3月14日に開業した、JR高輪ゲートウェイ駅。この駅では、21世紀中葉の世界を想定した様々な試みも行われている。開放的な設計のプラットフォーム、ロボット、そして無人コンビニ。駅名表記の明朝体が不評という問題はあるが、それでも日本人は「近未来の山手線」を間近に見た。

 さて、筆者は普段、ごく普通の市民生活を送る皆様の視点に沿ったキャッシュレス決済活用法を配信している。今回は、高輪ゲートウェイ駅の話題も「肩肘を張らない気軽なキャッシュレス決済」という角度から観察していきたい。

高輪ゲートウェイ駅にはロボットも配備

 3月14日高輪ゲートウェイ駅がついに開業した。筆者もこの日、実際に訪れてみたのだが、あいにくの雨天で、思っていたより人が少なかった。新しもの見たさでもっと混雑するものと予想していたが、やはり新型コロナウイルス流行の影響があったのだろうか。

 山手線京浜東北線が停車するこの駅は、上階からプラットフォームが見える形になっている。我々がよく知っている「東京の駅」は、敢えて悪い表現を使えば閉鎖的な構造だ。朝のラッシュ時は、それこそ人混みの中で窒息してしまうのではというほどである。上階に移動した筆者は、気がつけば行き交う電車の上部をいつまでも見つめていた。自分にとってはかなり新鮮な光景であったことは否定しない。

 ふと筆者は、にわかに人が集まっていることに気がつく。どうやら警備ロボット目当てに写真を撮っているようだ。

 この駅には数種類のロボットが配備されている。写真のものは、白杖を持った人を感知して警備員に知らせる機能を持っている。日本は本来、ロボット分野に関しては世界に先駆けた技術を持っている。数年後、このようなロボットが自走する光景が当たり前のものになる可能性は十分にある。

◆無人コンビニの開業

 しかし、それらの事柄よりも注目すべきは「無人コンビニ」だ。棚の商品を手に取り、レジにバーコードを通さないまま決済処理に移行できる仕組みの店舗『TOUCH TO GO』。マスコミ各社の目も、案の定このコンビニに集中していた。しかしこの記事では、大手メディアが書かないような素直な感想と今後の展望を書きたい。

 ただ、残念ながら店内の撮影はできなかった。これは混雑を回避する措置であるが、店外からの撮影はできたのでその際の画像を載せよう。

 さて、TOUCH TO GOの開業は高輪ゲートウェイ駅のそれよりも遅かった。3月14日時点ではまだ開いておらず、故に23日まで待たざるを得なかった。TOUCH TO GOは、都内初の常設無人コンビニである。

 しかし筆者が訪れた時は、数人のスタッフが接客対応をしていた。これは行列整理の目的もあるが、どういうわけかレジ前にもスタッフが立っている。これではただの有人コンビニではないか!?

◆無人なのに有人?

 TOUCH TO GOの商品読み取りの仕組みは、以下の通りである。

 客が手に取った商品には、当然ながら重量というものがある。それを棚に設置された重量計が感知する。同時に赤外線センサーと天井のカメラが客の動作を認識し、「今この客はこれを手にした」ということをAI(人工知能)が整理する。

 客がレジ前に立つと、自分の持っている商品が画面に表示されている。あとは交通系IDカード等のキャシュレス決済で会計を済ませるという流れだ。モバイルSuicaにも対応している。

 しかし現状は、この「手にした商品の情報が自動的に反映される」という仕組みは精度が高くない。複数のものを買えば、大抵は認識されていないものが出てくるという状態だ。そういう場合は、客が自分で商品のバーコードスキャンさせる。

 つまり現状では、99%の精度を発揮するシステムではないということ。もっとも、この問題は時間が解決してくれる事柄でもある。AIは自己学習するものだからだ。

 それよりも重要なポイントは、人間側にある。TOUCH TO GOのような「手に取った商品のバーコードスキャンすることなく会計できる」という仕組みの店舗は、ひとつの概念としてまだ成立していない。故に、仕組みや使い方をその場で説明するためのスタッフが必要なのだ。

 ここで筆者は、2008年に利用したノースウエスト航空を思い出した。

 この頃のノースウエスト航空は既にデルタ航空との合併が決定していたが、そんな最中にセルフチェックインの仕組みを導入した。当時は紙のチケットがeチケットになる転換期だったのだが、「自分の手でチェックインする」という概念がいまだ定着していない時代でもあった。

 そのため、無人が売りであるはずのサービスなのに、ノースウエスト航空のスタッフがセルフチェックイン機の前に立って個別対応していた。「チェックインはスタッフにしてもらう」という概念が普遍的である以上、いきなりそれを無人化しても「本当の無人」にはできないのだ。

◆「本当の無人」が実現する日

 仮に商品認識のカメラや重量計、そしてAIの精度が飛躍的に向上したとしても、TOUCH TO GOは当面の間「有人コンビニ」であり続けるだろう。

 その仕組みが「当たり前」のものとして成立していないうちは、「これってどうやるの?」と首を傾げる利用客が必ず発生する。考えてみれば、鉄道駅の無人改札やSuicaもそのような成り立ちを踏まえて確立されたテクノロジーだ。

 TOUCH TO GOが「本当の無人」になるには、数年かかるだろうと筆者は思案している。が、そこから先は普遍的な商業施設として定着する未来が待っているはずだ。<取材・文・撮影/澤田真一>

【澤田真一】
ノンフィクション作家、Webライター1984年10月11日生。東南アジア経済情報、最新テクノロジーガジェット関連記事を各メディアで執筆。ブログたまには澤田もエンターテイナー