世界保健機関(WHO)のテドロス事務局長は、武漢肺炎COVID-19)の情報隠ぺいを行う中国当局を露骨に擁護しているとして、欧米メディアから批判を受けている。中国政府系メディアはこのほど、同事務局長への支持を訴える評論記事を掲載した一方で、同氏が本国エチオピアの外相を務めた頃、中国側が同国に1兆円以上の融資を行ったと明かした。

中国共産党機関紙・人民日報系の「環球時報」は3月12日、「テドロス氏を守ろう!氏は中国支持で西側から激しく攻撃されている」と題する評論記事を発表した。記事は、テドロス事務局長の下で「WHOは独立性を失い、同機構への不信感が高まった」との海外メディアの報道をを紹介した。

記事によると、テドロス氏の批判者は同氏を「WHOにいる小粉紅(ピンクちゃん、共産主義思想に染まった若者、または愛国者)」と呼び、「テドロス氏は共産党員になるべきだ」とした。

「「テドロス氏を守ろう!」と中国紙が評論記事を掲載した。(微博)

環球時報は、テドロス氏とWHOが中国当局から金銭的支援を受けたため、武漢肺炎をめぐって中国当局に肩入れしたとの海外メディアの主張を否定した。

その一方で、同紙は、中国当局が3月9日、WHOに対して2000万ドル(約21億円)を寄付すると決定したことや、「2015年以降、中国がWHOへの拠出金が50%以上増えた」と強調した。また、2005年から2016年まで、テドロス氏がエチオピアの保健相や外相の在任中、同国は「中国から130億ドル(約1兆3873億円)以上の融資を受けた」と言及した。

1月に入ってから、中国では武漢肺炎感染者が急増し、武漢市政府が同月23日都市封鎖措置を実施したにもかかわらず、WHOが「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」の宣言を複数回見送った。1月30日になって、初めて同宣言に踏み切った。しかし、テドロス事務局長は同日、ジュネーブでの記者会見で、「不必要な人やモノの移動を制限する理由はない」とし、感染地への渡航や貿易を制限する勧告を行わないと述べた。

しかし、中国当局からの寄付を受けた直後、テドロス事務局長は3月11日、「新型コロナウイルスパンデミックと言える」との認識を示した。さらに、同氏は13日、感染者が急増している欧州などについて「今やヨーロッパが、ウイルスが世界的に大流行するパンデミック震源地になった」と述べ、震源地が中国ではないという中国側の主張に合わせた。

在米中国経済学者の何清漣氏はこのほど、豪メディア「SBS」中国語電子版に寄稿した。何氏は、テドロス氏が2016年、中国当局の強い支持を受け、WHO事務局長に選ばれたと指摘した。同氏が翌年の2017年に中国を訪問した際、中国当局はWHOに2000万ドル(約21億円)の寄付金を提供したという。

何清漣氏は「パンデミックを宣言したテドロス氏は、中国が機嫌を損ねるのが恐れ、人々の怒りの矛先が中国当局に向かわないように、今も当局の感染防止対策を称賛し続けている」とした。

同氏は、テドロス氏が中国当局に媚びることで、「多くの国では感染防止対策が遅れ、世界的なまん延を招いた」と強く非難した。

(翻訳編集・張哲)

 

2020年1月28日、WHOのテドロス事務局長(左)が中国を訪問し、北京で習近平国家主席(右)と会談した(Getty Images)