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  動物の中には磁力を感じられる種が存在する。だが、人間もそうだと言ったら信じるだろうか?

 かつて動物が磁力を感じるなどあり得ないと考えられていた時代があった。だがやがて、鳥などの動物は、長い距離を移動するために磁覚を駆使していることが理解され始めた。

 それでもなお、人間についてはやはりあり得ないと考えられていた。ところが、そうした想定もぐらついているようだ。それは昨年行われたある実験のせいだ。

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磁場で作り出した檻の実験

 カルフォルニア工科大学(アメリカ)の研究グループが行なったのは、特殊な「ファラデーケージ」を作り、その中に脳波キャップをかぶった人に入ってもらうという実験だ。

 ファラデーケージとは、導体(コイル)に囲まれた檻のようなもので、スイッチを入れればコイルが周囲に磁場を発生させる仕組みになっている。

 被験者には、防音室に設置されたファラデーケージの中に入り、そこに座って目を閉じてもらう。

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image by:WANG, ET AL.

 もちろん被験者にはケージが作動しているのかどうかは知らされないし、それが作動するタイミングや回数も同様だ。

 防音室は真っ暗で、目で見て何かヒントがないか探ることはできないし、外部からの音は一切聞こえてこない。

 ケージの制御は別室で行われたので、操作する気配から作動しているかどうかを察知することもできない。さらに、どの被験者にも同じ方向を向いて座ってもらい、磁場の方向によるバイアスが生じないようにされた。

 この状態で、磁場を発生させて、そのときの脳波の動きが記録された。

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Kalawin/iStock

 この結果は、『eNeuro』に掲載された研究論文にこのように記されている。

我々の結果は、人間の脳が確かに磁場レセプターからの指向性インプットを収集し、選択的に処理していることを示している。

かかる神経活動は、それに続いて磁覚挙動が発現するための必要条件であり、かかる発現が存在するか否かの検証へ向けた出発点となるものだ。

磁覚が備わった動物に見られる局地的な磁場に対する反応

 なお、すでに磁覚があることが知られている動物は、この感覚を直接の生物学的シグナルとして経験しているという。

 鳥ならばそれを利用して長距離を移動し、ウミガメならば進路の安全性を評価するのだが、彼らは、周囲の磁場がイレギュラーに発生した局地的なものであれば、それは本来たどるべき磁場ではないというサインを意識下で感じることができる。

 たとえば、火山は局地的な磁場を発生させるが、そうした磁場の中を移動する動物は、それをガイドに長距離移動をするのはマズいという警告シグナルを受け取るのだ。

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Katharina2013 from Pixabay

ただの物理反応ではなく、生物学的に備わったメカニズム


 今回の実験では、これと同じようなパターンが人間で確認されたという。
選択的な反応は、生態学的に妥当な刺激を好み、速度や強度が同じ回転のみの違いを区別する。このことは、この効果がある種の一般的な物理作用というよりは、生物学的に調整されたメカニズムによるものであるということを示している。

 それはつまり、被験者の脳が、地球に発生しているグローバルな磁場を模倣したものにのみ反応し、磁覚のある動物と同様に、たまたま生じた局地的な磁気を受け入れないということだ。

 このことから、人間は動物と同じく、長い期間にわたる継続的な利用とそれを促すような動機を通じて、磁覚を発達させたと研究グループは推測している。たまたまそうなったのではなく、何らかの役に立つ仕組みであるということだ。

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Pixabay

 一部の人は磁場を感知できることを知っていて、それを使いこなしているのかもしれない。果たして、こうした磁覚は、私たちの祖先が狩猟採集生活を送っていた時代の名残なのだろうか?

 その答えは現時点では不明だ。この遺産のほとんどすべてが、未知のままである。

References:popularmechanics/ written by hiroching / edited by parumo

全文をカラパイアで読む:
http://karapaia.com/archives/52289145.html
 

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