多くの人が親しむ娯楽、麻雀。スマホパソコンオンライン麻雀ゲームを遊ぶ人もいるが 、雀荘に集まって卓を囲む人もまだまだ多い。予約なしでは入れない人気店もあるほどだ。

高度な心理戦をさらに熱くするために、仲間内でお金を賭けるケースもあるだろう。

都内の会社員男性も、「一晩でうまくいけば1万円の勝ち。1、2万円負けることもありますが…」と話す。

ただし、麻雀好きとして知られる芸能人も、テレビラジオで「賭け麻雀をしたことがある」と絶対に言うことはない。賭け事は違法だとわかっているからだ。同じように愛好家たちは「よほどのことがない限り、お縄にかけられることはない」と思いつつも、頭の片隅では法律を犯している不安がどこかにあるのではないか。

一方で、「賭けるのが当たり前の麻雀で、犯罪だと言われても…」(先の男性)という声も聞かれる。遊び方次第では賭け事に該当しないケース、つまり罪に問われないケースもあるのだろうか。

愛好家らは「リャンピンは危ない」「フリー大丈夫

麻雀に馴染みのない人にも、改めて整理しておこう。

麻雀の遊び方は主に(1)「セット方式」と(2)「フリー」の2つにわかれる。

(1)3人または4人の仲間で雀荘に行って遊ぶのが「セット」方式だ。「テンピン」(勝ち点1000点につき100円)や「テンゴ」(100050円)などレートを設定する方式を採用し、ほとんどの人がこのような遊び方をしていると思われる。

(2)「フリー」は、雀荘にふらりと遊びに来た見知らぬ客同士が遊ぶ方式だ。

それぞれのケースで、賭け事はなされる。麻雀好きの間では「フリー大丈夫だが、セットはダメ」「テンピン以上が摘発対象」「リャンピン(1000200円の高額レート)は危ない」などの声もあがるそうだ。

しかし、それらは本当か。実際によくありそうな複数のケースについて法的な解釈を麻雀に詳しい坂口靖弁護士に聞いた。

ギャンブル性は「フリー」のほうが「セット」より高い

ーー仲間内(セット)と初対面の人たちが遊ぶ「フリー」とでは、違いはありますか

仲間内の場合も、フリーである場合も、お金を賭けている以上、いずれにしても賭博罪は成立してしまいます。もっとも、賭博罪が成立するとしても、起訴され実際に処罰を受けるか否かという点で考えると、多少の差は生じるものと考えられます。

フリーの方がより一層、娯楽をたしなむという面よりもギャンブル面が強いように感じられ ますので、処罰されてしまう可能性が高まるように考えられます。

ーー賭ける金額によって罪が成立するかどうか変わるのでしょうか

賭博罪が成立するには、「財物」を賭けることが、要件となります。ここでいう「財物」とは、「有体物または管理可能物に限らず広く財産上の利益であれば足り、債権等を含む」とされています。

ただし、一時の娯楽に供する物」と評価できるような物を賭けているに過ぎない場合には、賭博罪は成立しません。

裁判例では、金銭を賭ける場合においては、その金銭の多少にかかわらず、「一時の娯楽に供する物」ではないと考えているようです。したがって、「テンピン」はもちろんのこと、「テンゴ」や「テンサン」でも賭博罪は形式的には成立してしまいます。

ーー1円でも賭けた時点でダメなのですね

裁判例から考えると、金銭を賭ける以上、その金額の多寡によらずに賭博罪が成立するもの と考えられます。しかし、1円しか賭けていないような場合、学説等では、「一時の娯楽の用に消費される程度の少額の金銭であれば、賭博罪は成立しない」と考えるべきともされているものもあり、実際に処罰される可能性は極めて低いものと考えられます。

