家の傾きを確認する方法として知られるビー玉を使った検査。しかし、「建物は工場生産品ではないので許容値内の傾きはあり、ビー玉では問題がある傾きなのか、そうでない傾きなのかが分からないので不十分」というのは不動産調査や建物調査実績が豊富なプロフェッショナル集団で長くコンサルタント経験を持つ眞鍋豊洋さん。

では、どうすれば、一戸建て住宅の傾きの問題を見つけることができるのでしょうか。

「家の傾き」問題に関する基礎知識。ビー玉を転がしても、じつは判定不能!?

1. 家が傾いていると、どうしてダメなのか

ひび割れ

長兵衛 / PIXTA(ピクスタ)

家の傾きは、住まいの耐震性や耐久性などにかかわる建物の構造に影響してきます。傾きが大きい場合は、柱や梁といった「構造部材」の接合部の荷重バランスが変わってくるため、変形の原因に…。本来なら耐えられるはずの地震に耐えられない、外壁にヒビが入る、などのトラブルになるのです。二次被害として、防水機能が低下して雨漏りするなどの現象も起こります。

床にビー玉

なっちゃん / PIXTA(ピクスタ)

また、住んでいる人の健康にも影響を及ぼします。傾いた建物に住み続けると、平衡感覚が正常に働かなくなり、体調不良になる場合も。将来的に傾きが起こらないように建売住宅や中古住宅の場合は購入検討段階で、注文住宅の場合は傾きのある住宅が建つことがないように図面の段階や建築中にも傾きチェックを行いましょう。

2. スリッパはNG!? 家の傾きは蛍光ペンで簡単に調べられる

図面

jazzman / PIXTA(ピクスタ)

家の傾きについては、2階建て一戸建ての場合、図面から推測する方法があります。この方法ならば、これから家を購入しようと打ち合わせをしている段階の人でも発見しやすいです。

方法はとても簡単。平面図の1階部分と2階部分を重ね合わせ、「壁」がどのくらい重なっているかを確認するのです。例えば1階の壁を黄色の蛍光ペンで、2階の壁を赤色の蛍光ペンで色を付けます。1階と2階を重ね合わせ、重なった壁は緑色に変わります。

支える側の1階の壁に対して、重なった壁が半分以下の場合は注意が必要です。また、一部の場所だけ支える壁がないなどバランスが悪い場合も要注意です。現地でその2階部分を計ると、床が下に傾いていたということがよくあります。

スリッパ

イグのマスタ / PIXTA(ピクスタ)

住宅の見学に行く場合、管理者の許可をもらえるなら、室内ではスリッパを履かずに歩いてみてください。人はわずかな床の傾きも足裏から感じ取ることができるので、目からの情報だけでなく、足裏の感覚も活用しましょう。

※施工途中の現地見学の際は、足元にご注意ください

3. 「地歴」を調べるのも有効

地盤調査

pu- / PIXTA(ピクスタ)

家自体に問題がなくても、沈みやすい性質の土地の上に家が建っている場合は、傾きが起こります。土地を販売する業者が適切に地盤調査や地歴調査を行っていないケースもあり、注意が必要です。地盤調査については専門業者が機械を使って測定するため、素人だけで行うのは難しいですが、地歴については自分で調べることも可能です。

地歴調査とは、過去にどのような使われ方をしてきたかを調べることです。地歴を調べる方法には、おもに次の2種類があります。

3-1 「閉鎖謄本」を調べる

閉鎖謄本とは、「閉鎖登記記録」として保管されている登記情報で、
・建物を壊し、滅失登記を行った建物の記録
・2つの土地を合筆登記した場合、一方の土地の登記記録
分かります。閉鎖された際に、コンピュータ化されていたならば、全国の法務局でオンライン申請や郵送申請で取得することができ、コンピュータ化されていないときのものであれば、管轄する法務局に申請して調べます。

3-2 空中写真や古地図を調べる

昔の地図は県立図書館などに所蔵されていますので、申請すれば閲覧が可能です。また、国土地理院のウェブサイトでは全国の地図や空中写真が閲覧できます。古い地図はすべての地域が網羅されているわけではありませんが、市区町村のサイトでも閲覧できます。

4.まとめ

水平器

Satoshi KOHNO / PIXTA(ピクスタ)

住宅は人の手でつくるもの。施工誤差と呼ばれるわずかな傾きは大半の家で見られます。傾きの大きさだけでなく、傾きの質や原因が何であるかが重要です。専門的な知識がなくても、今回紹介したような方法で確認することができます。五感を使ってチェックし、納得のいく住まいを手に入れましょう。

眞鍋 豊洋

一級建築士、管理建築士、宅地建物取引士、不動産コンサルティングマスター、マンション管理士、管理業務主任者、2級ファイナンシャル・プランニング技能士、損害保険募集人など、住まいに関する資格を多数保有し、多方面から問題解決を図るゼネラリスト。どの企業とも属さない第三者の立場で、購入者向けの建築・不動産コンサルティングを行うプロフェッショナル集団でコンサルタントとして様々な案件を担当し、現在は、住まい、家具、雇用の再生を目指す株式会社1Line(ワンライン)の代表取締役として活躍中。

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