「なぜ彼はこんなに堂々と否定できるのか?」

 法廷内のほとんどの人々に違和感を抱かせるのは、千葉県野田市で栗原心愛(みあ)ちゃん(当時10)を虐待死させたとして起訴された、父親の勇一郎被告(42)だ。2月21日からの千葉地裁の裁判員裁判で、虐待を示す数々の証言に抗っている。

 勇一郎は傷害致死罪を「争わない」としながらも、冷水を浴びせたり床に打ち付けたりといった多くの暴行を否定。一方で入退廷の際には深々と頭を下げるなど、反省の態度を見せている。

「検察官が苛立ちを見せながら『誰のために頭を下げているのか』と問うと、『心愛のためです』と。さらに『本当に謝罪するつもりがあるのか』と迫ると『あります』と答えていた。それでいて、心愛ちゃんが『お父さんにぼう力を受けています』と書いた小学校アンケートは『心愛が嘘をついたと思う』と強弁するのです」(全国紙記者)

 証人として虐待内容を説明した勇一郎の妻や妹、児相職員らの証言も否定。

「学校の教諭らに『保護が解除されたのは暴力がないという証だろう』などと威圧的に迫ったことも明かされましたが、モンスターペアレントとの認識は『ない』という。自分をあくまでもかばう発言に、誰もが呆れていました」(同前)

 3月6日の最後の被告人質問では、6人いる裁判員のうち5人が「心愛さんに何を謝りたいのか」「あなたは証人から陥れられているということか」と首をかしげながら問いただした。「どうすれば亡くならなかったと思うか」という質問には「私の実家にいれば、こんなことにはならなかったかも」などと答えていた。

裁判長の最後の質問に勇一郎は胸を張り……

「勇一郎が涙する姿に、検察官が『泣くところではない』と突っ込む場面もあった。裁判長が最後の質問で『あなたの話はイメージがつかないようなところがある。本当のことを話しているんですか』と尋ねると、勇一郎は胸を張るようにして『話しています』と主張していた」(前出・記者)

 同日は児相などの対応を検証していた県の第三者委員会の委員長も傍聴。閉廷後、「様々な証言を、自ら否定する形を最後まで貫いた。大変な人だな」と感想を述べ、こうした親にどう対応するかを課題に挙げた。

 判決の見通しについて、司法関係者が語る。

「弁護側は日常的に暴行していた訳じゃないとしていますが、証人と被告の証言のズレは埋まらず、心証はよくない。裁判員裁判では虐待は厳しく罰せられる傾向にあり、18年の目黒女児虐待事件と同様、10年以上の実刑と思われます」

 判決は3月19日に言い渡される予定だ。

(「週刊文春」編集部/週刊文春 2020年3月19日号)

2019年1月26日、送検される勇一郎被告 ©共同通信社