ーーお金ではなく、「負けた金額分のご飯をおごる」「家庭用ゲームなど物をプレゼントする」という場合には、どうでしょうか

お金、または金品を賭けない場合、「一時の娯楽に供する物」と言えるかどうかが肝心です。

「一時の娯楽に供する物」とは、裁判例では「関係者が即時娯楽のために費消するような寡少のもの」という判断が示されています。また、この判断基準としては、(A)社会的地位、(B)職業、(C)賭博行為の回数、(D)賭けた財物の種類、(E)数量、(F)価格――などから判断するものと考えられています。

通常のサラリーマン等が、麻雀を1日行った結果、その日の夜ごはんを奢る程度であれば、「一時の娯楽に供する物」と評価できるものと考えられ、賭博罪は成立しないものと考えられます。

しかし、テンピン計算で負けた分のごはんを奢るなどの取り決めの場合には、即時消費が出来ないような状況も考えられ、賭博罪が成立してしまう可能性は否定できません。

また、サラリーマンなどが麻雀を1日行って、最終的に負けた方が家庭用ゲーム機等の物品をプレゼントする場合というのは微妙なケースであるように思われますが、私見としては、賭博罪は成立しないものと考えます。

収入に比してそれほど高額の物とは評価できないものと考えられ、「一時の娯楽に供する物」と評価しうるものと考えられるからです。

もっとも、このような麻雀が頻繁に繰り返し実施されているような場合には賭博罪が成立してしまう可能性は否定できないように思われます。

ーー参加費を4人から徴収して1位になったものが総取りする場合(4人から2500円ずつ集めて、1位の者が1万円を獲得)、あるいは事前に決めておいた報酬を1〜4位に分配する場合(例・1位10000円、2位6000円、3位3000円、4位1000円)はどうなりますか

これも金銭を賭けていることに他なりませんので、賭博罪は成立してしまうものと考えられ ます。

ーーゴルフコンペのように景品を用意する方法はどうでしょうか? 参加費を4人から徴収し、1〜4位まで景品が用意されるような方法です

参加費が高額である等の特別な事情が無く、景品も社会通念上不相当ではないと考えられる ような金額の物に留まる限り、賭博罪は成立しないものと考えます。

もっとも、金銭の代替物として景品が使用されていると評価できる場合については、賭博罪が成立する可能性はあります。

ーー太っ腹な上司がプレーヤーでありつつスポンサーになって、1位〜4位にお金を支払うケースではどうでしょうか。他の部下3人はどんなに負けても懐をいためることはありません

賭博罪が成立するには「財物を賭けてその得喪を争うこと」というのも要件となります。この点、設問の場合、部下3名においては財産の喪失可能性が無いので、賭博罪は成立しません。

ーー賭博罪が成立しないと言い切ることができるのは、最後の上司が自腹で部下たちをおごるケースだけでした。実際に逮捕されることもあるのでしょうか

麻雀やゴルフで、多少の金銭を賭けることは賭博罪が成立する可能性が高くなります。しかし、実際に処罰を受けるか否かについては、掛け金等の多寡、頻度、仲間内か否か、等の事情を加味して結論は異なってくるかと思われます。

また、現行犯でないとしても逮捕等の可能性は当然ありますが、実務上の事例を見ると、現行犯逮捕や現場を押さえられている事案がほとんどであるように思われます。

【取材協力弁護士
坂口 靖(さかぐち・やすし)弁護士
大学を卒業後、東京FM「やまだひさしのラジアンリミテッド」等のラジオ番組制作業務に従事。その後、28歳の時に突如弁護士を志し、全くの初学者から3年の期間を経て旧司法試験に合格。弁護士となった後、1年目から年間100件を超える刑事事件の弁護を担当。以後弁護士としての数多くの刑事事件に携わり、現在に至る。
事務所名:佐野総合法律事務所
事務所URLhttp://www.sanosogo.com/

賭け麻雀「危ない俗説」を法的検証、「フリーは大丈夫」「テンピン以上が摘発対象」は本当か?