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 新型コロナウイルスによるパンデミックとなった今、世界中の労働者たちが厳しい状況にいる。

 レストランなどの店や職場が封鎖されたことで仕事を失ってしまった人や、仕事が急に止まってしまった人たちの生活保障がままならない事態に陥っている。

 買占めに走る人が多くスーパーの棚が空っぽになる一方で、職を失ったばかりに家族に食べ物を買い与えるお金もないという人が増加しているのだ。

 そんな辛い状況の中、アメリカ、イギリスオーストラリアで困っている人に尽力した3人の男性がいる。どの男性も当初はその身元を明かさなかった。

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イギリスでは匿名の男性がパブに寄付し、住民らに食事を配達

 現在、コロナウイルスの蔓延を遅らせるために国がロックダウン(封鎖)中となっているイギリスでは、不必要な外出を固く禁じられているため、人々は外の社会との繋がりを断ち切られてしまっている。

 オックスフォードシャー州デンチュワースにあるパブ『The Fox Inn』も、現在は閉鎖中だが、3月27日に匿名の男性がこのパブの人気メニューであるフィッシュアンドチップスをテイクアウトする手配をし、171人が住む村の住民の玄関先へと無料で届けた。

 男性は、注目を浴びるのを避けてパブには匿名のままでいることを依頼し、今後12週間週に1度もしくは2度の割合で、地元のパブが細々とでも生き残っていけるよう、住民宅に配達するテイクアウトの食事代をまとめて支払った。

 男性は、「村の住民にとって、パブがどれほど大切かということをみんなにも知ってもらいたい」と話していたようで、依頼を受けたThe Fox Innの経営者スティーブン・デイヴィッドさんは次のように語っている。

彼の親切には感謝しかありません。今後、状況に応じて配達回数や期間は変わる可能性がありますが、最少人数のボランティア使い捨て用の手袋とマスクを着用して、村の全ての住民宅へ週に1度、パブの食事を届ける予定です。

今のところ、メニューはフィッシュアンドチップスのみですが、今後カレーやローストディナーなども追加していきたいと思っています。もちろん、厨房での調理にも細心の注意を払っています。

オーストラリアで失業中の労働者たちに男性が寄付

 オーストラリアメルボルンにある政府機関『Centrelink』オフィスの外では、パンデミックの影響を受けて失業した多くの労働者たちが、失業手当の相談をするために日々列を作って並んでいる。

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image credit:wikipedia

 ある日、それを見た男性は、「家族のためにパンを得る手段がない人たちを見るのは心が痛む」と、並んでいる失業者たち100人に現金100豪ドル(約6620円)ずつ、合計1万豪ドル(約662000円)を手渡した。

ギリシャからオーストラリアへ移住し、ビジネスを成功させたというこの男性は、このように話している。

私は、6歳の頃からオーストラリアに住んでいますが、この国はずっと私によくしてくれました。コロナウイルスパンデミックに苦しむ労働者たちに、どうか国の裕福な人たちは寄付をお願いします。困っている人たちに救いの手を差し伸べてあげてください。

 後に彼の名はピーター・ダーモスさん(62歳)であることがわかった。彼は当初ジョンという仮名を使ってメディア取材に応じていたが、自分のように誰かを助ける人がもっと増えてほしいという思いから、後に実名を公表することに同意したという。

フロリダ州のレストラン従業員ら、常連客に多額のチップをもらう

 アメリカのフロリダ州バンダービルトビーチロードにある『Skillets』は、イタリアナポリを拠点に8つの店舗を持つレストランだ。

 この店の常連客である1人の男性は、マネジャーに1万ドル(約108万円)の現金をチップとして手渡し、従業員らを驚かせた。


 その男性は、天気がいい日にはノートブックパソコンを持って来店し、パティオで食事をするのが好きで、週末には家族を連れてブランチによく来ていた。

 スタッフの誰もがその男性の顔を覚えていたが、名前までは知らなかった。多額のチップをくれたその男性が誰なのかスタッフらが探そうとしていた翌日、知事により州全体のレストラン閉鎖を命じられてしまったので、現在もこの男性の身元はわからずじまいだ。

 レストラン経営者ロス・エドランドさんはこのように話す。

彼のチップは、そのために従業員らにとってとてもありがたいお金となりました。20人のスタッフで500ドル(約54000円)ずつ分けました。

9つの店舗のうちの1つはベネチアにありましたが、コロナウイルスの影響で開業から5か月で閉店となりました。全ての店を合わせると200人ほどのスタッフの90%が解雇になりました。

アメリカでは、多くの人が朝からマクドナルドのドライブスルーに車で並んで朝食をとるのが一般的のようですが、経験のためにフロリダ州で店を出してみると、多くの人が来てくれるようになりました。

今回、常連のお客様に多額のチップまで頂きはとても感謝しています。面白いもので、通ってくださるお客様とはよく話もしますし、外見や好みのメニュー、好きな席を十分把握しているのですが、名前となるとわからないものなのです。

この状況が落ち着いて、また開店できるようなら、今後も全てのお客様のために最善を尽くしたいと思っています。

労働者にとっては非常に苦しい時なので、政府にはちゃんと労働者への保障ができるよう取り組んでもらいたいと願うばかりです。


 エドランドさんによると、別の客からも現金150ドル(約16200円)が入った封筒を手渡されたそうだ。

 その封筒には、「もし閉鎖することになったらこの封筒を開けて」と記されてあったという。エドランドさんは感謝しながら、そのお金を従業員たちに分けたと話している。

 ここに挙げた3人は、特別に大富豪と言うわけではない。困っている人に対し、彼らにできる範囲内のことをしたようだ。

 困難な状況の中にあると人間の悪い部分が目立ってしまうものだが、そんな中でも他者に対し思いやりを忘れない人だって少なからずいる。

 恐怖と不安は視野を狭くする。どうしても自分のことばかり考えてしまいがちだが、そんな時こそ、困っている人、助けを求めている人に目を向け、自分ができる何かを探すことで、自分自身が救われることになるのかもしれない。

 ずっと塞ぎがちな友人に一瞬でも笑顔にしてあげることができたら、それだって十分素晴らしいことなんだと思う。

written by Scarlet / edited by parumo

全文をカラパイアで読む:
http://karapaia.com/archives/52289381.html
 

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