まいんちゃんナメコプリキュアにウレロに声ガールなどなど。子役として活動を始めて以来、様々な作品を通してピュアで凛とした歌声とダンスを披露してきた福原遥。「昔から音楽に支えられてきたし、勇気をもらってきたので、自分も誰かの背中を押せる曲が歌いたいとずっと思っていた」という彼女は、昨年8月に1stシングル「未完成な光たち」でシンガーデビューを果たし、<大丈夫だよ/一人じゃない>という聴き手に寄り添うメッセージを届けた。そして、前作から7ヶ月ぶりとなるニューシングル「透明クリア」は、彼女が作詞家のいしわたり淳治と綿密なミーティングを経て制作された新感覚のエールソングとなっている。女優としても日増しに注目度が高まっている福原遥が「今、伝えたいこと」とは――。

取材・文 / 永堀アツオ 撮影 / 荻原大志

◆いろんな曲に触れてみたいし、音楽をもっと自由に楽しみたい

ーー 昨年の夏に本格的に歌手活動がスタートしました。

昨年を振り返ってみると、ファンの方との距離が近かった1年だなと思います。会える機会もたくさん増えたし、曲を間近で歌うことができたことも嬉しかったです。歌手活動を始めるときは、自分からファンの方に向けて、何か届けられるものがあったらいいなと思ってたんですけど、逆にファンの方からたくさんの笑顔や温かい声をいただいてしまって。自分がもらう方が多かったなと思いました。

ーー 曲は届いているなっていう実感はありました?

そうですね。学生の子に「いつもこの曲に支えられてます! 登下校するときに毎日聴いてるんです」って言ってもらえたりして。「未完成な光たち」を大切に聴いてくれてるってことが伝わってきて、本当に嬉しかったですね。

ーー 実際に人前で歌ったり、テレビで歌唱したりすることで、「次はこうしたい」っていう欲求のようなものは湧いてきました。

まだ始まったばかりだし、わからないことだらけなので、いろんな曲に触れてみたいし、音楽をもっと自由に楽しみたいなと思ってて。だから、「こういう曲だけを歌いたい」っていうのはなく、いろんな曲を幅広く歌えたらいいなと思ってます。ただ、やっぱりファンの方から「この曲で勇気づけられた」っていう声を聴くと、やっぱり、後ろ向きではなく、前向きな曲をたくさん歌えたらいいなっていうのは感じましたね。背中を押せるような曲をもっともっと歌えたらいいなって思います。

ーー では、女優業には何か影響はありました?

女優業というより、自分自身に影響がありました。お芝居だとやっぱり、福原遥としているんじゃなく、その役でいるので、自分から何かを発信するとか、自分の意見を言うっていう機会があまりなくて。もちろん、現場で意見を求められることはあるけど、それはあくまでも、役柄としてどう思うか? っていうことなんですね。だから、今回、音楽を通して、自分から発信するっていうのは、こういうことなんだなって感じてます。今までも、自分ではちゃんと自分と向き合えているつもりだったけど、全然向き合えてなかったなって思ったんです。歌を通して、自分自身を見つめ直すきっかけになれたので、それはよかったなって思いました。

ーー 自分自身を見つめ直して気づいたことというのは?

やっぱり、自分が思ってることを言葉にするのが下手だなってことです。言葉のレパートリーがないなってすごく思いました。

◆私と同じように、自分に自信がないけど、大きな夢に向かって一歩踏み出したいっていう同世代の方に向けてエールを送れたらいいなって

ーー 2枚目のシングルでは、いしわたりさんとミーティングしたんですよね。

そうなんです。今回、初めて制作にも関わらせてもらって。今までは、どういう風に曲が作られていくかも知らないまま歌っていたので、改めて、難しいし、素晴らしいし、すごいことなんだなって感じて。まず、最初に、いしわたりさんと打ち合わせさせていただいたんですが、「どういう曲を作りたいのか」とか、「どういう思いで日々を過ごしているのか」とか、いろんな話をして。2時間半くらい話したと思うんですけど……。

ーー そんなに話したんですね。想像していたより長かったです。

いしわたりさんにいろいろと引き出していただいたんですけど、やっぱり、言葉にするのは難しくて。全然思った通りには話せなかったんですけど、そういう部分も全部汲み取って、歌詞にしてくださって。

ーー 福原さんが伝えたかったことはどんなことですか。

やっぱり、「未完成な光たち」の時に感じたことですね。お客さんがこの曲で前向きになれたとか、背中を押されたっていうのを言ってくれたので、またそういう曲を届けたいなと思いましたし、私と同じように、自分に自信がないけど、大きな夢に向かって一歩踏み出したいっていう同世代の方に向けてエールを送れたらいいなって。勇気を出せるような曲を作りたいなと思ってましたね。

ーー 福原さんも自信をなくしたり、自分を信じられなくなることはありますか。

最近はないですね。それって、自分で自分を殺しちゃうことだし、本当によくないなって思うので。自分が一番自分を信じてあげないといけないし、逆に自分を信じていればなんでも叶うだろうなって思うようにはしてます。例えば、何か失敗しちゃった時とか、新しいことに挑戦しようとする時とか。周りから言われた意見が、自分の意見と正反対だったりすることもあるじゃないですか。そういう時に、「あれ? どっちなんだろう?」って揺らぐこともあるんですけど……。

ーー そういうときはどうしてます?

