井を開ける必要がある。というわけで、施設の探索を行うこととなる。

探索を行っていると、研究員のメモやレポートなどの資料が見つかる。この文章を通じて、施設で行われていた研究や研究員の日常などが断片的に伝わってくる。また、電気を復旧させるために発電機を正しく操作したり、机の引き出しを開くパスワードのヒントを部屋に飾られた絵画から見つけ出すなど、「ああ、初期の『バイオハザード』ってこんな感じだったなあ」と懐かしい気持ちになる。本作は世界設定をテキストで断片的に開示したり、目的地へ行くために解く謎解きがちょっと古めかしかったりと、かなり初期の『バイオハザード』風テイストになっている。

バトル面でも『バイオハザード』へのリスペクトが感じられる。まず銃の弾薬は入手機会が限られていて豊富とは言えず、撃ちまくっているとすぐ弾薬切れになってしまう。それを避けるため、弱い敵は威力が低いハンドガンで慎重にヘッドショットを狙い、ボスクラスには温存したショットガンで立ち向かうなど、先の戦いを見据えた戦略が求められる作りだ。「初期の『バイオハザード』も、こんな感じで戦っていたなあ」と同じくノスタルジーに浸れる。

◆“懐かしさ”を感じるサバイバルホラーを楽しもう

ホラー要素についても触れていきたい。多くのステージは真っ暗で、そこをライトで照らしながら探索していると何かが潜んでいるかもしれない恐怖はかなり感じられる。加えて、研究所や病院など不気味さを感じるステージが多く、探索のドキドキ感はかなり高い。純粋な恐怖はどの時代でもシンプルだ。

逆に、敵であるゾンビ的なモンスターはそこまでの恐怖を感じなかった。敵の耐久力が高いため、必然的に距離を取って戦いがち。動きは遅く、また広い場所での戦闘が多いことで、逃げるのが意外と簡単だからだ。そのせいか、“近づかれる恐怖”はそこまで感じられなかった。敵の攻撃範囲はけっこう広く、横をすり抜けて通ろうとすると攻撃を受けることが多々あったが、この場合は怖いよりも“ウザいなあ”という気持ちのほうが勝ってしまった。また、突然襲いかかられることも少なく、“ドッキリ”系の怖がらせかたもあまり多くない。

ただし、森林レンジャーのサミュエルを操作しているときは、かなり恐怖を感じた。彼はほかのふたりの主人公とは違って一般人のため、戦闘力が低いと思い込んでしまう(実際はほかの主人公と変わらないが)。また、彼のみまれに幻覚を見る持病を抱えており、探索中に敵が襲ってきて銃で撃ったら幻だった、みたいなシーンがよくある。道を歩いていたら急に首つり死体の幻覚と出くわすこともあり、プレイしてダントツの恐怖を感じた。

さて、プレイを振り返ってみると、本作は「昔の『バイオハザード』ってこんな感じで面白かったよね」というスタンスで作成されたゲームだと感じた。世界設定の見せかたやアイテム管理、謎解きの仕組みなどは往年の『バイオハザード』によく似ており、サバイバルホラーの恐怖に加えて、何度も述べたようにノスタルジーも感じられるような作りになっているワケだ。そのぶん、昨今のゲームで見られるような謎解きに関する答えスレスレのヒントなど、親切なシステムは採用していない。人によっては古く、また遊びにくく感じてしまうかもしれない。
ストーリーは、序盤と言えるチャプター1のラストから急展開。ネタバレを避けるため詳細は避けるが、衝撃を受けつつも納得できない運びとなり、リーヴに感情移入しにくくなってしまう。いったい何が起きているのか、そもそも端緒となったガス流出事件と関係があるのか? 謎を抱きつつ、衝撃のラストシーンを楽しんでいただきたい。
本作は「往年の名作を今風のシステムで遊びやすく甦らせた」わけではなく、「昔のゲームはこんなシステムで当時は楽しかったよね」という気持ちの元に作られている。元々が、『バイオハザード』のファンが『バイオハザード』っぽいゲームを作ったというスタンスなので仕方がないが、もうちょっとシステム面でオリジナリティが感じられる作りにしてほしかった。とはいえサバイバルホラーアクション好きは楽しめる作りになっているため、本家である『BIOHAZARD RE:3』がリリースされるまで本作を遊びつつ待つのもいいかもしれない。

(c) 2019 Destructive Creations and All in! Games / Developed by Invader Studios / Published by DMM GAMES

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掲載:M-ON! Press