海外の戦場、秘境から国内の裏モノ、エロ系まで。あらゆる「ヤバい現場」に“無差別突撃”を敢行し、取材の裏側までを書き尽くした生々しい現場報告が『ヤバい現場に取材に行ってきた!』だ。著者の石原行雄氏に聞いた。
-普通、裏モノ系ライターの方はイラクやアフガンへ戦場取材には行きませんよね? しかし石原さんは全方位どこでも赴く。なぜそんなに振り幅が広いんですか?
「俺は“現場”を差別したくないんです。戦争取材がすごくて風俗体験ルポはくだらないなんて全然思わないし。だからこの本でも、海外のイラクの爆弾テロ現場や北朝鮮、カンボジアと日本国内の闇フーゾクやゴミ屋敷、大麻栽培場なんかを、あえて“ヤバい”ってくくりだけで同列に並べたわけです。戦場へもエロ現場へも、結局は原稿料稼ぎに行くんだしね。
けど、行けばどの“現場”もまず先入観や思い込みを見事に裏切ってくれます。イラクじゃ俺なんかにも兵士たちは『この戦争の現実を頑張って日本に届けてくれ!』と訴えてくる。戸塚ヨットスクールも怖いもの見たさで行ったら戸塚宏校長に延々とマスコミ批判を浴びせられて『こりゃ失敗したなー」と思ったけれど、その後『本気で書く気なら書いてみろ!』と全面取材させてくれた」
*戸塚ヨットスクール 問題を抱える少年の更生を目的とした私塾。かつて生徒への傷害致死で戸塚宏校長が服役するも、現在も活動中
-大麻栽培のドラッグディーラーも本来は取材なんか受けないのに石原さんにはOKが出ています。
「結局、誰しも自分のやってることを誰かに聞いてもらいたいんでしょう。売人なんか特に孤独だから。その孤独の隙間に俺は忍び込むだけ」
-カンボジアの売春村で、6歳の売春少女ふたりが、命がけで潜入した石原さんになついて無邪気にハシャぐのもすごい場面でした。
「売春村の連中に取材がバレるとマジにヤバいから俺はビビりまくってたんだけど、少女らは逆に害のない、何もしない客とわかると『じゃあ一緒に遊ぼ!』となる。愛情に飢えてるんです」
-この本では国内外17ヵ所のヤバい現場で、兵士、右翼、売人、宗教関係者など多くのヤバい人間に遭遇されています。ずばり一番ヤバい現場、ヤバかった人は?
「東京の婚活パーティ。そこに巣食う婚活年増オンナたち」
「そう。そりゃカンボジアの売春少女は悲惨だけど“目的”と“希望”ははっきりしてる。『いやだけど売春すれば毎日ご飯だけは食べられてうれしい』『でも早く金を稼いでこの村から出たい』ってね。険しくて困難だけど、救いの道筋だけは明確なんです。逆に“婚活オンナ”たちは目的も希望もねじれまくってて救いがない。婚活パーティに通い詰めた挙句に世間体と自意識が肥大化して、もはや自分が結婚したいかどうかすらわからなくなってるアラサー女を何人も見たよ。でも実はそんな俺自身も婚活取材でまんまとヤバい“地雷”を踏んじゃって……」
-それ、どんな“地雷”ですか?
「パーティの取材で39歳の医療系OLと知り合ったんですよ。まともそうな、ロリ熟女系のイイ女でした。俺も独身アラフォーだし、数回のデートの後に『結婚を前提に』ってまじめに交際を申し込んだんだよね。そうしたら次の瞬間、その女『あんたの結婚観は間違ってる!』とか大豹変して。夜には長文の大説教メールが何通も来て。そいつ、男を誘惑してその気にさせては自爆する“婚活地雷オンナ”だった。戦場でも踏まなかった地雷をまさか新宿で踏むとはね……。本当にいつだって、現場の現実ってのは見事にてめえの思い込みを裏切ってくれるんだよなぁ(苦笑)」
●石原行雄(いしはら・ゆきお)
世界の戦場・秘境と日本の裏現場に同時に潜る稀有なライター。著書に『アジア売春街と麻薬地帯体験記』『アウトローたちの履歴書』など。TBS『サバイバー』にもレギュラー出演した
『ヤバい現場に取材に行ってきた!』
彩図社 1365円
戦時下のイラクの爆弾テロ、北朝鮮、カンボジア少女売春村から東京の大麻栽培部屋、ゴミ屋敷、ハプニングバー、婚活会場、さらに戸塚ヨットスクールやアレフ(旧オウム真理教)道場まで。17ヵ所のヤバすぎる現場取材の赤裸々な記録
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