3月3日に行われた民主党大統領候補選びの予備選は大方の予想に反してジョー・バイデン前副大統領が圧勝した。
最終的な選挙結果が判明するには若干時間がかかる。最新の開票結果は、時時刻刻と最新情報を流している以下のURLでフォローしていただきたい。AP通信社がまとめたものである。
(https://www.washingtontimes.com/elections/map-live-primary-results/2020-presidential-super-tuesday/)
「民主党員は2016年より頭が良い」
2月3日、14州で一斉に行われた米民主党大統領候補を決める予備選で「中道派連合」代表となったジョー・バイデン前副大統領が、左派のバーニー・サンダース上院議員を抑えて完勝した。
(大富豪のマイク・ブルームバーグ元ニューヨーク市長も自称中道派といっているが、予備選では「新参者」だ)
3月4日午前6時現在(西部時間、日本時間4日午後11時現在)、14州のうちバイデン氏は10州でサンダース氏を破っている。
サンダース氏は地元バーモント州とコロラド州、ユタ州を抑えるにとどまっている。
メーン州では接戦が続き、大票田のカリフォルニア州ではサンダース氏が勝利した。
自信に満ちあふれていたサンダース氏にとっては予備選始まって以来の屈辱の日となった。
筆者と一緒にCNNの開票速報を見ていた隣人で、民主党カリフォルニア州支部の元幹部H氏は皮肉交じりにこうコメントした。
「一番がっかりしたのはドナルド・トランプ氏だろうね」
「あの手この手でサンダース氏を支援してきたロシアのウラジーミル・プーチン大統領もバイデン勝利にがっくりしているんじゃないだろうか」
「ロシアは今回も大統領選に介在しているとの米情報機関が公表している『陰謀説』を信じる米国市民は少なくない」
「トランプ氏はサンダース候補なら勝てると踏んでいた。本命バイデン氏の登場は嫌だろうね」
「プーチン氏はサンダース民主党大統領候補で米政治が混乱するのを望んでいる。バイデン氏が大統領になるのは嫌だろう」
バイデン支持に回った民主党員
スーパー・チューズデー1週間前の各種世論調査では、サンダース氏が楽勝すると予測されていた。
2月29日のサウスカロライナ州予備選でバイデン氏は圧勝した。それまで連敗続きのバイデン氏はこれで首の皮一枚繋がった。
その後2、3日の間に多くの民主党支持者たちはバイデン支持に回ったようだ。
背景にあるのは、同じ中道派のピート・ブティジェッジ前サウスベンド(インディアナ州)市長とエイミー・クロバッチャー上院議員の自主的な戦線離脱だった。
離脱後両者はバイデン支持を表明した。バイデン氏の集会にわざわざ出向いて支持を表明したのだ。
この動きにそれまでどの候補にするか決めかねていた支持者はバイデン支持を決めたのだ。
バイデン蘇生の要因は3つある。
一、若者(特に大学生)を中心に吹き荒れたサンダース旋風は瞬間風速は凄かったが、やはり他の年代層には浸透し切れなかった。
草木は吹き飛ばしても大木を倒すまでには至らなかったということ。
出口調査では、カリフォルニア州の若者層の半数以上がサンダース氏に投票したが、中高年層は「筋金入りのソーシャリスト(実は社会主義者ではなく、民主社会主義者)・サンダース」を受け入れようとしなかったことだ。
二、予備選で勝利するのは、ブルームバーグ氏のように選挙広告に巨額の金をつぎ込んだだけではダメだったということ。
ブルームバーグ氏はスーパーチューズデーの14州のうち11州で何と9200万ドルを投入していた。
史上最大の選挙資金を使っても、大統領選、予備選はカネで決まらない。つまり米大統領選は金権選挙ではなかったということだ。
バイデン氏はほとんど選挙キャンペーンをやらなかったバージニア州やマサチューセッツ州、ミネソタ州でもトップに立ったのがその証拠だ。
三、民主党支持者の間にやっとトランプ打倒への真剣味が出てきたことだ。
サンダース氏が唱える社会格差是正もよし、公立大学学費無償も若者たちにはありがたいことだ。
しかし、新型コロナウイルスが米本土に侵入、感染が拡大する天災が起きた場合、「理想論」を滔々と歌い上げるサンダース氏のようなビジョナリー(理想主義者)に政治は任せておけないことに各州の民主党支持者が気づいたのだ。
もう一つつけ加えれば、スーパーチューズデーの南部州、アラバマ、テネシーなどは黒人が多く居住する州だ。
黒人指導者たちはバイデン支持を支持者たちに熱心に説き、黒人支持者の大多数がバイデン氏に投票したこともバイデン勝利の重要な要因だ。
バイデン獲得代議員数は現在453人
まだカリフォルニア、メーン各州の代議員獲得数は含まれていないが、現時点でのバイデン、サンダース、ブルームバーグ各氏の代議員*1、獲得数は以下の通りだ。
バイデン氏 453人
サンダース氏 382人
ブルームバーグ氏 44人
*1=スーパーチューズデー14州の代議員総数は1617人。カリフォルニア州は415人、テキサス州は228人。
民主党の代議員制度は以下の通り。
代議員には2種類ある。特定候補への支持を約束する一般代議員(Pledged Delegates)と特定候補への支持を約束しない特別代議員(Automatic Delegates/Super Delegates)とがある。
前者は選挙区ごとの代議員2591人、州全区代議員898人、州党幹部・公選で選ばれた議員490人からなる。
一方、特別代議員は民主党全国委員会メンバー445人、上下両院議員280人、党執行部メンバー22人からなる。
新型ウイルス退治にサンダース不向き
すでに触れたが、バイデン氏の蘇りを助けたのはそれまで中道票を取り合っていたブティジェッジ氏とクロバッチャー氏の離脱だ。
その背後には民主党主流派に広がるサンダース指名阻止の動きがあったとみられる。
見返りは何か。すでにブティジェッジ氏はバイデン政権では国連大使を約束されているといった憶測も出ている。
ベテラン上院議員のクロバッチャー氏はさしあたり主要閣僚指名か。
新型コロナウイルス禍が米本土にも「到来」もバイデン蘇生の遠因になったと指摘する向きもある。新型ウイルスは、ワシントン州で死者まで出した。
「民主党は後手後手に回るトランプ政権を厳しく批判している。こうした予期せぬ天災に民主党政権ならどうするのか」
「サンダース氏では頼りない。副大統領として国政を取り仕切ってきた経験豊かなバイデン氏の方が安心できる。大統領というものはプラグマティストでなければならない」
麻疹のようなサンダース旋風よりもカネ、カネ、カネの金権大富豪、ブルームバーグ氏よりも「実績のバイデン」に支持者の票は殺到したのだろう。
1週間後の3月10日には、ミシガン州、ワシントン州など6州で予備選が行われる。次なる戦場でバイデン氏はサンダース氏の巻き返しにどう出るのか。
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