第1週「初めてのエール」4回〈4月2日 (木) 放送 演出・吉田照幸〉

「エール」から朝ドラの放送は週6から週5になる。土曜日は一週間の振り返りに。

あさイチ」では華丸が朝ドラ評論家として週5日になった場合、一週間のドラマの構成はどうなるか考察していた。
彼は以前、木曜日にコトが動く(ムービング・サースディ)と言っていたが、これからもそれは変わらないだろうと推察。なぜなら、この日、主人公・裕一(石田星空)のちの愛妻・音(清水香帆)が登場したうえ、裕一は作曲家としての才能をいきなり発揮したからだ。

火曜日に音楽に出会い、水曜日に恩師及び、生涯の友と出会い、木曜日に妻に出会う。
毎日がイベント続きで、興味は尽きない。子供時代は本題ではなく退屈に思わせることなく、考え抜かれた構成である。


森山直太朗がすんごくいい子どもたちもかなりお芝居が上手な子たちが集まって、顔も大人になる俳優にみんななんとなく似ているし、好感が持てるが、予想外にドラマを牽引しそうなのが、藤堂清晴先生(森山直太朗)であった。

裕一が作曲家になるきっかけとなり、支えになる人物が藤堂先生。
さわやかで、役の設定的にもとてもものの道理のわかった理想的な教師。演じている森山は音楽のプロだから、音楽のシーンにも説得力がある。演技に関してはこの間まで放送されていた「心の傷を癒やすということ」でも知的ないい役を演じていた。場合によっては、朝ドラヒロインの相手役を演じてもおかしくないくらいである。丸メガネ、ベスト付き、ペンシルストライプのスーツの好青年感が朝にはピッタリ。第4回の冒頭、春の花々と合わせて、心が癒やされた。

ちなみに、森山直太朗はすでに朝ドラの主題歌を歌っている。2005年の「風のハルカ」の主題歌「風花」。ルルリラ♪の高音が「すんごくいい」(第4回の裕一のセリフより)んである。さらに、森山直太朗/御徒町凧による歌詞がいかにも“朝ドラ” “朝ドラ”してないのもいい。朝ドラの歌詞は、雨にも負けず明るく生きていこう的なメッセージ性があるものが多いが、「風花」はそういうのが微塵もなく文学的。


母の実家は名優ぞろいいきなり森山直太朗のことばかり書いてしまったが、主人公が5年生になると、藤堂先生が担任になる。先生が授業で作曲を課題に出したことで、裕一が音楽の才能に目覚めるのである。

最初は、できないと尻込みしていたが、同じクラスになった佐藤久志(山口太幹)に「できるよ」と励まされたり、母まさ(菊池桃子)に連れられて母の実家に行ったとき、教会で聖歌を歌う少女・音に心惹かれたことから、インスピレーションが湧いて、一気に黒板に曲を書いて、先生を驚かせる。
引っ込み思案だった裕一が、「すんごくいい」と興奮気味で、変身の予感。

お母さんの実家は金持ち設定といえば「カーネーション」や「スカーレット」もそうだった。古山家もそこそこ繁盛していたのだろうが、三郎(唐沢寿明)の代で業績が下がっているようだ。それにしても、福島市から鉄道で一時間くらいしたところにある川俣にある権堂家はどでーんとしている。祖父は森山周一郎、祖母が三田和代、叔父が風間杜夫という名優ぞろい。三人いるだけで風格が漂う。

裕一が苦手に思っている茂兵衛(風間)は、まさにふたりの息子のどちらかを養子に出せと言い、ちょっと不穏な感じもありながら、そんなことは知らない裕一は、帰宅すると作曲に励む。そして、この数日の様々な体験が頭のなかをめぐり、最後に音の姿を思い出すと、

「出来た!」

このシーンはちょっとだけ推理ドラマの探偵が「犯人わかった!」みたいだったが、やり過ぎず抑制はきかせてあった。

それにしても、久志の気取った口ぶりと、いつもやや裕一から距離をとって語りかけている姿などが、「エヴァ」のカヲルくんみたいで、内向的な裕一はシンジくんみたいで、ふたりでピアノの連弾とかしてくれないかなと妄想してしまった。
(文/木俣冬、タイトルイラスト/おうか)

番組情報

連続テレビ小説エール」 
NHK総合 月~土 朝8時~、再放送 午後0時45分~
BSプレミアム 月~土 あさ7時30分~、再放送 午後11時
◯土曜は一週間の振り返り

原案:林宏司
脚本:清水友佳子 嶋田うれ葉 吉田照幸
演出:吉田照幸ほか
音楽:瀬川英二
キャスト: 窪田正孝 二階堂ふみ 唐沢寿明 菊池桃子 ほか
語り: 津田健次郎
主題歌:GReeeeN「星影のエール」
制作統括:土屋勝裕 尾崎裕和

イラスト/おうか