新型コロナウイルスの影響により、顧客対応時のマスク着用率が一気に上がりました。従来は仕事中に他の人と話す際、マスクを外して話す人もいましたが、今日では、「他の人と話すときこそマスクをすべきだ」と考える人が多くなったように思います。「相手に感染させない」「相手から感染させられない」という安全衛生上の配慮の高まりといえるでしょう。

 しかし、マスクを着用した人同士で、話を聞き返す場面が頻繁に見られるようになりました。「自分のマスク越しの声が相手に聞き取ってもらえない」「相手のマスク越しの声が聞き取りづらい」というわけです。

息を吐きながらだと声量アップ

 筆者は、マスクを着用したまま表現力を高める演習プログラムを実施していますが、演習内での計測では、マスクをしない普通の声量が60デシベルだった人が、マスクをして同じように話すと40デシベルでした。40デシベルというのは、ささやき声とだいたい同じレベルですので、聞き返さなければならないのも無理はありません。

 マスクをしたままでもマスクをしないときと同様、聞き返されない表現力を身に付ける方法はあるのでしょうか。このように申し上げると、「大きな声を張り上げるしかないだろう」と言われることが多いのですが、実は演習を繰り返す中で、効果の上がる6つの方法があることが分かってきました。それも数回、反復演習すると、誰でも身に付けることができる方法なのです。

 1つ目の方法は、呼吸の仕方です。発生する前に息を吸い込んでから、発声する際に息を吐き出しながら話す方法です。これで声量が上がります。

 2つ目の方法は、発声の際の口の動きです。マスクを着用したままでも、相手が聞き取りやすい発声をしている人は、次のような口の動きをしていることが分かりました。

「あ」行の発音をする際に、顎を下げる
「い」行の発音をする際に、口角を上げる
「う」行の発音をする際に、唇をすぼめる
「え」行の発音をする際に、舌を引く
「お」行の発音をする際に、舌を下前歯裏に付ける

 声量が変わらなくても発音が明確になり、相手が聞き取りやすい発音になります。

 3つ目の方法は、アイコンタクトの秒数です。相手の目を見続けるアイコンタクトの秒数ですが、マスクを着用しない場合、相手から見て心地よいのは2、3秒だと答える演習参加者が多いです。しかし、マスクを着用した場合、少し長めの5、6秒でも抵抗感を与えません。

 ただ、それ以上長くなると、にらみつけられているような印象を、マスクを着用しないときよりも与えやすくなってしまうので要注意です。

 4つ目の方法は、アイコンタクトを外す方向です。アイコンタクトを、うなずくように下にはずすと相手を引き付けやすくなります。マスクを着用したときは、うなずきの効果が高まります。

 このとき、相手を見たまま顔だけでうなずくと上目遣いになってしまいます。マスクを着用した状態では、上目遣いが強調されてぎょろ目になってしまうので、顔を目の動きに合わせてうなずくことが大事です。

 5つ目の方法は、句点「。」の場所でアイコンタクトを外す方法です。そうすることで、1フレーズ話すたびに「間」ができます。その「間」のあいだに、フレーズで話した内容について相手に反すうしてもらい、理解を促すことができます。

 6つ目の方法は、読点「、」の場所でアイコンタクトを外す方法です。その「間」のあいだに、次に話す内容について相手の期待を促すことができます。

 演習参加者からは、「これまで考えたことはなかった」「単純なスキルなので使いやすい」「実施してみると確かに効果がある」というフィードバックを頂いています。試してみていただければと思います。

モチベーションファクター代表取締役 山口博

マスク着用中に意識すべきことは?