これまでの仕事観が通用しない、一部の20代による“新しいビジネスマナー”が幅を利かせているらしい。でもちょっと待って。それって本当に正しいの? モヤモヤし異議を唱えたい40代以上も多いのではないだろうか。会社や業界により千差万別で正解のない問題ではあるのだが……。あえて問う、あなたはどちらが正しいと思いますか?

デジタルツールを使いこなす人に欠ける相手への気遣い

 今や数多くの種類が存在するコミュニケーションツールは、ビジネスにおいても欠かすことができない。そして、それが世代間ギャップや誤解に繋がっている。特に、電話世代の40代以上とLINE世代の20代ではそれが顕著といえる。

 たとえば、心理学者の榎本博明氏は、20代コミュニケーション傾向について次のように語る。

LINESNSコミュニケーションツールの主流である20代は、対面や電話で直接話すことに苦手意識を持っていたり、心理的コスト(負担)を感じていたりします。その結果、相手にもそれを求めないことがマナーだと思っているところがあります」

◆新世代の常識① 電話は相手の時間を奪う。使わないのがマナー

 この傾向がはっきり表れているのが、「職場の固定電話は無用の長物」「重要案件のときも電話は極力避ける」に代表される“電話嫌い”の性質だ。

「電話がかかってくると、自分のペースや時間の使い方を乱される感じがしてイヤ。相手に『空気読めないな』と思われないよう、自分からも極力電話はしたくない」(26歳・不動産)というように、そもそも電話は“相手の時間を奪う非常識な行為”という認識なのだ。

 また、マナーコンサルタントの西出ひろ子氏は、20代のこんな感覚も指摘する。

「職場の固定電話に出ないのは、自分も仕事で忙しいのだから、取れる人が取ればいい、という考えなんです。電話応対は若手の仕事という感覚がなく、上司や先輩とフラットな立場だと思っています」

 では、そんな若手に対して40代以上の気持ちをわかってもらうには、どんな言い方で諭せばいいのだろうか。

「実績ある上司や先輩と、若手のあなたとでは責任の重さが違う。相手の立場に立つのがマナーなので、彼らを楽にしようと思いやれば、必ずあなたにも返ってくる、と立場の違いを説明すると納得してもらいやすいです」(西出氏)

 また、若者の働き方研究家の平賀充記氏は、「そうしたほうが得をする」というメリットを説明してあげるといいと語る。

「重要案件をメールで送ったのに、さらに電話でリマインドするのは非効率的でムダだと考える20代は多いです。でも、相手が多忙でメールを見落としていたら、後で困るのは自分自身。電話を一本入れてリスクを回避するほうが、かえって効率的で自分のためになるのだ、という言い方をしましょう」

 相手への気遣いが効率化を生む。

◆新世代の常識② 連絡手段は簡潔・確実なLINEベスト

 電話嫌いの20代が連絡手段として使うのはもっぱらLINE。そこから、「電話には出なくてもLINEには即レス」「遅刻・欠勤の連絡をLINEで行う」といった新常識が生まれた。だが、これが「始業5分前に『風邪で休みます』とLINEで一言。友達感覚かと思わずムッとしてしまった」(47歳・銀行員)と、年長者をモヤモヤさせる原因にも……。

LINESlackなどを使い慣れている20代にとって、コミュニケーションとは“要点だけを簡潔に伝える”のが常識。『メールは挨拶文なし。いきなり本題から』とあるように、丁寧な挨拶文を交わすのは、冗長で非効率的であり、むしろ相手に対して失礼とすら考えています」(西出氏)

 そんな彼らに対しては、「『LINEだと唐突で馴れ馴れしい印象を抱く人もいる。あなたには期待しているから、些細なことで誤解されて評価を下げるのはもったいないよ』など、本人の自尊心とメリットをくすぐる」(平賀氏)諭し方が有効。褒めれば素直に聞き入れてくれるのが彼らの美点だ。

◆新世代の常識③ メモはスマホで取ったほうが速いし効率的

 最後に、世代間ギャップの絶妙な線を突く新常識が「会議や打ち合わせ中にスマホでメモを取る」。「真面目にメモを取っているので注意もできないが、どうもいい気持ちがしない」(43歳・建設)と、何が悪いのか指摘しづらいところにモヤモヤする人は多い。

「目も合わさずに手元に没頭している様子は、心理的に相手を軽視・拒絶している印象を与えてしまう。熱心なのはわかるから、一言断りを入れてくれると好印象だよ、と助言しましょう」(榎本氏)

【榎本博明氏】
心理学者。東京大学心理学科卒。心理学博士。MP人間科学研究所代表。心理学ベースにした企業研修・教育講演などを行う。著書に『「上から目線」の構造』など

【西出ひろ子氏】
マナーコンサルタント。美道家。ウイズの代表取締役会長。人材育成やマナー研修、コンサルティングなどを行う。『気くばりメールはじめました!』など、著書は国内外で90冊以上

【平賀充記氏】
若者の働き方研究家。ツナグ働き方研究所所長。アルバイトパート採用関連の仕事に従事し、多様な働き方の専門家として活動。著書に『なぜ最近の若者は突然辞めるのか』など

<取材・文/週刊SPA!編集部 イラスト/古泉智浩>

―[その新常識はまちがっている!]―