株式会社ミクシィは2020年2月29日、東京・お台場ユナイテッド・シネマ アクアシティにてeスポーツ競技イベント「モンスト プロツアー 2019-2020」の決勝戦を開催した。本大会は、スマートフォン向けゲームアプリ『モンスターストライク』(以下『モンスト』)のプロチームが参戦する賞金制トーナメント。決勝戦では2019年11月の第1戦(東京大会)を皮切りに、計7戦を経て獲得ポイント上位にランクインした4チームが舞台に集結。賞金1,230万円と1位の名誉をかけた戦いを繰り広げた。そこで本稿では当日の試合模様にフォーカスし、約4ヶ月におよぶ激戦を潜り抜けたプロチームの戦いをレポート形式でお届けする。

取材・文 /
龍田優貴

なお本大会を含め、競技シーンでは『モンスト』の派生タイトル『モンスターストライク スタジアム』を使用。あらかじめ暫定モンスターを登録しておき、試合の場において対決チーム同士が使用モンスターをピック(選択)してパーティーを編成。その後、どちらのチームが先にボスを倒せるか競う形でステージを攻略していく。

◆緊張感に包まれた無観客試合の会場

試合の内容を振り返るまえに、まずは今大会がこれまでのものと様相が異なる点に言及しておきたい。というのも、世界規模で感染が拡大しているコロナウイルスの影響を考慮し、決勝戦は一般客を一切入れない”無観客試合”となったからだ。この傾向はeスポーツ関連だけでなく、各方面のイベントでも無観客で行われているものもあるが、やはり応援席にほとんど人のいない会場内はどこか異質な緊張感に包まれていた。

とはいえ、無観客試合だから迫力や趣がまったくなかったわけではない。筆者は過去に幾つかのeスポーツ大会を取材してきたが、そのどれに無いも感覚を「モンスト プロツアー 2019-2020」で味わうことになったからだ。

普段は歓声にかき消されているであろう環境音。関係者たちの囁き。自分自身で身を奮い立たせる選手たちの掛け声と、彼らの緊張した表情。確かに独特な雰囲気こそ漂っていたものの、そうした憂慮は一切無用だった。いつもと違う環境下でやや不安げな面構えの選手たちも、試合が始まるやいなや、モニター越しに眺める観客を震わせるような熱いバトルを披露してくれた。

◆第1試合:アラブルズ vs GV

最初に火蓋を切ったのは、プロツアー獲得ポイントラインキング1位の「アラブルズ」と同ランキング2位の「GV」。ここで勝てばいきなり最終戦まで駆け上がれるという局面を前に、『モンスト』プロシーンにおいて高い実力を備える猛者同士の勝負が幕を開けた。

貫通モンスターを主軸に編成したGVと、反射モンスターで固めたアラブルズ。チーム編成の時点で極端に別れた両チームの戦いは、序盤から動乱する。貫通パーティーが有利に思われた第1ラウンドだが、GV側のミスを見逃さないアラブルズが危うげなく先着フィニッシュ。

巻き返しを図りたいGVは第2ラウンド、正確無比なショットを連発してアラブルズを大きく突き放す。しかしキャラクターピックで相手に先手を打たれたのが災いしたのか、終盤のボス戦でライフが無くなりあえなくダウン。2ラウンドを取得したアラブルズが一足早く最終戦へ歩を進めた。

◆第2試合:【華】獣神亭一門 vs 今池壁ドンズα

続く第2戦の対戦カードは「【華)獣神亭一門」vs「今池壁ドンズα」。昨年度のプロツアーファイナルで果たせなかった決勝進出の夢を叶えた前者に対し、2018年度のツアーファイナルで王座に輝いた後者。試合まえのコメントで意気込みを語る両チームのリーダーからは、「絶対に負けられない」といった気迫が充分に感じられた。

第1ラウンドのステージは、1試合目と同じ”天海の双竜”。序盤からショットミスが頻発するも、アラブルズと同じく貫通モンスターを多めに採用した今池壁ドンズαが先にクリア。第2ラウンドの”天使を狩りし暴魔の刃”では、【華】獣神亭一門も負けじとばかりに相性の良いキャラクターを次々と奪取。先のラウンドとは違い、ミスもなく確実にステージを攻略していく。

ところが今池壁ドンズαの実力が相手を上回ったのか、単純なスピード勝負で【華】獣神亭一門としっかり差を詰める。最後は今池壁ドンズαがポイントランキング4位というハンデを跳ね返し、ラウンドを1つも落とすことなく試合を制した。

◆第3試合:GV vs 今池壁ドンズα

ツアーファイナルに進んだ4チームのうち、ポイントランキング3位の【華】獣神亭一門が涙をのむことに。だがこの場は『モンスト』No.1を決める大会。”最強の座を掴めるのは限られたチームのみ”という大前提のもと、各々が厳しい現実を受け入れていたように思う。

そんな中で試合は盛り上がりつつも粛々と進行する。決勝進出チームを明らかになる準決勝の場に立ったのは、第1試合でアラブルズに後塵を拝したGVと、第2試合の勝者である今池壁ドンズα。奇しくも去年のツアーファイナルと同じ対戦カードが組まれることになった。その様子を見たとし選手が「今年は今池壁ドンズと試合せずに優勝しても意味がないので、やっとリベンジできるかなと思っています」と話せば、なんとかキララEL選手も「怖いやつ潰して優勝します!」と元気に返す。ここに2018年の年末以来となる名勝負が実現した。

