朝鮮人民軍北朝鮮軍)で兵士の脱走や凶悪犯罪が相次いでいると、米政府系のラジオフリーアジアRFA)が伝えている。

両江道(リャンガンド)の軍関係の情報筋はRFAに対し、「一部の部隊で脱走、凶悪犯罪をはじめとする重大な政治的事件と規律の乱れが深刻化し、これに対応するための総参謀部の指令が各部隊に下された」と語っている。

情報筋によれば、一部の部隊で脱走が発生しているほか、銃器の管理がおざなりになり、また兵士が民間人を射殺するといった事件が起きているという。

さらに平安北道(ピョンアンブクト)の情報筋も、「中央では総参謀部、総政治局、人民武力省をはじめ軍指導機関の幹部らが、まず軍事規律強化の模範になるよう求められている。そのため、幹部らは徹底した自己管理の規則でがんじがらめになっており、クタクタになっているほどだ」と話している。

RFAは言及していないが、この時期に脱走が続発しているとなれば、新型コロナウイルスの影響を疑わないわけにはいかない。北朝鮮軍デイリーNK内部情報筋が伝えたところによると、軍医局は今月3日、1〜2月に180人が死亡し、3700人を隔離しているとの情報を最高司令部に報告したという。2カ月足らずの間に軍だけで180人死亡とは大変な数だ。

そもそも北朝鮮軍では、食料の横流しによる飢餓、そして上官による性的虐待などのために、これまでも脱走が少なくなかった。

ただ、北朝鮮は今、新型コロナウイルスの拡散を封じ込めるため、諸外国とは比較にならないほど厳しい防疫ルールを施行している。これに違反した場合、最悪のケースでは処刑もあり得る。

そのような非常事態下にあって、軍は社会が混乱しないよう統制する最も強力な手段だ。その軍が真っ先に混乱に陥っているとすれば、金正恩体制は相当な不安の中にあると見るしかない。

ちなみにRFAの平安北道の情報筋は「兵士たちは、長期間の冬季訓練で疲れに疲れている。そこに持ってきて、さらに軍事規律を強化し統制を厳しくしているので、兵士たちはむしろ不満を募らせている。規律を教化するだけではなく、士気高揚のための配給が必要だろう」と指摘している。

ただ、新型コロナウイルスへの恐怖から中朝貿易まで止めてしまった状況下、北朝鮮当局に余分な配給を行う余裕はないだろう。果たして、金正恩委員長はこの難局をどのように切り抜けるのだろうか。

昌麟島防御隊を視察した金正恩氏(2019年11月25日付朝鮮中央通信より)