他人の意見を聞くことも大事だなって思うので、ちゃんと人の意見も聞くようにはしてて。でも、そこで、自分の意見も忘れないようにしますね。それでも、自信がなくなっちゃった時は、それこそ音楽を聞いて、「自分を信じよう!」って改めて思い直すようにはしてます。

◆私自身は、何にも染まらずに、自分のまま歩んでいった方が絶対にいいなと思っているんです

ーー この曲の歌詞はまさにそのことを歌ってますよね。

そうですね。私が特に好きなのは、<世界を 変えてく ものほど透明に/できて いるの>っていうところですね。自信が持てるひと言だなって思うし、この言葉に支えられるなって思いました。皆さんも、周りに左右されて流されてしまったり、誰かに染まっちゃったりすることがあると思うんですけど、それは弱さだったりするじゃないかなって思って。私自身は、何にも染まらずに、自分のまま歩んでいった方が絶対にいいなと思っているんですね。

ーー <何色にも 染まらずに 生きていたいだけなのに>というフレーズもありますが、それが難しい時も多いってことですよね。

学校生活とかもそうですよね。クラスでグループの輪に入るために、自分の意見は言わずに、間違ってても間違ってるって言えずにいるとか。怖いから何も言わずにそのグループに入って、トイレも一緒に行く、みたいな。私はそういうのはあまり好きじゃないですし、間違ってることがあったら、間違ってるってちゃんと言えるような人でいたいと思っています。でも、誰にも染まらずに透明でいることで、時には一人で歩んでいくことになってしまうかもしれない。そこで、不安を感じたり、自信がなくなったりすると思うんですけど、そんな時に<世界を変えてく ものほど透明に できて いるの>という言葉を聴くと、やっぱりこのまま真っ直ぐに進んでいっていいんだって思えると思うし、私はどんな時も染まらずに透明でいたいなと思いますね。

ーー この「透明クリア」というタイトルはどう感じました。

すごくいいなって思いました。染まらないことを、「白」ではなく、「透明」って表現してて。よく人に対して、「真っ白だね」と言うのは聞いたりするけど、「透明だね」ってあんまり聞かないので、いしわたりさん、すごいなって思いました。

◆嬉しくても泣きますし、悔しくても泣きますし、笑い過ぎても泣くんですよね(笑)

ーー 歌声や存在感を含め、福原さんを表すのにぴったりな言葉だと思います。ここから、歌詞に散りばめられた<透明なもの>をいくつかピックアップしてお伺いしたいと思います。まず、<涙>ですが、最近、泣いた出来事は何かありますか。

ふふふふふ。私、多いと思います。喜怒哀楽……怒ることはあんまりないんですけど、嬉しくても泣きますし、悔しくても泣きますし、笑い過ぎても泣くんですよね(笑)。最近だと、「もしもツアーズ」で行った東京ドイツ村が楽しくて、プライベートでまた、友達とアスレチックをしに行ったんですね。そこで、話で聞いても全然面白くないと思うんですけど、空中ブランコをやってて。自分ではもっと助走をつけて行きたかったのに、助走をつける前に先行していっちゃって。行きたくないのに、どんどん前に進んじゃうのが、自分でツボって笑ってたっていう。あはははは。たのし泣きしましたね。笑いすぎて泣きました。

ーー (笑)続いて<勇気>ですが、これまでに勇気を出してやったことは?

なんだろう。このシングルの打ち合わせかな。自分の言葉、ひとつひとつを発言することに勇気がいりました。自分の意見を言うこと、自分の思いを伝えるっていうのが、怖かったり、自信がなかったりするので、その一言一言を言うことは勇気がいったなって思います。

ーー いつか自分の言葉だけで書いた歌詞も聞きたいですね。では、<愛>というと?

いっぱい思い浮かびます。私はやっぱり、人が好きなので、人と繋がれた瞬間に愛を感じますね。最近で言うと、レーベルのスタッフさんが「透明クリア」の販促用のステッカーを作ってくれたんですけど、それが、前に一緒に行ったご飯屋さんでもらったシールと同じサイズだったんですよ! それが今日いち嬉しかったことで、愛も感じましたね。

◆口に出そうって思いました。口に出せば叶うと思って

ーー 最後に<夢>は? 

音楽だと、さいたまスーパーアリーナでライブをすること! 