準決勝の第1ラウンドは、『モンスト』のコミュニティにおいても知名度の高い”森羅万象の特異点”。比較的ベーシックなステージ構成だが、やはりモンスターの配置や友情コンボの作動率によってクリアタイムが変動しかねない難所である。どちらのチームも卓越した手腕で攻略を進めていたが、ここは”剛勇なる噴炎の女戦士 スキッティ”をピックしたGVが押し切って先にゴール。試合を解説していたキャスター陣からも「『モンスト』が上手いですね!」と感嘆していた。

早々に追い詰められてしまった今池壁ドンズだが、第2ラウンド”光鉄の重機少女”が始まるやいなや、序盤をわずか5手で突破。敵の数が多く危険なステージの最中、攻めの姿勢を崩さす駒を詰めていく。しかし第1ラウンドを取ったGVが猛進。両チームがボスへ到達後、残り体力あと数ミリという大接戦に突入するも、ラストは逆転勝利という形でGVが見事に制覇。今池壁ドンズαの目指した連覇の夢は、ここで惜しくも潰えた。

◆決勝戦:アラブルズ vs GV

1チーム、また1チームと倒れていったプロツアーファイナルもいよいよ終幕へ。眼前に広がる名誉と賞金を掴まんとばかりに、アラブルズとGVが火花を散らす。決勝戦はこれまでの試合と違い、2ラウンドではなく3ラウンド先取したチームの優勝となる。つまり試合数が多く長丁場は避けられない。選手にとって得意なステージがあれば、場合によって不得意なステージも出てくるため、今まで以上に対応力が求められる局面だ。

この大勝負を控えたアラブルズのリーダー・KEVIN選手は「俺らが勝ちたいです! 優勝したいです!」と決意表明。相対するGVのとし選手も「応援団たちのために頑張りたいと思っています」とはっきり語る。試合に臨む選手と解説者、モニター越しに配信を見ているであろう視聴者、筆者を含め取材に来ていたプレス陣の視線が一斉に向けられる中、ついにツアーファイナル最終戦が厳かに始動した。

実際に試合を見届けた筆者の所感を述べると、最終戦は見ているこっち側も想像以上に緊張する一戦だった。あえて肩入れするわけではないが、アラブルズの突破力が凄まじかったのかもしれない。充分な勝率を誇っていたGVの得意ステージを第1ラウンドで奪い、第2ラウンドを滑らかに20手で終える。本格的なチーム結成以降に大きな優勝経験の無かったアラブルズは、ツアーファイナル優勝に向けてリーチをかけた。

かくして壇上に上がった選手の運命の分かれ道となった第3ラウンド”翠撃の隊士”。本ステージはボスや雑魚モンスターの耐久力が高く、各所に置かれたパワーアップパネルを的確に踏んで攻撃力を上げる必要がある。ゆえにパネルを踏むルートが重要なため、各選手のルート把握能力、並びにアドリブ力が問われることとなった。

この試合における究極のハイライト。それはボス登場後の”ストライクショット(SS)対決”だ。ステージ最終盤で門番の如く待ち構える永倉新八を打ち倒すべく、アラブルズとGVが同じタイミングでSSを発動。先に撃ったのはアラブルズのモンスターがボスへ直撃するも、あと数ミリの体力を削れす。そこへ畳み掛けるようにGVもSSをボスへ叩き込み、体力を3分の1以下まで大きく減らす。さて、どちらが先に倒すかと思われた瞬間、Ritoはん選手のモンスターがボスの弱点を友情コンボで貫いた。時間にしてわずか数秒。一世一代の駆け引きの末にアラブルズの勝利が確定した。

2018年にJeSU(日本eスポーツ連合)から正式なプロライセンスを付与されたのち、一心不乱に『モンスト』の競技シーンに挑んできたであろうアラブルズの面々。彼らは自分たちの勝利が決まったと確信すると、ヘッドフォンを外し、両腕を高く上げながら雄叫び、感極まるあまりに涙を流していた。

試合終了後にコメントを求められたKEVIN選手は、「なんでしょうね、言うことが……。嬉しいっす。本当に嬉しいっす!」と率直な思いをつぶやき、チームメンバー全員で賞金1,230万円と優勝トロフィーを受け取った。筆者は仕事という名目上で取材に立ち会ったライターに過ぎないが、それでも『モンスト』に全身全霊で挑むプロチームの姿勢をみるうち、自然と心中が熱くなったのを覚えている。

アラブルズ、GV、【華】獣神亭一門、今池壁ドンズα。参戦した4チーム全てが輝いて見えた。願わくば無観客ではなく、次は大勢のファンが集う大規模なオフライン大会の場で様々なプロチームを目に焼き付けたい。そしてその光景をしっかりと取材したい!と想いを明かしたところで、本レポ-トの擱筆とさせていただく。

(c)XFLAG

無冠の帝王”がついに栄光を手中へ!計12チームの4ヶ月間に及ぶ激闘を締めくくった「モンスト プロツアー2019-2020」ファイナル観戦レポートは、WHAT's IN? tokyoへ。
(WHAT's IN? tokyo)

掲載:M-ON! Press