社会的に禁煙の流れが進むなか、カー用品市場においては、灰皿などの喫煙具の需要が拡大しています。クルマに内蔵されるタイプの灰皿も新車から激減していますが、そこにこそ商機がありました。

実際売れてるクルマの灰皿 加熱式タバコ普及で市場変化

社会的に禁煙の流れが広まるなか、カー用品店では2020年現在も、車載用灰皿のコーナーが一定の規模を占め続けています。カー用品メーカーのカーメイト(東京都豊島区)によると、実は車載灰皿は年間10億円もの市場で、同社では車載用スマートフォンホルダーに次ぐ重要ジャンルと考えているそうです。

車載用灰皿について、カーメイトに話を聞きました。

――ここ数年で車載用灰皿のニーズが増えているでしょうか?

禁煙の流れのなか、喫煙者人口は年々減っていますが、新車への灰皿の装着がほとんどなくなったこともあり、純正オプションやアフター用品として灰皿のニーズが高まり、市場は拡大しました。また、路上や建物内での喫煙禁止といった流れを受け、車内でタバコを吸う方が増えていることも、その背景にあります。

加えてここ数年は、紙巻タバコから「IQOS(アイコス)」などの加熱式タバコへの移行も増え、その充電スタンドなどの需要も高まっています。紙巻タバコを想定した車載用灰皿の市場は、やや減少しているものの、加熱式タバコ専用スタンドや吸い殻入れといったものを加えれば、市場は拡大しています。

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加熱式タバコについてJT(日本たばこ産業)は、タバコに火をつけて燃焼させるのではなく、専用の機器にタバコを差し込み加熱させ、その蒸気を楽しむもの、と説明します。カーメイトによると、その機器の充電、ホールド、吸い殻入れの機能を備えたオールインタイプの商品が特に人気とのこと。「それぞれを別々に用意するのではなく、ひとまとめにすることで、車内がごちゃごちゃしないといった点でも人気です」と話します。

クルマでは「ストレスなく吸いたい」 灰皿も進化

車載用灰皿について、引き続きカーメイトに聞きました。

――車内でタバコを楽しみたい、というニーズは今後も増えるのでしょうか?

「クルマの中で楽しみたい」というよりは「クルマというパーソナルな空間でストレスなく吸いたい」といった感じの方が多いかと思います。外で吸いにくい、吸えない環境が進む一方で、クルマは誰にも文句を言われない「自分の喫煙所」みたいなイメージです。当社としても、ストレスなくタバコを吸ってもらうため、クルマに特化した喫煙具を提供していきたいと考えています。

家庭の灰皿とは違うクルマならではのニーズとして、夜でも使いやすいようにLEDライトが点灯したり、そのための電源を確保するソーラーパネルが付いていたり、運転中でも簡単に火種が消せる火消し穴があったりします。そうした細かいニーズは、挙げ出すときりがないほど様々です。それを満たすとともに、車内で安心、安全にタバコを吸ってもらいたいという想いも届けていきたいと思っています。

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2020年4月から改正健康増進法が施行され、タバコを吸える場所がさらに減っていくなど、喫煙をめぐる環境はますます厳しくなっていくことが予想されます。カーメイトは、こうした情勢によって大幅に売り上げが伸びるとは思えないものの、加熱式タバコ関連の需要は増え、そういった面では追い風になると考えているそうです。

この点はカー用品店「オートバックス」を展開するオートバックスセブン東京都江東区)も同様の見解で、加熱式タバコをめぐっては、専用の芳香剤や消臭剤といった関連グッズも含め、商品の入れ替わりが頻繁になっているといいます。

カーメイトは、「今後、クルマはよりいっそう、喫煙の拠点になるでしょう」と話します。

車内での喫煙ニーズは増えているのか。写真はイメージ(画像:Vladimir Nenov/123RF)。