「テレワーク」という概念を初めて耳にしたとき、私がすぐに思い浮かんだフレーズは「サボれる」だった。当然だろう。上司も同僚も近くにいないのだ。

【その他の画像】

 現在は新型コロナの影響で「在宅勤務」をするビジネスパーソンが急増しているが、テレワークとは元来、「テレ=離れた場所」と「ワーク=働く」を足した造語。インターネットを活用した、場所や時間にとらわれない柔軟な働き方そのものを指している。だから「テレワーク在宅勤務」ではなく、移動中や、カフェサテライトオフィスでの仕事も「テレワーク」と呼ぶ。

 いずれにしても、近くに会社の人が誰もいない可能性が高いのがテレワークなのだから、「サボる」には、最適な環境である。そのことだけは間違いない。

 【7時間】の就業時間中、仕事した時間が【6時間】で、ゲームしていた時間が【1時間】なら、【1時間】サボったことになる。こんなことをオフィス勤務でしていたら「君は1時間近くもゲームしていただろう! サボってんじゃないよ」と上司に叱られる。

 しかし、在宅勤務だと、サボっている姿を目にすることは難しい。従って、ちょっと仕事をしてから【30分】ゲームしたり、【15分】かけてコンビニに出掛けて雑誌の立ち読みしても、【40分】ほど気になるテレビ番組や海外ドラマを観ながら仕事をしていても、分からないのである。幼い子どもがいれば【20分】遊ぶこともできるし、【15分】ぐらいポテトチップスを食べながらファッション雑誌を眺めることもできる。

 たとえサボっている間に電話がかかってきても「トイレに行ってました」と言えば、バレないだろう。

テレワークでは、これまでよりも仕事量が減る

 テレワークでは「仕事がないんだったら、これ手伝って」と、本来やらなくてもいい仕事を任せられることは激減する。そうなると、オフィスで過ごしていたらあっという間だった【7時間】が意外と長く感じることもある。

 オフィスにいると、いるだけで仕事が増えてしまう、ということはないだろうか。

 ここで皆さんに知っておいてもらいたい、ある「法則」がある。それは、「ヒトは、顔を見ると用事を思い付く」という法則である。「思い出す」のではなく「思い付く」というところがポイントだ。

 だから、営業はお客さまのところへ足しげく通い、「顔」を見せなければならない。電話による「声」も、メールによる「言葉」でも物足りない。「顔」を見せることが大事なのだ。そうすることで、「あ、ちょうどいいところに来た。実は、こんな仕事を頼めないかと思っていて……」といってもらえるのである。

 だからオフィスにいるだけで、上司に見つかるたび、「あ、ちょうどいい。これから企画部との会議があるから、君もついでに出てみないか」といわれたり、「あ、そうだ。この分析を頼めないかな。今度の部長会議で必要だから」といわれたりする。自分がやらなければ、誰かがやる仕事であるのなら、まだいい。しかし、時として「ないならないで困らない仕事」まで依頼されるのだ。だからテレワークだと、オフィスにいるよりも間違いなく仕事量が減るだろう。オフィスにいたら【7時間】かかった仕事が、【6時間】や【5時間】で終わってしまうことも不思議ではない。

 ただ、私は企業の現場に入って目標を絶対達成させるコンサルタントである。テレワークで浮いた時間を無駄な「サボり」に使うことを推奨するつもりは、さらさらない。

●せっかくなら「意味のあるサボり」を

 先ほど、【7時間】の就業時間中、仕事した時間が【6時間】で、ゲームしていた時間が【1時間】なら【1時間】サボったことになる――と書いた。では、【7時間】の就業時間中、本来であれば【6時間】でできる仕事を【7時間】かかってやったのならどうか。【1時間】サボったことになるかというと、普通そうはならないだろう。「もっと効率的に仕事ができたんじゃないのか?」と上司に言われる程度で済む。

 一方、【7時間】の就業時間中、普通【7時間】かかる仕事を【6時間】でやってしまったならどうか。工夫したことで【1時間】が余ることになる。上司に、「まだ1時間あるから、仕事できそうです。仕事ください」と進言するか。それとも、静かに時間が過ぎるのを待つのか。はたまた、「今日、任された仕事は終わったんだから、あとは好きなことをしてもいいじゃないか」と割り切るのか。

 そんな時間を、「意味のあるサボり」に使ってみるのはどうだろうか。

 オフィスで、両手を頭の後ろにあて、顔を天井に向けて「どうすればいいんだろう」と考えるポーズをしてみよう。10分ぐらいそうしていたら、間違いなく、「サボってないで仕事をしろ!」と上司に注意されるはずだ。窓の外をぼんやり見て、「この仕事の目的って何だろう? 今期の自分がやりたいこと、やるべきことに直結するんだろうか?」などと思いを巡らせても同じ。「ボーっとしてないで、手を動かせ、手を!」と叱られる。

 こうしたしぐさは周りから「サボってる」と見えるかもしれないが、自分なりに考えをまとめるために時間をとっているだけだ。今すぐに売り上げが立ったり、利益になったりするものではないが、長期的な視野でみれば確実に会社へ好影響を及ぼす「サボり」のはずだ。

 「何が目的なのか」「この成果を生み出すための重要指標はどんなものがあるだろう」と考える。このように、他人のではなく、自分のペースで考える時間を持つことは、現代においてとても大事だ。しかし、オフィスにいるとなかなかこうした時間をとるのは難しい。特に認知バイアスにかかりやすい人は、「距離をおく」「時間をおく」を意識した方がいい。「部長が言ってるから」「お客さまから頼まれたから」という理由で仕事をするのではなく、本質を見極めて仕事に着手しているか。冷静になって、考えるための時間が必要なのだ。この「考える」という時間を作るのには、テレワークは最適だといえる。

●自分のための「時間」を持て!

