もしも依存症になってもまた立ち直れる社会にすることはもっと大事です
もしも依存症になってもまた立ち直れる社会にすることはもっと大事です

香川県議会は3月18日に開いた定例議会で、子供のネットゲーム使用を制限する「県ネット・ゲーム依存症対策条例案」を賛成多数で可決した。これは全国初のゲーム依存症に特化した条例として、4月1日に施行予定。

タレントエッセイストの小島慶子が、世間の気になる話題に思うあんなこと、こんなこと。

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ゲーム依存、気になりますか。わが家の高3と中3の息子たちも、休みの日にはけっこうゲームをやっているので「ちゃんとタイマーかけてやりなよ! あと何分にする?」などと声かけをしています。依存症のリスクも繰り返し話していますが、せっかくの休みぐらい友達とゲームしたいというのもわかる。まあ、ずーっとやってるわけじゃないからな......と思いつつも、心配は心配です。

世界保健機関WHO)がゲーム障害(ゲーム依存)は病気であると認め、まだいろいろな実態調査が行なわれている段階だとはいえ、気がかりな親は多いのではないかと思います。

議論になっているのは、このほど香川県議会で可決・成立した「県ネット・ゲーム依存症対策条例」。子供のゲームインターネット依存症対策として、ゲーム利用時間について一日60分までを目安としたルール作りと順守を家庭に求めるものです。ゲームは平日は一日60分、休日は一日90分、スマホの利用は中学生以下は午後9時まで、それ以外は午後10時まで。

確かに家庭でゲームスマホ利用のルールを決めるのは大事だけど、それを県が条例で定めるというのは違和感があります。罰則がないとはいえ、県が家の中に首を突っ込んでくるわけですからね。

子供のゲーム依存の懸念があるなら、啓発の方法はほかにもあるのに、なぜ条例で定めるのか。家族はお国や自治体の下部組織ではないのだから、しつけのお達しを出すのはおかしいです。

条例に異議を唱えている弁護士たちによると、60分続けてやるとゲーム依存症になるというエビデンスがないのに時間制限を条例で定めるのは、日本国憲法第13条に規定されている「個人の尊重」に反する、不当な権利制約である可能性があるそうです。

この条例の気持ち悪さは、ゲーム依存を防ぐために社会全体で取り組みを進めようという発想ではなく、家族にその役割を負わせようとしているところ。

依存症は、しんどいことから逃れるために何かに依存してしまうものです。やめたくてもやめられない苦しい病気なのです。依存を断ち切るには、何がその人を依存症にさせたのかを根気よく解き明かして、長い目で回復を支える必要があります。

ゲームとの付き合い方を考えて依存症を防ぐのはもちろん大事。だけど、もしも依存症になってもまた立ち直れる社会にすることはもっと大事です。依存症患者を責め、叩いても病気は治りません。安心して回復支援を受けられるような環境を整え、偏見を取り除くための取り組みをぜひ。

●小島慶子(こじま・けいこ) 
タレントエッセイスト。テレビラジオ出演や執筆、講演とマルチに活動中。現在、日豪往復生活を送る。共著『足をどかしてくれませんか。――メディアは女たちの声を届けているか』(亜紀書房)が好評発売中

もしも依存症になってもまた立ち直れる社会にすることはもっと大事です