assembly-684142_640_e

Bronisław Drożka from Pixabay

 それまで知らなかった言葉や物事など、何か新しいことを知ったら、それが急に身の回りに増え始めたような経験はあるだろうか?

 たとえば、新しい言葉を覚えたとしよう。そうしたら次の日、あなたの上司や先生がやたらとその言葉を使っているではないか。それどころか、今読んでいる本の中にまで書かれていた。一体どういうことなのか?

 この不思議な認知効果は「バーダー・マインホフ現象(Baader-Meinhof Phenomenon)」と呼ばれている。

 はたして、これは単なる偶然なのだろうか? それともきちんと合理的な説明ができる現象なのだろうか?

―あわせて読みたい―

なぜ人は無意識に人のマネをしてしまうのか?「カメレオン効果」についての考察
人間は偏見の塊である?理性的であることを妨げる12の認知バイアス
いったいなぜ?靴下の片方だけが行方不明になってしまう謎が科学者によって解き明かされる
詭弁、あら捜しなど、ネット上で良く見る書き込みはある法則に基づいていた。目からウロコの面白い10の法則・効果
マンデラ効果とは何か?不特定多数が「偽の記憶」を真実だと思い込んでしまう集団的な誤解

新たに知ったことに注意を向けやすくなるから

 スタンフォード大学の言語学アーノルド・ツウィッキー教授によると、バーダー・マインホフ現象は、より科学的には「頻度錯覚(frequency illusion)」と呼ぶべきなのだそうだ。

 私たちの日常には、とんでもない量の情報・思考・感情が待ち構えている。さすがの脳といえど、それらすべてを処理することは不可能なので、どこに注意を向けるべきか選ばなければならない。これを「選択的注視」という。

 私たちが何か新しいことを学習すると、この選択的注視が変化する。つまり、それまで無視していたことに以前よりも注意が向けられやすくなるのだ。

 これがバーダー・マインホフ現象の原因の1つだ。

iStock-1133385963_e

dorian2013/iStock

脳は自分の正しさを裏付ける情報を求めている


 もう1つの原因として、「確証バイアス」というものがある。

 これは、あることについて自分の正しさを裏付けてくれるような情報ばかりを、脳が積極的に探すために生じるバイアスのことだ。

 頻度錯覚の文脈でいうと、何か新しいことを学んだとき、この新しい情報が興味深いために、私たちはそればかりを探し求めるようになる。すると自然にその情報が目につくようになる。

the-background-931447_640_e

Bronisław Drożka from Pixabay /iStock

本当は元々あったことに目が向くようになっただけ


 こうして新しく覚えた情報をそこかしこで見聞きするようになると、脳はその理由を説明しようとする。そして、こう告げるのだ――きっとみんな同時に同じことを発見したに違いない、と。

 現実には、ただあなたが元々そこにあった情報へ注意を向けるようになっただけのことだ。発見したのは、あなた1人だ。

 選択的注視と確証バイアスのおかげで頻度錯覚が生じると、なんだか特別なことが起きているように思えてくる。しかし、ここで”錯覚”と呼んでいるように、これは究極的には脳の働きによって生じているに過ぎない。

 脳は世界が合理的に見えるようにパターンを探すのが大好きだ。一度、新しい情報を見つけたら、脳は引き続きそれを探し求め、そのために急に増えたと錯覚するようになる。

abstraction-668966_640_e

Bronisław Drożka from Pixabay

バーダー・マインホフの由来とは?


 バーダー・マインホフ現象の「バーダー・マインホフ」とは何か?それは、1970年代に爆破や放火、誘拐や暗殺といったテロ行為を行った西ドイツの極左民兵組織のことだ(日本では「ドイツ赤軍」や「西ドイツ赤軍」との名称が一般的)。

 1994年、アメリカのセントポール・ミネソタ・パイオニア・プレス紙のある解説者が、それまで聞いたこともなかったバーダー・マインホフという言葉を24時間で2度も耳にしたことがあったのだという。そこで、この奇妙な現象を「バーダー・マインホフ現象」と紹介した。

 この用語が世に広く知られるようになって、解説者も驚いたことだろう。だが2006年、ツウィッキー教授がより科学的に妥当な名称として、「頻度錯覚」という用語を考案した。

バーダー・マインホフ現象のビジネスへの応用

 なお頻度錯覚は、ビジネスの世界で心理学を利用したマーケティング戦略としても利用されている。製品やサービスを人の心に根付かせ、それをずっと考えさせ続けることで、狙い通りの結果を得るやり方だ。

 つかみとして、印象的なイメージやタイトルなどが使われる。こうしてターゲット層の気を引いたら、あの手この手でそのメッセージを送り続ける。

 すると、その人たちは、製品やサービスがやたらと目に付くようになったことには何か特別な理由があるに違いないと思い込むようになる。そうなったらシメたものだ。

 ただし、この戦略を採用しようか検討している会社は気をつけることだ。ターゲット広告を繰り返し流した結果、特別なものと思われるどころか、かえって気味悪がられる恐れもあるからだ。

References:Baader-Meinhof Phenomenon: a Curious Cognitive Effect – Learning Mind/ written by hiroching / edited by parumo

全文をカラパイアで読む:
http://karapaia.com/archives/52288468.html
 

こちらもオススメ!

―人類についての記事―

紫外線の熱で感染を防ぐ。新型コロナウイルスを撃退するボディシールドが設計される(中国)
娘を失ったばかりの男性、ピザ配達先で小さな男の子に抱きしめられ心を震わせる(アメリカ)
パンケーキに指名手配犯の顔をプリントしたイギリス警察。多くの人に知ってもらえるように
笑うしかない放送事故。天気予報の生放送中、レポーターに面白フィルターマスクがかかるハプニング発生(アメリカ)
本当に賢い人が身につけてる4つの心理的スキル

―料理・健康・暮らしについての記事―

糖尿病患者に希望。人間の幹細胞を使ってマウスの糖尿病を機能的に治療することに成功(米研究)
スコットランドで、生理用品を全ての女性に無料で提供する法案が承認される
出どころ不明の異臭が地域全体に広がるミステリーが発生中(アメリカ)
本当に賢い人が身につけてる4つの心理的スキル
桃色のトキメキ。オーブンいらず、簡単おいしい「ストロベリーレアチーズケーキ」のレシピ【ネトメシ】
一度知ると、その後やたらそれを見たり聞いたりする気がするのは偶然?奇妙な認知効果「バーダー・マインホフ現象」