「教えて!goo ウォッチ」で以前に「喪服の色は昔から黒だと思ったら大間違い!喪服の色の歴史」という記事を取り上げた。内容はタイトル通り、喪服が黒となったのは実は最近で、その前は白、その前は薄い灰色だったと触れている。

思い込みは時として恐ろしい。何の疑問を持たずにそれが正しいと錯覚する。そして葬儀業界には、実はこのような誤った思い込みというのがかなり多く存在している。そこで今回は葬儀業界の風習や習わしについて誤った思い込みを紹介していく。

■「遺骨が大切」は思い込み?!

葬儀業界の誤った認識を集める上で、取材をしてきたのは心に残る家族葬という葬儀のサービスを全国で展開している葬儀アドバイザーだ。

(1)骨揚げの儀式は火葬技術の向上によって誕生した?!

「骨揚げは古くから伝わる儀式だと思っている方が多いのですが、そもそも土葬時代は有り得なかった儀礼です。そして火葬が主流となった後でも、お骨を良い状態で遺す程度に火葬する技術がなければ骨揚げすら叶いませんので、骨揚げの定着は火葬技術の向上によるところが大きいと言われており、そうなると割と最近のことということになります」(葬儀アドバイザー)

(2)遺骨の中で喉仏が大事とされるようになったのは割と最近

「そもそも『遺骨を大事にする』という考え方は古くからあるものではありません。事実、遺骨は保管せずに散骨するという習わしの地域も少なくありませんでした。そして遺骨の中でも大事とされていたのは頭部だったという説も残っています。仏様に似ているという理由で喉仏が大事にされるようになってきたのは、上述したとおり火葬の一般化と火葬技術の向上後であるという説があります」(葬儀アドバイザー)

史実として正しいかはさておき、論理的であるがゆえ、一定の説得力を感じることはできる。

■遺体の顔にかぶせる白い布の思い込みと死者への尊厳

遺骨の次は遺体に関する思い込みを聞いてみた。

(3)遺体の顔を隠す白い布は何のため?隠すため?

「白い布は『覆い打ち』といいます。これは死者の尊厳を守ることが目的だとされがちですが、本来は万一蘇生した時に呼吸などでそれがわかるようにするために生まれました。昔は今ほど生死の確認技術が高くなかったようなので」(葬儀アドバイザー)

(4)瞼をそっと閉じる行為の誤解

「映画やドラマで見かける死者の瞼をそっと閉じる行為も死者の尊厳を守るためとされています。しかし死因が明らかでなければ、遺体に触れるという行為は衛生上おすすめできないとされています」(葬儀アドバイザー)

■死を取り扱う葬儀業界

覆い打ちが生存確認のためであるとか、目を閉じる行為が時として不衛生であるなど、確かにそれはそれで理解できる。しかし人は亡くなった瞬間から腐敗が始まる。事故死の場合は、五体満足というわけにもいかないだろう。

そのような遺体の視覚的な情報を遮断せずにありのままを晒してしまっては、冥福を祈るような気持ちには到底なれない。むしろ目も当てられない、その場から立ち去りたくなるほどに嫌悪感を抱くかもしれない。

今回取材を通して、御巣鷹山での日航機墜落事故をふと思い出した。事故直後の現場は、ここで書くことが憚られるほどに凄惨で、最後まで奮闘した機長の遺体はいまだに見つかっておらず、確認されているのは歯だけだという。

葬儀業界では死を取り扱う。死者の尊厳を守ることと、残された人がその死に真摯に向き合う場を提供することが求められる。その行為に合理性や論理性がなかったとしても、それが死を正常に取り扱うことに悪影響を与えるのならば、多少その目的を変えたとしても、大きな差支えがあるようには思えない。つまりそういった目的を都度修正してきたことが、葬儀業界に残る誤った思い込みを生んできたのかもしれない。

●専門家プロフィール:心に残る家族葬 葬儀アドバイザー
火葬料も含まれた追加費用のかからない格安な家族葬を税込み14万3000円から全国で執り行っている。24時間365日受け付けており、寺院の手配や葬儀後の各種手続きなどのアフタフォローにも対応。

ライター o4o7

教えて!goo スタッフ(Oshiete Staff)

割と最近できたのになぜか大昔からあったと錯覚されがちな葬儀業界の風習