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 新型コロナウイルスパンデミックは、人々の生活と経済活動を大きく様変わりさせてしまった。その拡散を食い止めるために、街は封鎖され、人々は当たり前のはずだった移動の自由を半ば放棄せざるを得なくなった。

 なんと、こうした措置はこの地球の動きにまで影響を及ぼしているのだそうだ。

 『Nature』(3月31日付)に掲載されたベルギーの地震学者の報告によれば、地球の地殻が振動する音――すなわち「地震ノイズ」が減少して、静かになっているのだそうだ。

 逆にこれは地震を研究する者たちにとっては、小さな地震を検出したり、火山活動を観測したりするチャンスでもあるとのことだ。

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人間の活動は地殻を振動させて、雑音を生じさせている

 地震のような自然現象がそうであるように、じつは車や工業機械が発生させる振動もまた地殻を揺り動かしている。

 もちろん、個々の影響は微々たるものだ。だが、それらすべてが合わされば、それは大きな雑音となって響き渡る――少なくとも地震学者にとっては。

 こうした人間活動による振動が彼らにとって困り物なのは、それによるノイズが同じ周波数で発生する別のシグナルをかき消して、検出できなくしてしまうからだ。


都市閉鎖となり、静まり返ったサンフランシスコの様子(3/22)

人為的な地震ノイズがクリスマス休暇並みに低下

 世界の諸都市と同じように、今ベルギーの首都ブリュッセルでも学校や飲食店などが閉鎖され、人々は不要不急の外出を控えるよう求められている。

 ベルギー王立天文台にある地震計の計測結果から明らかになったのは、こうした措置のために、人為的な地震ノイズが3分の1程度にまで低下したということだ。

 これほどノイズが静まり返るのは、通常ならクリスマス休暇の頃のほんのわずかな期間だけであるという。

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Peter H from Pixabay

地震学者にとっては研究の機会


 だが、この影響で地震ノイズと同じ高周波帯が検出しやすくなってもいる。

 地上に設置された地震計は今や、100メートルの地下に置かれた地震計に匹敵する感度の良さで、小さな地震や採石現場の爆破を検出できるようになった。

 大学間地震学研究所連合(IRIS/アメリカ)の地震学者によれば、仮に封鎖措置が今後さらに数ヶ月続けられるなら、世界の各都市にある地震計で、地震の余波の位置を普段よりも高精度で検出できるようになるかもしれないそうだ。

 ノイズの減少は、海の波が砕けて発生する振動など、自然な背景振動を利用して地殻を調査する学者にとっても都合がいい。

 火山活動と変化する地下水面は、自然発生した波動が伝わる速さに影響する。そこで、波動が検出器に到達するまでにかかった時間を観測することで、火山や地下水面を研究することができるのだ。

 今のように人為的な雑音が少ない静かな条件であれば、普段ならかき消されてしまう周波数の波動もきちんと検出できると期待できる。

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Tumisu from Pixabay


 なお、こうした地震ノイズの減少に気づいたのは、ベルギー王立天文台ばかりではなく、イギリスの地震学者、ステーフェン・ヒックス氏やカリフォルニア工科大学の大学院生などからも同様の報告が上げられている。


 王立天文台の地震学者グループは、「良好な計測結果を得られるかもしれないチャンス」として、観測を行う予定を立てている。

 ただし、多くの観測機器が、元々人為的な影響を受けにくい人の少ない地域や地下深くに設置されているのだそうだ。そうしたところでは、封鎖措置による感度改善効果はそれほどでもないとのことだ。

References:mysteriousuniverse / nature/ written by hiroching / edited by parumo

全文をカラパイアで読む:
http://karapaia.com/archives/52289527.html
 

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