 場当たり的に仕事をしていると、時間はいくらあっても足りない。だから、目先の仕事を見極めるため、まずは会社として何を目指しているのか。この「ビジョン」から思考をスタートさせよう。そしてビジョンから事業目標が落とし込まれ、それぞれの部署に年間目標が割り当てられていると理解する。

 その年間目標が個人に割り当てられ、個人の目標が決まる。その目標を達成させるために、自分自身が持っているリソースを配分していく。マネジメントとは、目標を達成させるためのリソース配分を指すわけだから、セルフマネジメントでも、その定義通りにやればいい。

自分が持っているリソースには、

・時間

・労働

スキル

・仕組み/設備

・人脈

・環境

……など、いろいろあるだろう。いちばん分かりやすいのは「時間(期間)」だ。だから、どの時間(期間)に、何をするのかを割り当てていけばいい。具体的には、年間計画から月間計画に落とし込み、そして週計画からその日1日の計画にまで落とし込んでいく。どの期間にどんな労働をし、どんなスキルを身につけ、どのような人と接触すべきなのか。自分が持っているリソースを、うまく割り当てていくのだ。

 毎月、毎週、毎日、目的と目標と計画と行動、そして成果……。それらが1本の線でつながっているかどうか。そうなっていないのであれば、どうすればいいか。この大事なことを「考える」時間を作るのだ。そして、自分の目標を実現させるために超能動的に動けるようになれば、新型コロナウイルスの影響が収まり、オフィス勤務の日常になっても上司から干渉されることはほぼなくなるだろう。

 そのためには、組織で共有しているスケジュールアプリに、びっしりと「タスク」を記入しておくことだ。「9~11時まで電話営業」などと、ザックリ記してはいけない。遠隔地にいる上司や先輩に突っ込まれる隙など「1ミリ」もないほど、それこそ30分単位で細かく記しておこう。そしてその通りにやるのだ。

●適度なストレスも必要

 そうすれば、「ヤーキーズ・ドットソンの法則」も働く。「ヤーキーズ・ドットソンの法則」とは大ざっぱにいえば、「人間は適度なストレスを感じているときが、最もパフォーマンスが高い」と証明した法則である。過剰なストレスはもちろんいけないが、過小なストレスも良くないといわれている。ゲームをしているわけでもないし、雑誌を読んでいるわけでもない。なのに、何となくダラダラ仕事をしてしまう経験は誰しもあるだろう。

 つまり、オフィスにいたら【7時間】で終わった仕事が、在宅勤務だと【8時間】や【9時間】もかかってしまう、ということもあり得るのだ。せっかく効率的に働くためのテレワークが、これでは台無しだ。テレワークをする場合、自分が「自立型」なのか、言葉は悪いが「ストレス依存型」なのか。このことを頭に入れておいた方がいいだろう。

 話を戻そう。びっしりと「やるべきこと」をスケジュールに入れておけば、自分の姿は見られなくても、自分のスケジュールが全社に共有されている。自然と「適度な緊張感」が生まれる。そのため、仕事のパフォーマンスアップする。

 そうやって【7時間】かかる仕事を【5時間】程度でやってしまえばいいのだ。そうすればトータル【2時間】、オフィスにいたら「サボっている」と指摘されるような時間を手に入れることができる。この時間があれば、先述した月間計画や週間計画のメンテナンスであったり、現在設定している成果指標が、本当に目標を達成させるための指標としてふさわしいかを確認できるはずだ。

テレワークするなら、家以外で

 最後に、一般的なサラリーマンアドバイスしたいことがある。それは、コロナウイルスが沈静化したら、できるかぎり在宅勤務はやめよう、ということだ。

 冒頭に書いたように、テレワークは遠隔地で行う働き方なのだから、カフェやコワーキングスペースなど、自宅ではない別の場所でやってもいい。だから、テレワークするにしてもできるだけ自宅以外ですべきだ。

 自宅にいると、顔を見られるたびに、家にいる人が「用事」を思い付くからだ。「ちょっと洗濯物を入れてくれない? 5分で終わるから、それぐらいいいじゃない」「宅配便が来たから出てよ! いま手を離せないんだから」と言われ、適度なストレスどころか、過度なストレスを感じ、煩わしい気持ちになることもある。

 いずれにしても、テレワークをしていたら、頑張った分だけ、自分の自由な時間を生み出すことができる。その時間を使って遊んではいけないが、オフィスにいると「サボるな」といわれるようなことに、時間を費やすことができるだろう。テレワークを利用し、「自立型人財」に磨きをかけてもらいたいと思う。

(横山信弘)

テレワークは「サボれる」?(出所:ゲッティイメージズ)