例年、年末から年明けにかけてエンタメ業界で大きな盛り上がりをみせるのが、1年間の優れた作品やスタッフを顕彰するアワード、賞レースだ。これはアニメでも当てはまるだろう。では2019年はどんなアニメがアワードに輝いたのだろうか。3月になり主要アワードの結果も出揃ったのに合わせて、19年の各アワードの受賞作品をまとめてみた。
 アニメには多くの賞があるように見えるが、実際はアニメ映画テレビアニメを対象としたアワードは意外に少ない。ここでは主要なアワードとして「日本アカデミー賞」「東京アニメワードフェスティバル」「毎日映画コンクール」「報知新聞映画賞」、国内外の作品から選ぶ「文化庁メディア芸術祭」、ファン投票の「ニュータイプアニメワード」、海外で実施される「クランチロールアニメワード」も含めた。

2019年作品のアニメワード受賞作品 】
第43回日本アカデミー 最優秀アニメーション作品賞
天気の子
東京アニメワードフェスティバル2020 アニメ・オブ・ザ・イヤー グランプリ 劇場映画部門
天気の子
東京アニメワードフェスティバル2020 アニメ・オブ・ザ・イヤー グランプリ テレビ部門
鬼滅の刃
第72回毎日映画コンクール アニメーション映画
「海獣の子供」
第72回毎日映画コンクール 大藤信郎賞
「ある日本の絵描き少年」
第44回報知新聞映画賞
天気の子
第23回文化庁メディア芸術祭 アニメーション部門大賞
「海獣の子供」
第9回ニュータイプアニメワード 作品賞(劇場上映作品)
プロメア
第9回ニュータイプアニメワード 作品賞(TV放送&配信作品)
鬼滅の刃
クランチロールアニメワード2020 アニメ・オブ・ザ・イヤー
鬼滅の刃
*文化庁メディア芸術祭2018年10月6日~19年10月4日が対象
*ニュータイプアニメワード2018年7月~19年6月が対象
*クランチロールアニメワード2019年1~12月に米国でリリースされた日本アニメが対象

2019年の大きな話題は、やはり新海誠監督の「天気の子」の強さだろう。空前の大ヒットとなった2016年の「君の名は。」後の次回作として注目を浴びたが、140億円を超える興行収入でこれに応えた。日本アカデミー最優秀アニメーション作品賞、東京アニメワードフェスティバル劇場映画部門グランプリ、報知新聞映画賞を獲得し、作品評価も高かった。米国アカデミー賞の国際長編映画賞の日本代表にも選ばれている。
 海外でも第13回アジア太平洋映画賞最優秀アニメーション賞、Animation is Film映画祭観客賞、アニー賞最優秀長編映画(インディーズ)ノミネートと話題なった。2019年アニメ映画賞で最も存在感を放った作品である。

もうひとつ特筆すべきなのは、「海獣の子供」の大健闘だ。五十嵐大介のマンガを原作に渡辺歩監督のもとSTUDIO 4℃がアニメーション制作を担当した作品だ。制作期間も通常以上に長かった本作は、見る者を超絶な映像に引きずり込み堪能させた。
 興行成績は振るわなかったが、第72回毎日映画コンクール アニメーション映画賞、第23回文化庁メディア芸術祭 アニメーション部門大賞と2つで「天気の子」を抑えて大きなアワードに輝いた。アート的な側面も高く評価されたと言っていい。ただ手描きアニメの高度な技が注目されがちな「海獣の子供」だが、CG作品を対象とするVFX-JAPANワード2020でも劇場公開アニメーション映画部門でノミネートされているのは覚えておきたい。手描きアニメであると同時にCGへの評価も高く、むしろハイブリットな表現が現在のアニメ映像の最先端にある。

残念なのは、日本での高い評価が海外での評価につながっていない点だ。現時点で本作の海外での映画祭、映画賞ノミネートはほぼない。
 現在の世界の長編アニメーションの評価の潮流は、社会問題や政治問題に深く切り込むことや、社会批評的なストーリー、演出に傾きがちなのだ。観念的で、映像の技でみせる作品は過小評価されがちである。それだけに「海獣の子供」は極めて現代日本的で、日本の独自性を主張しているようにもみえる。

テレビアニメでは、「鬼滅の刃」が東京アニメワードフェスティバルアニメ・オブ・ザ・イヤー グランプリ テレビ部門、ニュータイプアニメワード作品賞(TV放送&配信作品)、クランチロールアニメワード2020 アニメ・オブ・ザ・イヤーに輝いている。2019年が「鬼滅の刃」の年であったことをあらためて感じさせる。
 ニュータイプアニメワードファン投票、クランチロールアニメワードは海外を中心にした専門家とファンの投票で決められる。ファン人気の高さも特徴だ。

いくつものアワードがあると、どれがいちばん信頼できるかと迷いがちだ。しかし、アワードはどれが正しく、権威が高いということはない。それぞれが違った対象領域・作品、選考者・選考方法をもつことにむしろ意味がある。
 異なった視点、異なった評価基準で作品を見ることで、文化に多様性を与える。それらの異なった視点で評価した時に、結果的に同じ作品が何度もアワードに選ばれるときがある。そうした作品こそが真の傑作となりうるのでないだろうか。

(C)吾峠呼世晴/集英社・アニプレックス・ufotable