近ごろメディアは、新型コロナウイルス感染症COVID-19感染症の話題でもちきりです。人々の間では健康に対する意識が高くなっています。そんな危機的な状況の時にこそ、明らかになるのが「人の本性」。

それを痛感したのが愛知県に住む、裕子さん。彼女は新型コロナウイルス感染症COVID-19)を通し、マッチングアプリで知り合った彼氏の「本当の姿」を知ったと言います。

優しかった彼に起こった「変化」

昨年の11月に婚活アプリを始めた裕子さん(31)は一歳年上の博史さんと出会い、意気投合。4回目のデートで博史さんから告白され、付き合うことになりました。

「付き合った当初、彼はすごく優しかった。デート中には私のことを気遣ってくれて、何度も『足痛くない?』とか『少し休憩しようか』と言ってくれました。正直、今まで付き合ったどの彼よりも優しくて、こんな男性が婚活アプリにいるんだと驚きました。」

そんな彼の態度に変化が見られたのは、新型コロナウイルス感染症が広まり始めてから。きっかけは彼からの些細なお願いでした。「デートをする時はいつもお互いの中間地点になる駅で待ち合わせていたんですが、ある日、彼から『あそこは人通りが多い駅だからもっと人通りの少ない駅で待ち合わせたい』と言われました。」

提案されたのは、いつもの駅よりも彼の自宅に近く、裕子さんの家からは遠い駅。裕子さんの金銭的負担や労力は増えましたが、たしかに病気になるよりはマシだと思い、彼の提案に従うことに。「不安に思う気持ちはみんな同じだから、ちょっとしたことから気を付けて不安を軽減したり感染予防できたりすればいいなって思いました。」

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民度の低さを気にする彼

しかし、その頃から裕子さんは彼の言葉に他人を軽んじる気持ちが見え隠れすることに気づき始めましたと言います。例えば、裕子さんが地元のショッピングモールに行ってきた話をすると博史さんは「そういう場所は民度が低い人が多いから、今行くのは危険だよ」と露骨に顔をしかめたそう。「彼はもともと頭がよく、勤務先も大手。日常会話に若者言葉は出てこず、言葉のチョイスに語彙力を感じていました。そんなところが素敵だと思っていましたが、その言葉を聞いてからは、もしかしたら心の中では他人を見下しているのかもしれないって思いました。」

交際から3ヶ月が経とうとしていた頃に垣間見えた、彼の意外な一面。裕子さんは衝撃を受けましたが、別れを切そうとは思わなかったそう。なぜなら、自分に対しては優しいままだったからです。出会った頃よりデート中の気遣いは減っていましたが、人よりも歩くペースが遅い裕子さんの歩幅に合わせてくれたり、バレンタインのお返しにディナーをごちそうしてくれたりと、愛情が感じられる行動は見られたため、博史さんのことを“他人には厳しくて、私だけに優しい男性”だと思っていました。

誰にでも優しい人は男女問わず、いまいちモテないもの。私たちは自分にだけ優しい人を特別視してしまう傾向があるように思います。裕子さんの心にもその心理はあり、他人を見下す博史さんの発言を不快に思いながらも、一方では他人に対して厳しい言葉を吐く知的な男性が自分のことだけは気遣ってくれるという事実をどこかで嬉しく想い、優越感に浸っていたのです。「もしかしたら、彼といることで自分も知的な人間みたいに思えて、嬉しかったのかもしれません。」

知的な彼への愛が冷めた日

しかし、博史さんは徐々に裕子さんのことも軽視するようになっていきました。そして起きたのが、2人の溝を深める決定的な出来事。

それは、2人でディナーに行った日のこと。席に座った時、博史さんの隣にいた男性が偶然、咳込み始めました。すると、博史さんは顔をしかめて裕子さんに「悪いけど、コロナだったら怖いから席変わってくれない?」と要求。この発言を聞き、裕子さんは強い憤りを感じました。「健康に注意することは大切ですが、隣の男性はただの風邪かもしれないし、失礼だと思いました。そして、どうして私を盾にしようとするのかなって。この人は結局自分が一番大事なんだなって思ったら、なんだか冷めました。」

その日の帰り道で裕子さんは別れを切り出すことに。すると、博史さんは自分との未来がいかに幸せかをアピールし始めたそう。「僕の勤務先、知ってるよね?一緒にいたら将来、金銭的に苦労することはないよ」「もし子どもが生まれても、十分な教育を受けさせてあげられる」。そんな博史さんの訴えは、心に全く響きませんでした。「金銭的余裕があることや子どもに十分な教育がしてあげられることは、たしかに大切です。でも、この人とずっと一緒にいたら私も将来産まれてくる子どもも、何かが欠落した人間になってしまいそうだと思いました。」

そこで、博史さんの言葉を受け入れず、改めて別れを告げると彼は豹変。「こんな優良物件を逃して後悔すると思う。っていうか、後悔すればいいよ。やっぱり民度の低い女はダメだわ」と言い放ったのです。

未曽有の事態によって明らかになった、彼の本性。裕子さんはショックを受けましたが、安堵もしたそう。「もし、コロナが流行っていなかったら彼の本性に気づくのはもっと遅かったはず。この歳の1年って貴重だから、時間を無駄にしなくてよかったと思いました。」

人の本性や本音は自分の身が危険にさらされた時にこそ、明らかになりやすいもの。誰しも自分の身が一番大事なのはもちろんですが、厳しい状況下だからこそ他人を思いやれる心を持っている人は魅力的に見えます。

博史さんと裕子さんの恋の結末は、緊急時の自分を振り返るきっかけにもなりそうです。