消費税増税の対策として大々的に打ち出されたキャッシュレスによる還元事業。PayPayをはじめとして、ド派手なキャンペーンが繰り広げられているが、実態はどうなのだろう。

キャッシュレスなら〇%還元」という表記を見ることも多く、スマホをかざしながら決済する光景は、店舗によってはメジャーとなっているし、実際、各種統計データをみても、圧倒的に多いクレジットカードの利用率を筆頭に、スマホでの決済はかなり増加している。

ただし、気になる調査結果がある。「キャッシュレス推進協議会」が2020年1月10日に公表した、キャッシュレスポイント還元事業の事業開始前と事業期間中に実施した消費者と店舗向けアンケートの調査結果だ。

まず、今回はじめてキャッシュレス支払いを導入した店舗が、全体の34%を占めた。やはり、国の補助によって購買価格が下がるのだから、「お客様が来てくれるだろう」とびつくのも無理はない。しかも、端末費用や手数料も補助金やキャンペーンを利用すれば、ほとんど負担なく導入できるとあり、かなりの店舗で導入された。

さらに、37.8%の店舗が「キャッシュレス・消費者還元事業に参加する前からキャッシュレスの支払い手段を導入していたが、還元事業をきっかけにしてキャッシュレスの支払い手段を増やした」としており、還元事業参加店舗全体の70%以上が、今回の還元事業をきっかけに、キャッシュレスへの対応を強化したといえる。

実際の効果はどうだったのだろうか。かなり残念な結果となっている。

キャッシュレス・消費者還元事業への参加による売り上げ効果」

・「非常に効果があった」5.8%

・「効果があった」32.9%

・「あまり効果がなかった」38.3%

・「効果がなかった」23.0%

となっており、なんと6割以上は効果がなかったとしているのだ。

さらに、売上ではなく、新規顧客の獲得にはどうつながったのだろうか。

キャッシュレス・消費者還元事業への参加による顧客獲得の効果」

・「非常に効果があった」5.6%

・「効果があった」31.1%

・「あまり効果がなかった」39.4%

・「効果がなかった」23.9%

と、これまた6割以上で効果はなかったとしている。

では、売上や顧客という、マーケティング的な効果はなくとも、業務効率はどうなのだろう。これは現金を扱わなくていいのだから、かなり改善することが予想されるし、マスコミでも評論家の先生たちは、キャッシュレスで業務効率を上げると熱弁される人も多かった。

キャッシュレスの仕組みを導入・追加したことによる業務効率化の効果」

・「非常に効果があった」8.1%

・「効果があった」31.2%

・「あまり効果がなかった」30.2%

・「効果がなかった」30.5%

残念なことに、売上拡大、顧客獲得同様の結果となってしまった。

これはいったいどういうことなのだろうか。

普段の会話のなかでも、「現金使わなくなった」との声を耳にすることも増えたが、単純に、これまで現金で支払っていた人が、カードスマホ決済に切り替えたということか。(余談だが、実際、iDなどの決済は便利で速いが、アプリ立ち上げて画面を出して、というのは、意外にも面倒だったりもする。)

確かに、キャッシュレスにすれば、還元してくれるのだから、単に現金から置き換わっただけだとも思える。基本、増税されているのだから、消費意欲が増すまでには至らないのが本音か。

しかし、店舗側の負担は少ないとしても、この仕組みの導入には、莫大なコストがかかったはずだ。さらに、ド派手なキャンペーンは、Yahoo!にしてもメルカリにしても、一向に回収のめどは立たず、何千億の赤字となっているとも聞く。現に先駆的存在だったOrigamiは多額の赤字のまま消えた。

現状のスマホ決済の伸び率からしても、この店舗の「効果がない」という反応からしても、どう考えても、この巨額投資がまかなえるほどスマホ決済が普及していくとも思えない。

そして、6月にはこの還元事業は終わる。

これまで手数料無料だった店舗は、間違いなく、費用の負担を求められる方向にいくだろう。消費者に負担を求めるわけにいかないとなれば、それしかないはずだ。店舗側にメリットが感じられない、のにだ。

とすれば、この先、この流れはどうなるのだろうか。

加えてこのコロナ騒ぎだ。

もう、キャッシュかキャッシュレスかなど、吹き飛ぶほどのインパクトなのだ、もはや店舗には、1%の手数料ですら払いたくもないだろう。しかし、キャッシュレスに対しては、すでに巨額の設備投資と販促費用が投下されている。

流通を活性化させるために推進されてきたこのキャッシュレス。結局、誰のためのものなのだろうか。逆に、これまでの行き過ぎた投資が足を引っ張ることのないように願うばかりだ。

結局、キャッシュレスは誰のためなのか