ーー すごい! 前回はそんなに具体的な目標は言ってませんでしたね。

口に出そうって思いました。口に出せば叶うと思って。地元の埼玉でライブができたらいいなと思います。お芝居では、自分の代表作を作りたいですね。どの作品も自分にとって大切なんですけど、福原遥と言ったら、あの役だよねっていう、みんなの心に刻まれるくらいの作品を作れたらいいなと思います。ひとりの女性としては、夢や目標に向かって、いつまでも頑張っていたいです。いつまでも上を目指して進んでいける凛とした女性になりたいなと思います。プライベートでは、その人がいたら、いつも楽しいよねって思ってもらえるような人でいたい。バイバイした後に、その相手があったかい気持ちになって、楽しかったなって思ってもらえるような存在になりたいです。

ーー ありがとうございます。この曲は夢や愛、勇気だけではなく、声や思いといった目に見えない透明なものを歌ってますが、レコーディングはどんな思いでのぞみましたか。

歌に加工をしてるので、スタッフさんからは「あんまり強弱をつけない。あんまり感情を出さない方がよく聴こえるよ」って教えてもらって。だから、あんまり、気持ちを入れずに、一定で歌うっていう感じでしたね。

ーー トラックがKawaii Future Bassなので、無機質な歌い方の方が合うんですよね。

なんか変な感じでしたね。歌詞も一緒にやったからこそ、こういう歌い方でいいのかな?って、私だけが不安になっちゃって。だから、もう1つ違うパターンもとらせてもらったんですよ。ちょっと強弱を入れたり、囁くような歌い方をしてみたりしたんですけど、加工してみると、結局、無機質な方が素敵になってて。なんというか、あんまり聴いたことのない曲になったなって思います。いろんな音が入ってて、すごい不思議でお洒落な感じの世界なんですけど、聴いていくと安心して落ち着くような気持ちになれる。すごく不思議だなと思いましたし、これがどういう風に届くのかなって、率直に思いましたね。

ーー どう届いて欲しいですか?

私自身は何回も聴きたくなるような中毒性があるなって感じているので、皆さんにとっても、何度も聴きたくなるような曲になって欲しいです。落ち着けるし、ほっとできるし、休めるような曲だけど、前向きになれる曲でもあるので、ちょっと一歩前に進んでみようかなって感じてもらえたら一番嬉しいですね。

◆コンテンポラリーダンスをちょっと取り入れていただいて。ダンスにも注目していただきたい

ーー また、MVではダンスも披露してますね。

踊りました! 前作のカップリング「箱庭のサマー」で踊った時に、ファンの方に楽しんでいただけたので、また踊りたいなって思ってましたし、身体で思いを表現するっていうのをいつかやってみたいなと思っていたので、コンテンポラリーダンスをちょっと取り入れていただいて。ダンスにも注目していただきたいですし、楽しかったのでもっと踊りたいなって思ってます。

ーー そして、カップリングは、透明に対して、「モノクローム」になってます。

「透明クリア」は何色にも染まりたくないって歌っていて、「モノクローム」はモノクロの今にカラフルな色をつけたいというか。自分に引き出しを増やしていく、自分の魅力をたくさん身につけていくっていう意味での色だなって思ってて。自分の内面に一輪ずつ花を添えていくような意味の表現というか。全然違う意味合いの色の使い方をしていますね。

◆「透明クリア」は自分のままでと歌ってて、「モノクローム」は自分を変えたいっていう思いなので、正反対のようでいて、どっちも前に進もうっていう曲

ーー 表現の仕方は違えども、メッセージとしては近いものがありますよね。

そうなんですよね。「透明クリア」は自分のままでと歌ってて、「モノクローム」は自分を変えたいっていう思いなので、正反対のようでいて、どっちも前に進もうっていう曲になってて。「モノクローム」は変わりたいし、走り出したいんだけど、怖さとか、いろんな感情が渦巻いて前に進めないでいる。でも、歌詞にある<Ah>っていうところで、変わらなくちゃ! っていう叫びのような決意を感じるし、ストーリーがあって好きですね。だから、歌もこっちのほうが強く歌ってました。殻が破れる瞬間のような緊急性がある歌詞だったので、熱く強い思いで歌ってましたね。

ーー 福原さんは何か変わりたいって思うことはありますか。

それこそ、自分の思いをもっとちゃんと届けられるようになりたいなと思ってます。自信を持って自分の意見を言えるようになりたい。そのためにも、もうちょっと言葉のレパートリーを増やして、ちゃんと人に自分の気持ちを伝える練習をしていきたいなと思ってます。

◆今年はもうちょっと(音楽活動の)ペースを上げていこうと思っているので、期待しててください

ーー 曲調も歌詞の内容も違えども、2曲ともエールソングというのが福原さんらしいです。

そうですね。どちらも夢に向かって、未来に向かって進んでいく前向きな曲になっているので、これから新生活を送る方に届いたらいいなと思っていて。自分の世界を突き進んでいく意志に溢れた曲とともに、自分の道をしっかり歩んでいってもらえたらいいなと思います。

ーー 最後に、今後の音楽活動なんですが。

今年はもうちょっとペースを上げていこうと思っているので、期待しててください。がんばります!



福原遥 ニューシングル「透明クリア」。カップリング「モノクローム」とともに、新感覚のエールソング2曲に秘めた想いを訊く。は、WHAT's IN? tokyoへ。
(WHAT's IN? tokyo)

掲載:M-ON! Press